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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

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66 三学期



 アヤナの購入したい本のことが両親の耳に入った。


 私が欲しがっている本だと思われてしまい、あれこれ質問攻めにあった。


 親しくしている友人に貸すためだと説明したけれど、本当にそうなのかと疑われてしまう。


 この世界はゲームと同じ。しかも、恋愛の。


 だから、この世界にいる人々が恋愛や結婚について早くから真剣に考えているのはわかるし、子どもが生まれにくい条件もあるなら余計に力が入るのも理解できる。


 でも、私は魔法を勉強したい。


 恋愛や結婚という話題の中に入りたいとは思わない。


 ルクレシアが経験した大噴水の事故と同じ。私にとってはトラウマになっていることなので、触れてほしくないというのが本音だった。





「誰に渡すの?」

「何を?」

「チョコレートよ」

「なぜ、チョコレートを渡すの?」

「バレンタインデーだからに決まっているわ!」

「本気で言っているのですか?」


 学校でアヤナ、エリザベート、マルゴット、レベッカに囲まれた私。


 すっかりバレンタインデーのことを忘れていたことに気づいた。


「もうそんな季節なのね……期末テストが迫っているのに!」

「勉強で頭がいっぱいだったのね」

「前回、十位だったからでしょうね」

「三学期の期末テストは順位を上げないとね」

「女子で総合五位に入りたいはずです」


 その通り。


「でも、勉強だけで成績が決まるとは限らないわよ? 運命の力だって関係するかも」


 アヤナに言われてドキッとした。


 それは攻略対象者との関係がテストに影響を与えることを暗示しているように聞こえた。


 よくよく考えれば、二学期はアルード様や他の攻略対象者と親しくしていたとは言えない。


 むしろ、疎遠になっている感じがした。


 そのせいで病気になったり、期末テストの結果が悪くなったりしたの?


 そうだとしたら最悪。





「どうすればいいの?」


 私はアヤナにこっそり相談した。


「チョコレートを贈ればいいだけでしょう?」

「わかっているわ。でも、アルード様だけに? 他の攻略対象者にも?」

「一応、この世界にはお世話になっている人にも日頃の感謝を込めてチョコレートを贈るというのはあるのよ。だから、複数贈っても平気。ゲームでもお金を溜めて、チョコレートを買うのよ」

「手作りじゃないの?」

「手作りの場合と、お金で買う場合があるわ」


 手作りの場合はミニゲームでチョコレートを作る。


 うまくできたチョコレートを攻略対象者に渡すと好感度が上がる。


 買う場合はゾーイの館で買う。


 値段が高いチョコレートほど、好感度が上がる。


 手作りの場合はうまくできたかどうかで効果にばらつきがあるけれど、買ったものは値段が高ければ効果も高いのがはっきりとしている。


 つまり、推しにはできるだけ高いのを買って渡せばいい。


「アヤナはどうするの?」

「買うに決まっているでしょ」


 窮乏しているスピネール男爵家でチョコレートを作れるわけがない。


 アヤナは特待生のために食堂でランチを食べるための金額も奨学金に入っている。


 それを弁当にすることで貯めており、貯金でチョコレートを買うことがわかった。


「そうだったのね……」


 奨学金の中にランチ代が含まれているのに、私に奢ってもらってばかりなのはおかしい。


 明らかに私を金銭的に利用しているとなってしまう。


 だから、一回だけは受けた。でも、そのあとは絶対に断っていた。


「学祭だって自分で出すって言ったでしょう? 結局、奢ってもらっちゃったけれど、その程度のお金はあるのよ」


 魔法学院の食堂で食べるランチは高い。


 弁当を質素にすれば、その差額は多い。簡単に貯金ができるということだった。


「スピネール男爵家はお金のことであてにできないから、自分で自分のお金を管理して、計画的に使うようにしているわ」

「偉いわ……」

「そうでしょう? でも、本を買うとどんどんなくなってしまうから、それはルクレシアを利用させてもらうわ。図書室や図書館も活用しているけれどね」

「あの本のせいで、いろいろと勘違いされたわ」

「そうだと思ったけれど、人気で借りることができないのよ。そもそも蔵書がないのもあるしね」

「アヤナはああいう本をよく読んでいるの?」

「当たり前でしょう? この世界は恋愛のためにあるようなものなの! 推し活に必須な知識を溜め込んでおかないと!」


 私は気づいた。


「推し活をしているの?」

「まだまだ準備中」

「誰なの? 登場したの?」

「教えないわ。ルクレシアが好きになって、取り合いになったら困るから」

「ならないわよ。私は恋愛したくないってこと、知っているでしょう?」

「そうね。でも、推しのほうはわからないわよね? ルクレシアに興味を持ったり、好意をもったりするかもしれないわ。そうなったら、私は推しの心をルクレシアから私に向けるために頑張らないといけないわけ。ルクレシアは敵になるのよ!」

「私は敵じゃないわ! アヤナに協力するわよ!」

「そういっていられるのは、今のうちだけかもしれないわ。勝手にライバル関係になるような補正がかかる可能性だってあるのよ? 私やルクレシアではなく、攻略対象者に補正を加えるだけでいいわけだから簡単よ」


 反論できない。


「とりあえず、チョコレートを渡しておきなさいよ。でないと、また病気になったり成績が悪くなったりするかもしれないわよ?」


 それは困る。


「悪役令嬢は最高級のチョコレートを渡すわ。だから、ルクレシアもそれでいいと思うわよ」

「私は悪役令嬢ではないわ」

「公爵令嬢でも同じよ。手作りなんてしないわ。ゾーイの館で買うと私とかぶってしまうからやめてよね。パッケージが同じになってしまうでしょう?」

「そうね」


 屋敷で雇っているパティシエにチョコレートを作ってもらい、攻略対象者以外のクラスメイトやグループメンバーの全員に配ることにした。


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