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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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25 期末テスト



 期末テストの一週間が終わった。


 そして、期末テストの結果発表の時が来た。


 アルード様以外の全員の成績については、順位が張り出される。


 科目別と総合に分かれていて、誰が何点取ったのかがわかってしまう。


 特級クラスの者ほどプレッシャーを感じている者はいない。


 アルード様の婚約者候補であればなおのこと。


「勝負よ!」


 エリザベートは強気だった。


「負けた方は婚約者候補を辞退するのはどう?」


 勝手なことを言わないで欲しい。


「ハウゼン侯爵令嬢は自信があるようです。どうされますか?」


 レベッカが尋ねてくる。


「無視するに決まっているわ」

「わかりました」

「苛つくわ! 同じグループだからっていちゃいちゃしちゃって!」

「私はサブリーダー、ルクレシア様の腹心なので」


 レベッカは冷静そのもの。


「レベッカの成績のほうが良さそうよね。その場合、グループリーダーは交代かしらね?」

「ルクレシア様、ハウゼン侯爵令嬢がこのように言っていますが、どうされますか?」

「無視」

「無視ですね」

「苛つくわ!」

「どこかで誰かがうるさいわ。でも、今の内でしょうね。自分の点数見て言葉を失うかもしれないと思うと、楽しみで仕方がないわ」


 悪役主人公がいる。


「無礼だわ!」

「まさか、ハウゼン侯爵令嬢のことだと思われたのですか? 勘違いです」

「白々しい!」

「来ました!」

「来た!」

「来たぞ!」


 生徒たちが集まるホールに、先生たちが大きな張り紙を持って来るのが見えた。


「騒がないように!」

「興奮しないで!」

「冷静に!」

「あとで個別の成績表が配布されるからな!」

「それを見れば、自分の点数と順位がわかります!」


 それは全員が知っている。


 でも、速報が知りたくて集まっている生徒ばかり。


「ベルサス様、いよいよ発表です! 一位になれる自信がおありでしょうか?」


 インタビューをしている人がいるけれど。ベルサス様は完全に無視を決め込んでいた。


「カーライト様は何位ぐらいだと思われますか?」

「さあな。特級クラスの順位であればいい。わずかな点数差で勝ち負けを誇示するほど、小さな器ではない」

「さすがカーライト様!」

「しびれます!」

「素敵!」

「かっこいい!」


 わいわいがやがや。


 生徒が騒ぐ間も、先生たちが科目別の成績表を貼り始めた。


「ベルサス様だ!」

「一位だ!」


 真っ先に張り出された科目別の一位はベルサス様だった。


 ほとんどの生徒が予想した通りの結果でもある。


「またベルサス様だ!」

「さすがだ!」

「さすがすぎる!」


 ベルサス様が座学に強いことはわかっている。


 どこまで独壇場が続くかを当てるほうが難しいかもしれない。


「またまたまたベルサス様だ!」

「すごいー!」

「天才だ!」


 ベルサス様が科目別で一位になったことについては速報を出してくれるけれど、私が知りたいのは自分の順位。


 男女別ではないため、余計に上の順位が取りにくい。


「ああ、ついに!」

「ベルサス様じゃない!」

「アヤナ・スピネールだ!」


 ふふん、と自慢げな表情を浮かべるアヤナ。


 主人公なのに私よりも悪役令嬢らしい表情だった。


「強気な誰かさんは、一つでも一位が取れるのかしら?」


 アヤナがエリザベートを見た途端、エリザベートの表情が悪鬼のように変化した。


「またベルサス様だ!」


 この調子で行くと、総合の一位はベルサス様になりそう。


「おお!」

「新たな名前が!」

「レベッカ・アクアーリだ!」


 レベッカは驚きに目を見開いた。


「私が? ルクレシア様よりも上? 信じられません!」

「おめでとう。レベッカ」

「あらあら、リーダーは交代かしら?」


 エリザベートが絡んでくる。


 本当にこの性格はよろしくない。なんとかしてほしい。


 科目別の成績表がどんどん張られていくけれど、私がいる場所からはよく見えない。


 男子生徒が前にいるため、女子生徒は後ろの方に固まっている状態。


 速報で読み上げられる名前で判断するしかなかった。


「化粧室に行くわ」


 この場にいても意味がないような気がした。


「逃げるの?」

「時間がかかりそうだからよ。前の方が空いてから見に行くしかないわ」


 現状を冷静に見た上での判断。


「ホールの混雑の次は化粧室が混雑するに決まっているわ。先に行くのが利口よ」

「とかいって、自分の名前が呼ばれないからでしょう?」

「レベッカ、エリザベートよりも成績が上だったら、遠慮なくダメ出ししてあげて」

「わかりました。ルクレシア様の言う通り、遠慮なくダメ出しします」

「具体的に言うと、どんな感じ?」


 アヤナが尋ねた。


「頭が相当悪いようです、所詮はこの程度、ほざくだけしかできないのがあわれです、とか」

「それだけ言えるなら、準備は万端ね!」

「まだわからないのに、すでに言っているじゃないの!」


 レベッカとアヤナが連携プレーでエリザベートを引きつけてくれている間に、私は人壁をなんとか割りに割って進み、化粧室へ行った。


「あら?」


 化粧室にはマルゴットがいた。


「おはよう」

「先に化粧室を利用しておくなんて、利口ね」


 褒められても嬉しくはない。


 嫌みで言っているのはわかっているので。


「夏休み、離宮に行くのよね?」


 アルード様が夏休みに私を離宮へ招待すると言ったのはピクニックランチの時。


 そのせいで周辺にいた耳ざとい者からどんどん伝わり、学院中どころか、社交界にも広がっていると母親から聞いた。


 父親もあちこちからその件について問い合わせがあり、他の候補者に差をつけたという評価になっているらしい。


「それが何か?」

「期末テストの結果次第ではどうなるかしらね? 補習を受ける可能性だってゼロではないはずよ」


 さすがに赤点はないと思いたい。


 アルード様にも両親にも怒られてしまうに決まっている。


「二人きりで話せる機会なんてそうそうないわ。だから聞くけれど、随分変わってしまったわ。どうしてなの? アルード様の婚約者になるのは自分だと言い張っていたのに」


 ルクレシアはアルード様の婚約者になりたがっていたのね……。


 でも、今のルクレシアは私。


 中身が変わったことを話せるわけがない。


 マルゴットが私に探りを入れているのは明らか。


 このまま話していると、過去の話が出てくる可能性が高い。そのせいで墓穴を掘ってしまいそうな気がした。


「こんなところに長居するつもり? 自分の成績を確認して、特級クラスに上がれるかどうかを確認したほうがいいわ。失礼」


 私はドアを開ける。


「待ちなさい!」

「ブロンジュ子爵令嬢、私はコランダム公爵令嬢なのよ? その口の利き方はマナー違反だわ! 礼儀作法の勉強をやり直すべきね!」


 思いっきりマルゴットを睨みつけた。


 悪役令嬢としてではなく、誇り高き公爵令嬢として。


 マルゴットは驚いて硬直。


 他の生徒が来ると、ハッとしたマルゴットが急いで出ていく。


 私は心の中でほっとした。


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