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07 保健室



「なぜ、カーライト様がここに?」

「食堂に来なかったから気になった」


 カーライト様は食堂の席をいつもより多く確保するため、誰よりも早く教室を出て行った。


 アルード様が私を誘うことは知っていたけれど、私だけが来なかったために気になり、早めにランチを食べて私を探していたらしい。


「ルクレシアの周りには必ず誰かがいるが、今回は一人だ。アヤナと一緒であればいいが、そうでなかった場合、何かあったら大変だ」

「何かって何ですか?」

「婚約者候補同士、何かとあるだろう?」


 エリザベートのことを暗にほのめかされた気がした。


「口喧嘩で済めばいいが、些細なことがきっかけで怪我をするようなことがあっては大変だ」

「私は魔法を使えます。自衛はできますが?」

「だが、相手も魔法を使える。感情が高ぶり、思わず攻撃的な魔法を使ってしまうことがないとは言い切れない」

「それはまあ……そうですけれど」

「とりあえず、保健室に連れて行く」


 カーライト様は私を抱き上げた。


「だ、大丈夫です! 自分で歩けます!」

「歩けないからこそ座り込んだ。気にするな。体調の悪い女性を運ぶのは当然のことだろう?」


 何を言っても降ろしてくれる気はなさそうだと感じ、私は大人しく保健室まで運んでもらうことにした。






 保健室で五時限目を休んだ私は保健室の先生に回復したと言い、教室に戻った。


「ルクレシア、大丈夫なのか?」


 すぐにアルード様が声をかけてきた。


「はい。もう大丈夫です」

「無理をしなくてもいいが?」

「本当に大丈夫です」


 私はそう言うと自分の席に座った。


「心配しましたわ」

「通路で蹲っていたとか」

「カーライト様が偶然見つけて保健室に運ばれたそうですわね?」

「体調不良とか。本当に大丈夫なのですか?」

「ルクレシア様に同行すれば良かったと皆で話していました」

「お一人の時に何かあったら大変です」

「そうですわ。これからはなるべく一緒に行動します」


 私を心配してくれるのは嬉しい。


 でも、過保護のような気もしてしまう。


「ありがとう。だけど、本当に大丈夫よ。でも、カーライト様が大事を取るよう言ってくださったの」


 私は席から立つと、カーライト様のほうを向いた。


「カーライト様、あらためてお礼を。ありがとうございました」

「気にするな。回復して良かった」


 私が席に座ると、すぐにカーライト様を称える会話になった。


「さすがカーライト様ですわ」

「優しくてたくましくて頼もしい方ですわね」

「本当に。騎士のようですわ」

「騎士団長のご令息ですものね」

「将来は魔法騎士団に入団されるはず」

「王国屈指の魔法騎士になられると思いますわ!」


 カーライト様の人気は非常に高い。


 魔法騎士団長の息子ということもあるけれど、攻略対象者なので女性にモテるのは当然でもある。


 私がなんとなく視線を向けたのはベルサス様。


 アルード様、ベルサス様、カーライト様は幼馴染。


 三人の中で最も人気があるのはアルード様らしい。


 その次に人気があるのはカーライト様で、最後はベルサス様だと聞いた。


 とても頭が良いけれど、妹を溺愛しているというのが問題らしい。


 何かと目立ち注目されてしまう三人であり、比べられてしまう三人でもある。


 アルード様だけでなく、カーライト様にも助けてもらったのは嬉しいけれど、そのせいでベルサス様とも何かが起きてしまいそうな気がした。


 私は悪役令嬢。攻略対象者とのイベントが発生するのは主人公のはずなのに……。


 アヤナの話では、主人公とアルード様が出会うイベントに私が割り込んでしまった。


 一人になると発生するイベントがあるとも聞いたけれど、カーライト様に助けられたのはまさにそのようなイベントなのかもしれない。


 正直、私はどんな風に立ち回ればいいの?


 悪役令嬢らしい役回りはしたくないけれど、そうならないようにするための立ち回りもわからない。


 一人になりたいアヤナの気持ちはわかるけれど、機会を見てもっと詳しくゲームのことを教えてもらわないと困る。


 早く何か考えて、連絡してね!


 そう思いながらアヤナのほうに顔を向けるけれど、アヤナは我関せずといったかのように教科書を見ている。


 その周囲に漂うのは孤独ではない。


 独りがいいという拒絶のように感じた。


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