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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

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72 狩猟準備



 今日の予定は狩猟の準備。


 どんな準備をするのかと思えば、衣装から始まった。


「ドレスが汚れる可能性があるので、こちらで用意したものを着用していただきます」


 魔導士のローブに似ているような感じだけど、全体にびっしりと豪華な刺繍がしてある。


 衣装が大好きで魔法紋章学を得意にしているマルゴットの目が輝いた。


「素敵! 最高だわ!」


 ローブに刺繍されているのは魔法の紋章で、これによってローブに様々な魔法効果をつけている。


 全体にびっしりと刺繍されているので、それだけ多くの魔法効果をつけているというのもわかった。


「これは耐水よ! こっちが耐火! それから耐風、耐雷……」


 ローブに夢中になっているマルゴットはまるで恋する乙女。


「多くの魔法効果があるものほど、防御能力があります。ですが、それを発動させるための魔力が必要です。ですので、着用者の魔力に合わせたものでなくてはなりません」


 多くの魔法効果をつけるほど、魔力の消耗が激しくなる。


 それで準備日にどの程度の魔力消耗度があるかを調べるらしい。


「では、一番効果があるものをご着用ください。おそらく、数分程度で体調がおかしくなります。おかしいと感じたら椅子に座ってください。それを合図に効果を切る紋章に触れます。絶対に無理はしないでください」


 全員、着替えて椅子の前に立った。


「では、魔法効果を発生させる紋章に手を触れてください」


 全員、教えられた場所に手を当て、魔力を流した。


 すると、魔法服から受ける感覚が変わる。


 真っ先に感じたのはずっしりと重かったのが軽くなった。


「軽いわ!」

「全然違うわね」

「これで歩くのはつらいって思っていたからよかったわ」

「軽量化の魔法効果もありそうです」

「そうね」


 そして、五分後。


 まだ誰も椅子に座っていない。


「目を閉じてください。他の方と張り合う必要はありません。魔力量だけでなく、現在の体調やローブが合っているかどうかの相性や確認です。いつでも体調が変だと思ったら座ってください」


 ということなので、私は変だと思った瞬間に座った。


「座った方は目を開けて効果を切る紋章に触ってください」


 私は目を開けた。


 エリザベートは顔をしかめている。


 レベッカも眉間にしわが寄っていた。


 マルゴットは必死に祈るポーズ。


 アヤナは涼しい顔をしていた。


「無理しない方がいいわ。我慢比べではないのよ?」


 私の声を聞いたエリザベートとレベッカが座った。


「最初に座ったのはルクレシアだったのね」

「病気だったし、無理をしないように言われているから」

「そうですね」

「マルゴットはどう見てもつらそうよ。早く座りなさいよ」

「だって、こんな素敵なローブを脱がないといけないなんて……!」


 違う意味で耐えていたらしい。


「ブランジュ伯爵令嬢は座ってください。他のローブも試しますので」


 しぶしぶと言った感じでマルゴットは座り、効果を切る紋章に触った。


「アヤナは平気なの?」

「今のところはね。座った方がいい?」

「そうですね。十分だと思います」


 アヤナも椅子に座り、効果を切った。


「このローブは実際に着用するものではなく、調べるためのローブです。早く座った方から、魔法効果が少ない代わりに魔力消費も少ないものになります」


 魔導士が私に合うと思ったローブを選んでくれた。


「今日はこれを着て過ごしてください。魔力を消費して疲れたと感じたら効果を切るように。朝から夕方まで着用できれば、それでいいとなります。もっと早く疲れる感じであれば、別のローブに交換します」


 私は気になった。


「朝から夕方まで? ずっとですか?」

「そうです。正確には今から夕食前までです」


 私は学祭で午前中、ずっと魔力を消費し続けていた。


 そのせいで疲れて熱が出たことを考えると、このローブで同じことが起きないか心配になった。


「私は午前中ずっと魔力を使うような魔法の練習をしていて、そのせいで熱を出してしまいました。それがきっかけで病気になってしまいました」

「どんな病気ですか?」

「魔力放出症です。現在は治っていますが、再発しないように注意するよう言われています。このローブを着ても大丈夫でしょうか?」


 魔導士は考え込んだ。


「他に同じような方はいますか? 魔力放出症になったことがあるとか?」


 私以外にはいなかった。


「こちらは成人用です。皆様は未成年なので、安全のためにもっと魔力消費が少ないものにします」


 全員、ローブが交換された。


「コランダム公爵令嬢は着るだけで、魔法効果を発動しないでください。他の魔導士に相談します」

「わかりました」

「疲労を感じた時はすぐに魔法効果を切ってください。魔力消費を抑えるため、ランチタイムは必ず効果を切ります」


 私が病気になったのと同じようなきっかけになると困るため、安全策が取られた。


 ローブが決まったあとは、古城の外を散歩。


 浮遊魔法、移動魔法ができるか、誰かにかけてもらった時にふらつかないか、必要な動作がスムーズにできるかどうかが確認された。





「ルクレシア、ローブの件だが安全策を取ることになった」


 昼食はアルード様たちと一緒。


 男子たちは全員が騎士のような服装だった。


「魔法具を貸す。魔石がついているため、自分の魔力を消費しなくて済む」


 ローブは魔法効果を付与するために自分の魔力を使用する。


でも、魔石がついている魔法具であれば、魔力を魔石から供給できる。


 自分の魔力を消費しなくていい。


「わかりました。ご配慮に感謝します」

「大丈夫だ。他の者も無理はするな。魔法具に変更もできる。だが、数がない。ローブのほうがいいというだけだ」


 魔石は高価なので、数がないのは当然のこと。


 自分の魔力だけでいいなら、そのほうがいいに決まっていた。


「男子と女子では違うのですね」


 衣装に目がないマルゴットが興味津々とばかりに男子の衣装を見つめていた。


「基本的には同じような効果が付与されている気がします。でも、わからない紋章もあります」

「狩猟用だからな」

「身体強化の紋章もあります」

「あまり効果は強くない」

「あるだけましという感じだ」

「メインで狩猟をするわけではないからね」

「そうだね」


 ベルサス様、カーライト様、イアンとレアンは狩猟に参加できることを喜んでいた。


 同行して見学するのではなく、完全に自分たちも魔物を狩る気だった。


「女子も狩るよね?」

「狩るわ!」

「やってみたいです!」

「ぜひ!」

「回復係で」


 何も言っていない私に視線が集まった。


「ルクレシアは病気だった。無理はさせられない」


 そうですよね!


「森林火災になったら大変なのもある」


 二重に注意が必要なせいだとわかった。


 確かに森林火災になったら大変だけど、最初の言葉だけのほうが印象としてはいい。


 アルード様は完璧な王子のように見えるけれど、真面目で不器用な方だと思った。


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