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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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39 報告



 夜になると、アヤナが部屋に来た。


「報告があるのよ」

「新しい情報?」

「まあね」


 アヤナはソファに寄りかかった。


「順調だけど、複雑」

「どういうこと?」

「ルクレシアの悪口が多くて」


 なるほど。


「仕方がないわ。ライバルだし悪役令嬢だもの」

「中身は違うのにねえ」

「そうよねえ」


 私がアヤナの真似をしたことで、アヤナはにやりと笑った。


「いっそのこと、主人公になる?」

「何言っているの? 無理に決まっているわ」

「そうでもないわ。なんとなくだけど、私が好感度を上げるようなことをしていないせいで、攻略対象にとっての主人公的存在はルクレシアになっている気がするの」

「悪役令嬢が男性に大人気だっていうの?」

「ルクレシアは何でも持っているって感じのキャラなのよ。公爵令嬢でお金持ちで美人で頭も良くて魔法の才能もあるわ。普通に考えれば、かなりの高条件よ」

「でも、性格がダメなのよね?」

「ゲームではね。過去のルクレシアもそうだったらしいけれど、今のルクレシアは高慢じゃないわ。むしろ、好感が持てる人物よ。元平民の男爵令嬢の世話を焼いているし、自分のおグループに平民を入れているしね」

「悪く思われていないなら嬉しいわ」

「攻略対象とのイベントみたいなことが起きていない? 一対一で会うとか」

「あったわ」

「誰と?」

「イアンと図書室、レアンとギャラリーで会ったわ。」

「ふーん」


 アヤナは私をじっくり見つめた。


「一応聞くわ。イアン様かレアン様を狙う?」

「狙わないわ。こんなこと言うのもなんだけど、十五歳なのよ?」

「そうよ。だから?」

「中身は大人なの。かっこいいとは思うけれど、それだけよ」

「私も同じ。クラスメイトに告白されたとしても、何とも思わないわ。せめて結婚できる年齢になってから出直して来いって感じ?」


 やっぱりアヤナとはわかりあえると思った。


「エリザベートやマルゴットはアルード様を狙っているわけでしょう? 本当は応援してあげたいわ。だけど、私も婚約者候補だから難しいというか」

「応援してあげれば? 喜ぶわよ?」


 アヤナが言った。


「気が変わったとか、自分では無理そうとか、諦めるようなことを言えばいいんじゃない?」

「でも、両親がなんていうか……」

「コランダム公爵夫妻は絶対に王子妃になれって感じなの?」

「そうよ。圧がすごいの。私が王子妃になれば、強い力を得られるのはわかりきったことだわ。王子妃になれるように頑張れって言われているの」

「そうなのね」

「アヤナこそ、イベントは発生していないの?」

「あるわよ。イアン様からの呼び出しとか」

「スパイの活動のことね」

「お互いに流せる情報があれば交換することになったわ」

「情報屋の開業ね」

「新情報があるから伝えておくわ」


 ハウゼン侯爵家は王太子派の貴族で、エリザベートを王太子妃にしようとしていた。


 でも、王太子の得意な魔法が光から水になってしまった。


 反属性である雷が得意なエリザベートとの縁談はありえないとなり、アルード様の婚約者候補になったという話だった。


「それは知っているわ。両親がくれた資料に載っていたのよ」

「教えてくれればいいのに!」

「一応、コランダム公爵家の機密情報だから。アヤナはゲームの知識があるし、すでに知っていそうな気がして」

「ゲームとは立ち位置が違うから。エリザベート、マルゴット、レベッカはルクレシアの取り巻きなのよ」

「そうなの?」


 初耳。


「どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」

「言っても仕方がないでしょう? 違う状況だったし。でも、レベッカは同じグループだから取り巻きかもね」

「友人だけど、そう考えてもおかしくはないわね」

「あの三人については取り巻き一、二、三の設定しか知らないの。詳しいことは私が自分で情報を収集しないとわからないってわけ」

「なるほどね」

「ルクレシアが婚約者候補になったのも事故のせいみたい。アルード様が声をかけたせいで事故が起きたわ。だから王家の配慮でルクレシアを婚約者候補にしたっていうのがもっぱらの噂らしいわ。でも、婚約者にはしていないでしょう? 結婚して責任を取るってことではないみたい。ルクレシアが勝手に噴水に落ちた、自己責任って人もいるわけ。だから、候補にはなれたけれど、婚約者になるのは難しいって言われているらしいわ」

「主人公のライバルなのに?」

「婚約者になってもおかしくないのに婚約者候補にしかなれないから、内心焦っていたのかもね? まあ結局は主人公に負けてしまうようなキャラだし」

「どんなにすごい設定でも、所詮は悪役令嬢ってことかもね」

「明日でプールの授業は最後よ。来週はまた別の時間割りが待っているわ」

「どんなものになるのかしら?」

「さあね。それまでに便利な風魔法を必死で覚えるしかないわね」


 もっと時間がほしい……。


「じゃあ、おやすみなさい。水泳は体力が必要だから寝るわ」

「おやすみなさい」


 私もさっさと寝ることにした。





 快晴の空の下で授業を受けられるのは気持ちがいい。


だけど。


「私が指導する授業は今日で最後です」


 やっぱり。


「ヴァン様の授業をずっと受けていたいです」

「離宮の滞在期間は限られているのでね。別の仕事があります」

「そうですよね」

「午前中は風魔法をできるだけ使います。午後は魔力を回復するために別のことをします」

「どんなことをするのでしょうか?」

「浮遊魔法を使った飛行の体験です」


 午後になるのがとても楽しみになった。


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