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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

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73 狩猟同行



 ついに狩猟同行日になってしまった。


 女子も男子もニコニコウキウキ状態。


 私以外は。


 悪役令嬢であれば高笑いをしながら魔物を火魔法で蹴散らしそうだけど、私には無理。魔物が怖い。


 でも、三年生になれば対魔物の実践練習がある。


 早くから経験しておいたほうがいい。


 卒業できるかどうかがかかっていると聞けば、勇気を奮い起こすしかなかった。


「大丈夫よ。狩猟をするのは大人たちだから」

「騎士や魔導士もいるわ」

「男子もね」

「やる気満々でした」

「集合しろ!」


 責任者の騎士が叫んだ。


「これより森林地帯で狩猟を行う。遠くまではいかないため、徒歩で移動する。同行者は魔物を倒すことよりも、魔物が出現する森の様子を見てほしい。他の森に行った時、魔物が出そうかどうかを知るためのヒントがあるだろう」


 この森は魔物が出ることがわかっている。


 でも、別の場所に行った時、そこに魔物が出るかどうかがわからない時もある。


 魔物が出る場所には魔法植物があるはずなので、それで判別しやすい。


 そういった様子を狩猟に同行しながら実際に確認できるのはいいと思った。


「では、出発する!」


 男子は騎士と組み、狩りのサポートをする。


 女子は魔導士と組むけれど、魔導士の邪魔をしないように言われた。


 この差は戦力になるかどうかの差。


 確かに女子が狩猟をする機会はないとは思うけれど、ちょっとだけ悔しい。


「よろしくお願いいたします」


 私の担当をする魔導士に挨拶をした。


 すると、


「大丈夫ですよ」


 耳元でささやくように聞こえたのはヴァン様の声。


 魔導士は顔を半分隠すようなフートをかぶっていて、誰なのかわからない。


 いつもと違う衣装なので全然わからなかった。


「絶対に私の名前を言わないように。第二王子には秘密で同行しているのです」


 ヴァン様の口調から考えると、今の機嫌は結構いい感じ。


 大人しくしておこうと思った。


「はい!」


 突然、エリザベートが嬉しそうに返事をした。


 側に魔導士がいる。


 きっと魔導士から声をかけられ、喜んでしまった。


 でも、消音になっているのは魔導士の声だけで、話しかけた相手の声は普通の状態。


 そのせいでエリザベートの声が聞こえたということ。


 そして、エリザベートはすぐに顔をしかめる。


 注意された。自分の声が消えてないことに気づいたせいかもしれない。


 なんとなく、エリザベートについた魔導士はアレクサンダー様ではないかと思った。





 森の中を歩いていく。


 たくさんの木があって、根っこのような盛り上がりがあちこちある。草はあまり生えていない。


 空を覆い隠すような多くの葉が茂っているせいで、午前中なのに薄暗くて寒い感じがした。


 古城の近くだと思うからこそ平気だけど、このまま奥に進んだら絶対に不気味な森になりそうだった。


「キノコが!」


 マルゴットは森の様子をしっかりと観察していた。


 衣装だけでなく魔法植物も好きだと言っていたのを思い出した。


「可愛いわね! でも、あれは毒キノコなのよ!」


 はしゃいでいる感じがする。


 話し相手はレベッカで、気になる魔法植物についてマルゴットに聞いていた。


 エリザベートは無言だけど、組んでいる魔導士を時々見ている。


 きっと魔導士が解説しているのを聞いているのだと思った。


 アヤナは周囲をキョロキョロしているけれど、時々騎士や男子がいるほうも見ている。


 馬車でも魔物が近づいていることに一番早く反応して結界を張ったので、今も周囲を警戒していそうな気がした。


「気配を感じますか? 魔物がいます。怖かったら私の側に寄りなさい」


 ヴァン様が囁いたので、私はすかさずヴァン様の側に寄った。


「素直ですね。ですが、小物ですよ。騎士や男子に任せておけばいいでしょう」


 やがて、ヴァン様の言った通りになった。


