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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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31 夜の打ち合わせ



 ダンスのノルマが終わると、今度は食事が用意された部屋に移動して立食になった。


 これもマナー勉強の一環と聞くと、離宮における生活の全てが勉強になっていると思うしかない。


 やっぱり合宿だわ……。


 取り皿を受け取った私は、ふと気づいた。


 もしこれがゲームのイベントであれば、攻略相手にどうするかで好感度が上下するはず。


 現時点においてはダンスをしたことで、アルード様、カーライト様、イアンの好感度が上がっている気がした。


 そうなると、相対的にベルサス様とレアンの好感度が下がっていることになる。


 私は誰かを狙っているわけではないし、平均的にしておくというか、全員と友人になれたらいい気がするのよね。


 ということで、まだ交流していないレアンかベルサス様に話しかけてみることにした。


「どのようなものを選ばれたのですか?」


 食事については誰に対してもできる定番かつ安定の話題。


「あ、えっと……目についたものを」


 レアンはやや驚いた感じで答えた。


 私はレアンの取り皿を見たあと、その隣にいるイアンの取り皿のほうも確認した。


「双子でもお皿に取るものは違うのですね」


 アヤナから聞いた好物はチョコレート。でも、細かい部分が違う。


 双子なので揃いの衣装を着ているのに、自分のものであるという印として色を変えている。


 同じようで、同じではない。


 同じ顔をしていても、やはり二人の人間。世界に唯一の存在同士なのだと感じた。


「それはそうだよ。まるっきり同じものを選んでいたらおかしいと思うな」


 すぐにイアンが答えた。


 普通ならイアンに対して答える。


 でも、それではいつも通り。


 双子としてセット、交互に話すような状態になってしまう気がしたので、またレアンに話しかける。


「野菜が好きなのですか?」


 ピクニックランチでは私の持って来た肉肉しいボリューミーなサンドイッチを喜んで食べていた。


 でも、レアンのお皿には肉がない。野菜が多かった。


「なんとなく……野菜から」


 いきなりメイン系を取るのではなく、前菜系から取るということなのかもしれない。


 私はイアンの皿をもう一度見た。


「比べているね?」


 あえてイアンには答えない。


「お皿には足りないものがあります。私が追加しても?」

「いいけど、何かな?」

「気になるね?」


 レアンだけでなく、イアンも私に視線を向けた。


「こちらです」


 私が取ったのはキャロット・ラぺ。


「お野菜は三つの色を選ぶようにすると、栄養的にも見た目的にもバランスがいいのです」


 レアンの皿にあるのは全て緑か黄色の野菜。赤い野菜がなかった。


「立食は一度に数種類のものを皿に取ります。食べてしまえばなくなってしまいますが、取った時の状態が美しくなるように、また栄養面も考慮しておくのが淑女のたしなみです」

「さすがルクレシアだね」

「淑女だ!」


 レアンとイアンは納得といった表情になった。


「僕の皿にも何かある?」


 イアンも同じように追加してほしいというのが明らか。


 レアンと違う野菜、肉系や魚系を選んでいる。


「トマトのマリネですね」


 赤系が足りないのはレアンと同じ。


 でも、別のものにした。


「もう少し緑があると綺麗に見えます」

「それって意味がある?」


 イアンは意味がないと思っていそうだった。


「あります。お皿の美しさまで気遣うのは向上心がある証拠です」

「ルクレシアは向上心があるよね」

「上のほうばかり見ている気がするけれど」

「ほとんどの人は、自分の好きなものばかりを選びます。でも、色を気にすることで、少し違う選択ができます。栄養のための選択は積み重ねることで健康を支えてくれます。いつまでも二人そろって健康でいたいのであれば、私の言葉を覚えておくといいかもしれません」

