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26 成績発表



 私がホールに戻ると、全ての科目の順位表が張り出されていた。


 速報目当てに詰め掛けていた生徒数もかなり減っている。


 アヤナとレベッカは私を待っていてくれたのか、ホールに残っていた。


「順位を確認したの?」

「したわ」

「しました」

「どうだった?」

「総合を見てみなさいよ」

「お気を確かに」


 それは……嫌な感じがしてしまう。


 私は覚悟を決めて総合順位を張り出した成績表を確認した。


 一位はやはりベルサス様だった。


 あれだけ科目別で一位を取っていれば、総合で一位にならないわけがない。


「まあ、予想通りの範囲ね」


 上位は男子生徒が占めていた。


「やっぱり男女別の科目のところで差がついたわ」


 男女別の科目のテストでは、女子の平均点がかなり低くなりそうだという噂が出ていた。


「女子の最高順位は十八位です」

「おめでとう」


 十八位はルクレシア・コランダム。


 私だった。


「ありがとう。アヤナも、おめでとうと言うべきかしらね?」


 アヤナは二十位。女子での順位は二位。


「ギリギリだったわ。でも、特級クラスに残れそうでよかったわ」


 レベッカは二十九位だった。


「さすがルクレシア様です。おめでとうございます」

「レベッカも頑張ったわよ。女子で三位だもの。誇っていい成績だわ」

「ありがとうございます」

「それにしても、女子の総合順位がこれほど低いとはね」


 総合順位で二学期のクラスが編成された場合、特級クラスになれそうな女子は私、アヤナ、レベッカの三人しかいない。


「エリザベートは女子の四位だけど、総合順位が離れてしまっているわね」


 マルゴットは女子の五位。


 婚約者候補としてのメンツは保たれているけれど、総合順位は喜べない。


「普通に考えると、特級クラスではなくなります」


 何かと絡んでくるエリザベートが上級クラスになれば、特級クラスのほうは平穏になりそうな予感。


 でも、上級クラスでエリザベートやマルゴットが張り合うのは目に見えており、私のグループで上級クラスにいる人たちが困ってしまいそうな気がした。


「私とルクレシアは特級の一組、レベッカは二組になりそうね」

「男女別の授業の時は合同になります。ですが、それでも三人だけです」

「男子が困るわね。合同にすると、教室から溢れてしまうわ」


 確かに。


「どうなるのでしょうか?」

「男子と女子の順位に分けて、クラス編成をするかもね」

「それなら男女別の授業の時でも困ることはなさそうです」

「でも、男子が怒るわ。総合成績では特級クラスのはずだったのに、実際は上級クラスになってしまう者が続出するわけだから」

「不満に思わないわけがありません」

「学院の対応次第でしょうけれど、難しいわね」

「そうね。あと、ルクレシアが一位の科目があったわよ」

「どの科目?」

「魔法実技」


 私は魔法実技の順位表を確認しに行く。


「一位だわ!」

「そうよ。おめでとう」

「おめでとうございます」

「ありがとう!」


 魔法関係の科目で一位を取ることができた。


 嬉しい気持ちが体中から溢れ出した。


「やったわ! 一位を取れるなんて夢みたい!」

「らしくないわよ?」


 アヤナが言った。


「ルクレシア・コランダムはいつだって自信満々でしょうに」


 ゲームの中ではそうなのかもしれない。


 でも、それは私とは違うルクレシア。


「ベルサス様の順位を見たら、自信満々になんかなれないわ」

「それもそうね。でも、ベルサス様の全科目一位を阻止したことについては誇れるかも」

「私も阻止しました。一位を取りました」

「女子のみの科目じゃないの」


 ベルサス様とは関係ない科目ともいう。


「そろそろ教室に戻りましょう」


 私はアヤナとレベッカと共に教室に戻った。





「ルクレシア、惜しかったな」


 アルード様が声をかけてくれた。


「女子の一位だったが、総合成績は振るわなかったと聞いた」

「そうですね。ですが、魔法実技で一位になれたのは嬉しかったです」

「女子においてはアヤナが二位、レベッカが三位だ。ルクレシアのグループは優秀な女性が揃っている」

「ありがとうございます」

「光栄です」


 アヤナは私のグループに入っているわけではない。


 でも、アヤナが否定しなかったことが嬉しかった。


 否定しにくい相手だからかもしれないけれど。


「夏休みにルクレシアを離宮に誘ったのは知っているな? アヤナとレベッカも離宮に来い。招待する」

「光栄です!」


 レベッカは満面の笑みを浮かべた。


 でも、アヤナは違った。


「アルード様に申し上げます。大変光栄ですが、辞退させていただきます。ご存じかどうかは知りませんが、私の家は財務的な問題を抱えています。特待生でなければ魔法学院に入学することもできないほどの状態ですので、ご理解いただけないでしょうか?」

「ルクレシア、どう思う?」

「私がなんとかします」

 

 答えは決まっていた。


「アヤナは友人です。必要なものは私が揃え、参加できるようにします」

「そういうことだ。持つべきものは友人だな?」

「ですが、コランダム公爵夫妻がどのように思うかわかりません。迷惑をかけてしまうのは必至です」

「何を言っているの?」


 私はアヤナを睨みにつけた。


「これまで散々私の持って行った豪華なサンドイッチを食べていたでしょう? アルード様の前で遠慮したって、本性は知られているわよ? 観念してついてきなさい!」

「その通りです。プリンのことを知っていたのに、私に届けて喜ばせようとするルクレシア様を止めませんでした」

「あれは……確信があったわけではなかったので」


 ゲームアプリのおかげで知っているとは言えない。だからこその言い訳。


「旅は道連れ。スピネール男爵令嬢も一緒です」

「道連れなんて、なんだか怖いです。アクアーリ子爵令嬢」

「私が決めた以上、異議は認めない」


 王子命令でアヤナの参加が決定した。


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