47 二学期は波乱の幕開け
二章も書くことにしましたので、お付き合いいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
二学期になった。
初日は一学期の成績を考慮したクラス替えがあることがわかっているため、どのクラスになるかがドキドキであり楽しみでもあった。
総合成績の順位から考えると、私は特級クラスに残ることができる。
アヤナも一緒だけど、レベッカは別の特級クラスになってしまいそうだった。
また、特級クラスの女子は三人だけで、あとは全員が男子になりそうだと思っていた。
ところが。
「予想外だわ……」
総合順位とは違うクラス分けになったのは確か。
なぜなら、エリザベートとマルゴットが同じクラスだから。
「また同じクラスね!」
「特級になれたのは嬉しいけれど、それ以外についてはどうかしらね」
「どうして二人が特級なのよ!」
「おかしいです」
エリザベート、マルゴット、アヤナ、レベッカが話し合う。
私の席の周りというか、女子の席は固まっているので仕方がない。
「知らないの? 二学期は魔法が重視されるのよ!」
「座学がどれほどできても、魔法が使えないのでは話にならないわ」
エリザベートやマルゴットには兄や姉がいるので、魔法学院について詳しく知っているらしい。
「じゃあ、このクラス分けは、魔法実技の成績が良かったかどうかなの?」
「実技だけではないわ。実践系のテスト結果が重視されるのよ」
「座学系のテストが良くても、実践系のテストが良くないとダメってことね」
結局は魔法が使えるかどうかが重要。
魔法の実力があるかどうかでクラス分けをするというのはわかる。
一学期は特級クラスでも魔法の発動に手間取る人も結構いた。
そういう人がざっと見ていないことからいっても、魔法ができるかできないかの差は大きくなりそうだと感じた。
「一緒だね!」
「よろしくね!」
挨拶とばかりにやって来たのは双子。
一学期は別のクラスだったけれど、二学期は同じクラスになった。
「わからないことがあったら聞いてくれたらいいよ」
「兄様がいるから、魔法学院については結構わかる」
ああ……それで。
アルード様からアヤナを調べるように言われたのはイアン。
魔法学院の敷地は広いけれど、イアンは兄がいるので学院の事情に詳しい。
風魔法の使い手ということも合わせると、居場所を探すのに適役だった。
「私は大丈夫よ。お兄様がいるもの」
「私だってお姉様がいるわ」
エリザベートには兄、マルゴットには姉がいる。
先生が来たので、全員が指定された席に戻って座った。
「二学期からは新しいクラスになる。一学期とは変わることがあるため、しっかりと説明を聞くように」
一学期のクラスは入学時に受けた成績によって分けられた。
でも、魔法学院は魔法を本格的に実践していくための学校であるため、いくら知識があっても魔法をうまく使えないのでは話にならない。
そこで一学期の期末テストの結果を参考にして、魔法の実践的な授業についていけるかどうかの実力をはかり、クラス分けが行われた。
座学は魔法を行使する上で重要ではあるけれど、魔法の実践については各自が自主的に勉強し、実力をつけていく必要があることが説明された。
「二学期からは属性の授業が始まる。どの属性を選択するかは自由だが、実技ができない場合は別の属性に変更になる。期末テストで一定以上の成績を取れなければ退学勧告もありえる」
教室がざわりとした。
魔法のエリートを目指す者が進学するのが魔法学院。
入学できたというのに、一年も経たずに退学なんて不名誉極まりない。
今後の人生に大きな影響を与えるのは確実だった。
「特待生はより励むように。成績によって奨学金のランクが変更される」
一学期における特待生のランクは全員が最上位。
それは将来性があるのに金銭的な事情で入学できない者を救済するためだった。
でも、二学期からは成績次第で奨学金のランクが下がっていくため、注意するよう通達された。
「当たり前のことだが、属性は最も得意とする魔法と同じにすべきだろう。興味がある属性を選ぶかどうかは任意だが、成績が悪いと魔法学院に在籍できない。よく考えて選択するように」
得意な属性が複数ある者、得意と思える属性が特にない者もいる。
そこで二学期はどの属性の授業に出てもいいけれど、テストを受けることができるのは一属性のみ。
中間テストの結果を見て属性を変更する者は普通にいるけれど、期末テストで良い成績を取るのが難しくなることも伝えられた。
「属性選択の書類を渡す。中間テストをどの属性で受けるかが決まるため、それまでには提出するように」
「光に決まっているわ」
アヤナは早速名前などを書き始めた。
私も火属性を選択するつもりでいたため、名前を書く。
でも、エリザベート、マルゴット、レベッカは何も書かずに用紙をしまった。
「エリザベートたちは書かないの?」
「当たり前でしょう? 両親に相談しないと決められないわ」
「貴族は家の事情で何事も決まるのよ」
「そういうことです」
そうなのかと思ってしまった。
「まあ、ルクレシアは一択でしょうけれど」
「火魔法だけしか使えないようなものだし」
離宮で少しは仲良くなれたと思ったのに、魔法学院では元通りといった感じ。
嫌みにしか聞こえなかった。
「大切な書類だから名前を書いておこうと思って。なくしたら困るでしょう?」
「なくさないわ!」
「しまったから大丈夫よ!」
エリザベートとマルゴットが私を睨みつけた。
「一学期の期末テストで上だったからといって、威張らないでよ!」
「そうよ! 自分の方が上だからって余裕を見せつけたいのはわかっているのよ!」
そんなことは微塵も思っていない。
でも、そう思われても仕方がない。
なぜなら私は悪役令嬢。
なにをしても悪役令嬢らしくなってしまいそうな補正がかかるように思えてならない。
「そこ! 静かにしろ!」
先生に怒られた。
「ルクレシアのせいよ!」
「そうよ!」
絶対に違う。
これも悪役令嬢補正なら、面倒過ぎるとしか言いようがない。
二学期のクラス分けは波乱の幕開けのように感じた。