「先生がいる気がする」

「そうだね。マナーの先生みたいだよ」

「一応、こちらの食事も勉強の一環とのことなので。では、失礼」


 私が向かったのはデザートコーナー。


 一口サイズのイチゴのケーキ、チョコレートケーキ、レモンケーキ、メロンケーキ。


 彩りはバッチリ。


 そして。


「ダンスのあとなので、冷たいものからですか?」


 アイスクリームに続きシャーベットを取っているベルサス様に話しかけた。





 歓迎会が終わったあとは自室に戻り、就寝に備えて着替えなければならない。


 部屋付きの侍女が着替えや化粧を落とすのを手伝ってくれたけれど、こういったことになれていないはずのアヤナが心配だった。


 私のように勉強していないかもしれないし、したくてもスピネール男爵家の状況では無理な気がする。


 そこで就寝の準備をして部屋付きの侍女が下がったあと、ガウンを着用した。


「準備完了」


 音を立てないようにそっとドアを開け、廊下の様子を見る。


 誰もいない。


 アヤナの部屋は隣のため、素早くノックした。


「誰?」


 一部屋しかないので、ノックを聞いたアヤナがすぐに反応した。


「私よ」


 ほどなくしてドアが開いた。


「公爵令嬢なのに」

「だから、早く入れてよ」


 アヤナもすでに就寝の支度をしたあとで、ベッドの上にある毛布にしわがあった。


「寝ていたの?」

「五分ほど前からね。部屋付きの侍女はさっさと下がったわ」

「ごめんなさい。部屋付きの侍女がいろいろとやってくれるとは思ったけれど、アヤナが心配で」

「着替えて寝るだけよ?」

「そうだけど、いつもと違う衣装だし、宝飾品もつけていたわ。ちゃんとしまった?」

「最初にはずしてしまったわ。自分でしっかりと鍵をかけたし、部屋付きが下がったあとにも開けて確認したから大丈夫。盗まれていないわよ」

「用心深いわね」

「貸出品でしょう? なくなっても弁償なんかできないわ!」

「ドレスはちゃんとハンガーにかけた?」

「それも大丈夫。部屋付きが明日、明るいところで汚れがないかチェックするって。お湯で濡らしたタオルを当てて、しわ取りもしてくれるらしいわ」


 さすが離宮の侍女。しっかりと対応してくれているらしい。


「侍女がいると気を遣うけれど、あれこれしてくれるのは便利だわ」

「何かあったら遠慮しないで聞いて。アヤナの持ち物はコランダム公爵家で用意したわ。管轄者は私。問題が起きないようにしないとね」

「わかったわ。何かあったらちゃんと言うわよ」

「それから聞きたいことがあるわ。まず、私には弟がいるの?」


 たっぷり間が空いた。


「知らなかったの?」

「そうよ」


 屋敷の中で会ったこともなければ、弟の存在について両親や使用人から聞いたことさえないことを私は話した。


「公爵家の長女というのは知っていたけれど、下に妹がいるのか弟がいるのかわからなかったわ。別居しているのだと思ったのだけど、アヤナは詳しいことを知っていそうね?」

「全然。知らないわ」


 アヤナは即答。


「でも、弟がいるって言ったのはアヤナでしょう?」

「そうだけど、それしか知らないわ。設定は知っているけれど、弟はゲームに登場しないから」

「そうなのね」

「自分の家族のことぐらい自分で調べなさいよ。私より調べやすいでしょうに」

「帰ったら調べてみるわ。それから別のことよ。このバージョンはゲームにあるの?」

「聞かれると思ったわ」


 アヤナは予想していたようだった。


「あると言えばあるけれど、ちょっと違うのよね」

「どう違うの?」

「離宮にいるのは、主人公に対して平均以上の好感度がある男性だけね。悪役令嬢や女子のクラスメイトはいないの」


主人公に対する好感度が低かったり、全くないような男性はいない。


「魔法の勉強もちゃんとあるわ。でも、ゲームとは違うのは確実だから、資料にあった時間割りを見て」

「わかったわ」

「夏休みも勉強するなんて……もっと楽なバージョンが良かったわ。しかも、エリザベートたちがいるのよ? 最悪だわ!」

「私たちにはどうにもできないわ。誘ったのはアルード様だもの」

「そうね。わざわざ面倒な相手を誘うなんて! でも、ダンスの練習とかもあったし、ペアを組むために人数を揃えたのかもしれないわね」

「そうかもしれないわ」


 細かい部分はゲームと違うものの、大まかには同じ。


 勉強するしかないということで、解散になった。


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