 魔物がいた。


 遠目に見ると一匹だけ。


 あっという間に雷が落ちて、魔物が倒れた。


 なんだかあっけない。


 怖がる暇が全然なかった。


「すごい!」


 エリザベートが喜んでいた。


 なんとなく、エリザベートについている魔導士が魔法を使った気がした。


「本当はよくありません。狩りをするのは騎士と男子。魔導士はそのサポートです」


 ということらしいです。ヴァン様曰く。


「ですが、たった一匹のためにあそこまで全員で行くのは面倒です。手間を省いたということにしてあげましょう」


 よかったですね、魔導士の人。


「あれは呼び水になるでしょう。魔法を使うと魔物が関知します。魔物は魔力があるものを好むので、魔力持ちの人間は格好のエサになります」


 魔力持ちの人間は格好のエサ?


「まさか……」

「同行者は魔物を集めるためのエサと同じです。もちろん、食べさせることはありませんが」


 しばらくすると、魔物の集団がやってきた。


 馬車を襲った魔物と同じだけど、サイズが小さい。


「あれは集団で行動するものと、一匹で行動するタイプに分かれます。集団で行動すると獲物を分け合うためにあまり成長できません。一匹で行動するタイプの方が大きくて強くなります」


 ヴァン様が解説してくれた。


「男子は魔法を撃て!」


 男子たちが魔物に向かって魔法を使った。


 でも、素早い。当たったけれど、平気な個体もいた。


「遠慮するな! 強く撃て!」


 それが合図となって、先ほどよりも強い魔法が次々と魔物に放たれ、何匹も魔物が倒れた。


 数が減った途端、魔物は止まり、逃げようとする。


 でも、容赦なく追撃の魔法が撃ち込まれ、戦闘が終わった。


「それでいい。だが、魔力には限りがある。男子は無理をするな。騎士に任せてもいい」


 魔物を見つけた場合、距離がある場合は魔法で遠距離攻撃をする。


 そうすれば安全に倒すことができる。


 でも、複数人いるとターゲットが他の人とかぶってしまう。


 それについてはバラバラにして無駄をなくすよう指示が出た。


「落ち着いて魔法を撃て。近距離になった場合は騎士が剣で倒す。魔導士がいるため、どのような状況になっても安全は確保されている。一番の問題は魔力消費だ。午前中は使ってもいいが、消耗が激しいと午後は参加できない」


 私としてはそれでもいいけれど、男子はきっと嫌がると思う。


 そのあとも魔物に遭遇したけれど、全員が魔法を撃つだけで終わってしまう。


 魔物討伐は大変だと思ったけれど、今回については練習に丁度良い程度のように感じた。


「大丈夫か?」


 アルード様が声をかけてくれた。


「大丈夫です。すぐに魔法で倒してしまうので怖くないです」


 一人で遭遇したら大変だけど、全員魔法が使えるので楽勝だった。


「その通りだ。ルクレシアも魔法を使ってもいいが、火魔法は注意が必要だ」

「水を使える魔導士がいると言いなさい」


 ヴァン様の声が聞こえた。


「水を使える魔導士がいるそうです」

「そうか。それなら使っても平気だ。中級の魔法は発動が遅くなる。動きが速い魔物は初級のほうが発動しやすくていい。当たるかどうかは別だが」

「ルクレシア、勝負しましょうよ!」


 エリザベートが突然言い出した。


「私も雷魔法を撃ちたくなってきたわ! 当たるかどうかわからないけれど、やってみましょうよ! 安全は確保してくれているし、的当てと同じよ!」

「動く的当てということね」

「絶対勝つわ!」


 やるとは言っていないのに、勝負するような状況になってしまった。


「私も撃ちます!」


 レベッカも参戦。


「私も。だけど、土魔法が効くかしら?」


 マルゴットもやってみたいらしい。


「何でもいいのよ。ダメージを与えるようなものであればね」

「そうよね。アヤナは大人しく見ているだけになりそうだけど」


 アヤナがムッとした。


「光魔法だって攻撃できるわ!」

「まだ攻撃魔法は習っていないわよね?」

「使えるの?」

「できるわ! 見てなさい! 女子で一番攻撃を当てられるのは私よ!」


 女子は魔物に攻撃魔法を当てた回数を競うことになった。


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