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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

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69 古城到着



 古城に着くと、離宮の時と同じように全体説明があった。


「今回の予定表を配ります」


 狩猟のための講義。


 狩猟のための準備。


 狩猟への同行。


 狩猟での実践練習。


 全部、狩猟関連だった。


「こちらに来る途中で魔物に遭遇したのでおわかりかと思いますが、この時期は魔物が出没しやすくなります。ですので、魔物を狩り、できるだけ生息数を減らして爆増を防ぎます」


 わかる。頭では。


「古い城なので快適度は落ちますが、必要なものは揃えてあります。しっかりと勉強されてください」

「はい!」


 気合が入った返事が多数。


 私は同じように言えなかった。





 夜、問題が起きた。


 部屋割りのせいで。


 指定された部屋は狭く、しかも二人部屋だった。


 荷物はすでに置いてあり、エリザベートとマルゴット、レベッカとアヤナ、私は一人部屋だった。


 なぜこうなったかというと、身分順。


 公爵家が一番上なので一人部屋、他は侯爵家、伯爵家、男爵家を上から順番に組み合わせただけなので、全員が納得した。


 でも、入浴の順番が各部屋の身分順になったことで、自分よりも序列の低いレベッカのほうが先に入浴できると知ったマルゴットが怒ってしまった。


「私はレベッカよりも家の序列が高いのよ? レベッカよりも先に入浴できるはずだわ!」


 びっくりしてしまうぐらい、マルゴットが激しく怒っていた。


「レベッカ、部屋を変わりなさいよ!」

「王家が決めた部屋割りです」

「変えてもらえるように言うわ!」


 部屋付きの侍女が呼ばれて聞いたところ、女子の話し合いで交換することは可能だとわかった。


 マルゴットがレベッカと話し合っている間にエリザベートはさっさと入浴してしまい、それがまたマルゴットとレベッカの怒りを買った。


「話し合っているのに、自分だけ入浴するなんて!」

「そうよ! 一人部屋のルクレシア様もまだ入浴しないで待っています!」

「長くなりそうだったからよ。くだらないわ。大したことではないでしょう?」

「だったらエリザベートが二番に入りなさいよ!」

「そうです!」

「嫌よ。それにもう入ってしまったわ。それにこれは伯爵家同士の話し合いでしょう? 侯爵家には関係ないわ」


 結局、私が自分の部屋をマルゴットに譲った。


 私はエリザベートと一緒の部屋になり、入浴の順番も二番でいいということで収まった。


「マルゴットのわがままでしょうに」


 マルゴットとレベッカは収まったのに、エリザベートは怒っていた。


「ルクレシアの身分が上なのに、遠慮するどころか喜ぶなんて図々しいわ!」

「もう気にしないで。騒がしいとゆっくり休めないわ。明日から勉強なのよ」

「そうだけど」

「ねえ、エリザベートは……怖くないの?」


 私は同じ年齢で攻撃系の雷属性を得意にしているエリザベートに聞きたかった。


「火や雷は攻撃役だわ。魔物と対峙して倒さないといけないのよ。他の属性は後ろで支援していればいいわ。怖くて危ないほうを押し付けられているって感じない?」

「魔物は怖いわ」


 エリザベートは答えた。


「だけど、私には特別な力がある。魔法で魔物を倒せるわ」

「そうだけど」

「うちに来た時、お兄様が練習室にいたでしょう?」

「いたわね」

「たくさんの雷を落としていたわよね?」

「そうね」

「あれは魔物を倒す練習よ。一気に範囲魔法で倒そうとすると、味方にも攻撃してしまうわ。だから、自分の周囲に味方がいる時は個別に狙う対象を設定して魔法を使わないといけないの」

「そうね。単体魔法を使うってことでしょう?」

「そうよ。でも、たくさんの魔物に囲まれていて、さらに味方もいたら大変でしょう? それでも素早く周囲の魔物を個別で倒せるように次々と雷を落としていたの」

「すごいわね……」

「そうよ。すごいの。だから、私はお兄様を尊敬しているわ。味方が側にいても、魔物だけを正確に素早く倒せる魔法が使える。私もあんな風になりたいの」


 ハウゼン侯爵家は武功を立てたことによって爵位を上げた。


 だからこそ、武功を上げることが家訓になっている。


 武功を上げるには魔物討伐に参加すればいい。でも、後衛的な役回りでは武功を上げることができない。


 攻撃系の魔法である雷魔法の使い手は有利。どんどん魔物を倒すことで武功を上げることができる。


 出世しやすく地位を守りやすい。雷の系譜はすごいのだと小さな頃から教わったことを話してくれた。


「火魔法も同じ。たくさんの魔物を倒せばたくさんの武功を上げることができるわ。それはたくさんの人々を助けることができたのと同じなのよ。喜んでもらえるし、素晴らしいって讃えられるわ。だから、強い魔法を使えるようになればいいわ。一瞬で魔物を倒してしまえば怖くないでしょう?」

「そうね……」

「大丈夫よ。私たちは魔法学院で学べるだけの才能があるし、着々と実力をつけているわ。他の人よりも先にこういった体験ができることを喜ばないと。アルード様と一緒なら安全が確保されているわ。安心して参加できるってことよ!」


 確かにそうだと私も思った。


「ありがとう、エリザベート。頑張ってみるわ」

「勇気を出して。水を克服したルクレシアならできるわ!」


 私もそう信じたいと思った。



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