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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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35 アヤナからの提案



 夜。


 私はアヤナの部屋に行った。


「来ると思ったわ」


 アヤナは私を招き入れた。


「水泳の授業、どうだったの?」


 時間割では一日中水泳の授業だった。


 水泳の授業は西側にある湖でするため、授業を受ける人は外出になる。


 そのせいで昼食は一人。


 夕食についても時間変更があったけれど、私は外で授業をしていたために変更の連絡を知るのが遅くなり、参加できなかった。


「水着は用意していないわ。大丈夫だったの?」

「それは大丈夫。女子は水着を用意していなかったわ。でも、別館のほうに用意されていたのよ」

「そうなのね」

「でも、普通のものじゃないわよ?」

「というと?」

「簡単に言ってしまうと、ひざ上のミニワンピース。それに短いズボンを履くの。でも、形からいってパンツよ! 私から見れば絶対にそう!」

「そうなのね」


 なんとなくではあるものの、この世界の水着がどのようなものかの想像はできた。


「普段は足を隠すためにロングドレスを着る貴族の令嬢が、水泳の授業とはいえそんな恰好をするわけよ。男性と一緒なんて絶対に無理だから、別の場所ですることになったわ」

「わかるわ」

「大体の流れを説明するわね」


 朝食後、水泳の授業を受ける人が集まって合同説明を受けた。


 女子は女子だけの説明だったため、アヤナ、レベッカ、エリザベート、マルゴットが参加した。


 午前中は水泳の基礎知識について。泳げるかどうかの確認もあった。


 アヤナは転生前の記憶があるために泳げると思ったが、この世界のアヤナとしては水泳を習ったことはないため、あまり泳げないと答えた。


 レベッカ、エリザベート、マルゴットはたしなみ程度に泳げると答えた。


 水泳の授業を担当する魔導士の引率で馬車移動。


 湖の側には水泳や水遊びの時に使用される別館がある。


 そこで侍女たちに手伝ってもらって水着に着替え、まずは屋内プールで水に浮かぶことができるか、泳ぐことができるかを確認した。


 全員問題がなさそうだとなり、ボールを取りに行くゲームをした。


 最初は水の中を歩きながら、プールに浮かんでいるボールを取りに行く。


 次は走ってもいいというルールになった。


 最後は泳いでもいいとなったため、全員が泳いでボールを取りに行った。


 勝負ということで、エリザベート、マルゴット、レベッカは本気で泳いでいた。


「全力でクロールをしていたわ」

「そうなのね」


 あの三人からは想像がつきにくい。


「一番速かったのは誰だと思う?」

「わからないわよ」

「エリザベートよ」


 エリザベートが得意な魔法は雷。水の反属性になるが、本物の水に対しては強かった。


「二番はマルゴット、三番がレベッカね」

「この世界の女性は泳げるってこと?」

「さあね。でも、貴族の女性でも泳げることがわかったわ」

「そうね」

「ボール取りのゲームが面白かったせいか、あっという間に時間が経ってしまったわ。水着から着替える時に別館で入浴したの。着替えも用意されていたわ」

「そうなのね」

「初日のせいか疲れてしまったと皆で言っていたら、そのまま別館で夕食を取るって連絡が来たの」


 別館には湖の景色を見渡せるバルコニーがあり、そこが夕食会場だった。


 ライトアップされた別館と湖の景色を見ながらの夕食に女子たちは大興奮。


 湖で水泳の授業をしていた男子も夕食で合流し、水泳の授業を頑張ろうということで乾杯した。


「アルード様も一緒だったわ。男子たちと一緒に水泳の授業を受けていたみたい。ルクレシアは離宮のほうから馬車で来ると聞いていたけれど、連絡が遅くなって無理だったと聞いたわ。それであってる?」

「そうなのよ。外で魔法の授業を受けていたから、夕食の時間と場所が変更になったことを連絡するのが遅くなってしまったみたい。自分の部屋で食べたわ」

「残念だったわね。とても素敵な夕食会だったのに」

「仕方がないわ」

「これからは男女で授業の場所も時間も違うから、昼食や夕食の時間や場所も変更ですって。先に配った時間割りにその点が抜けていたらしくて、再度作り直したものを明日の朝食の時に配られるらしいわ」

「それは聞いたわ」

「それでちょっと相談があるのよ。水泳の授業を利用して、エリザベート、マルゴット、レベッカと仲良くなろうと思うの」

「あの三人と?」


 私は純粋に驚いた。


 一人がいいと言っていたアヤナが方針を変えたことに。


「三人は私がアルード様に見初められることを狙っていると思っているみたいなのよね。婚約者候補ではないけれど、得意な魔法が光魔法でしょう? アルード様も光魔法が得意だわ。つまり、属性の相性がとてもいいわけ」

「わかるわ」

「王家は光の魔導士の家系よ。だから、アルード様は光の魔導士になることを期待されているわ。当然、子孫も光の魔導士になれそうな者がいいわよね。つまり、結婚相手は魔力持ち、できれば光魔法が得意な女性がいいってこと」


 それは両親の調書を読んで知っていた。


「有力な上級貴族の中に、アルード様と年齢があって光魔法が得意な女性がいないのよ。だから、魔力が豊富なルクレシア、エリザベート、マルゴットが婚約者候補ってわけ」

「そうね」

「でも、下級貴族ならいるわ。魔力が豊富で光魔法が得意、それでいてアルード様と同じ年齢で将来が楽しみな者がね」

「アヤナね」

「正解。だから、新しい婚約者候補になりそうだって警戒されているの。誤解を解くためにも友人になろうと思って」

「なるほどね」

「でも、エリザベートやマルゴットはライバルのルクレシアも警戒しているわ。ルクレシアと私の仲が良いと、私とは絶対に仲良くしてくれないわ」

「そうでしょうね」

「でも、私からルクレシアに近づいたわけではないわ。勝手にルクレシアから友人になりたいって言い出して、目をつけられただけよ」


 否定はしない。


 アヤナにしてみればそうなる。


「公爵令嬢だし、アルード様の命令に従って友人になっただけといえば、エリザベートとマルゴットも確かにそうだと思うでしょう? 友人になれる可能性はあると思うのよ」

「そうね」

「だから、しばらくルクレシアとは距離を置くわ。そして、エリザベート、マルゴット、レベッカと仲良くなって情報収集をするわ」

「わかったわ。友人が増えることはいいことだもの。私のせいでアヤナの友人が増える機会を奪いたくはないわ」

「そう言うと思ったわ。でも、見返りはあるわよ。ルクレシアの過去情報を入手してあげる」


 私が転生したのは入学前。それよりも前のことについては知らない。


 アヤナにはゲームの知識があるけれど、ルクレシアの詳しい過去は知らない。


 私とアヤナが初めて会ったのは、魔法学院の入学日。


 この世界のルクレシア・コランダムが誕生してから魔法学院に入学するまでのことは、私もアヤナも知らないということになる。


 でも、上級貴族として交流する機会があったはずのエリザベート、マルゴット、レベッカは知っている。


 三人と仲良くなれば、ルクレシア・コランダムの過去の情報がわかる。


「重要な情報を入手してあげるんだから、協力してよね」

「わかったわ!」


 私もルクレシアの過去については知りたい。


 どんなことでも協力するつもりだった。


「じゃあ、細かい作戦について話すわ」


 アヤナはどうすればいいかを説明した。


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