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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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22 勉強会



 アヤナの考えた作戦は成功した。


 アルード様は新作プリンに興味を示し、お忍びで勉強会に来てくれることになった。


 その影響でベルサス様、カーライト様、イアンとレアンも来てくれることになった。


 アルード様の友人である男性陣はアルード様で釣れることがわかったともいう。


 各キャラの好みそうなお菓子を用意しておけば、勉強会は成功のはずだった。


 ところが、思わぬ人物も一緒だった。


「また会えましたね」


 あの魔導士がアルード様に同行していた。


「第二王子が勉強会に参加するのは喜ばしいことです。とはいえ、一人で行かせるわけにはいきません。そこで私が同行しました」


 優しい口調は確かにあの魔導士。


 でも、アルード様を第二王子と言ったことがなんとなく気になった。


「勉強会の部屋はどこ?」


 アヤナに言われてハッとした。


「案内いたします」


 アルード様は王族なので、部屋までの先導役は私。


 クラスメイトが来るとだけ伝えているけれど、私が自ら案内するだけで高貴な要人が来ていることは明らかだった。


「お前たちも来ているとは思わなかった」


 移動中、後ろからアルード様の声が聞こえた。


「私はルクレシア様の親友です。腹心として、ルクレシア様のグループでサブリーダーをしているほどですので、勉強会に呼ばれても不思議ではありません」


 レベッカの答えは盛っている感があるけれど、訂正するようなことはしない。


 むしろ、私のことを親友だと思ってくれていることがわかって嬉しかった。


「スピネール男爵令嬢もいるのですね」


 今度はベルサス様。


「私は大親友です。状況次第でルクレシアと呼ぶ許可もいただいています」


 アヤナも盛っている。


 期末テスト前なので、攻略対象者にできるだけ良い印象を与えたいに違いない。


「こちらで勉強会をします」


 基本的には各自で持ち込んだ教科書やノート、参考書や資料を使い、期末テストに向けた自主勉強をする。


 わからないことがある場合は、誰かに聞いてもいい。


 クラスメイトと集まって勉強することで向上心を高め、学生らしい経験と思い出を作る趣旨であることを説明した。


「どのような勉強会なのかは理解しました。わからないことがあるなら、魔導士である私が教えてあげましょう」


 アルード様に同行した魔導士が教師役を申し出た。


「ぜひお願いいたします!」


 満面の笑みを浮かべて喜んだのは、レベッカだけだった。





 レベッカはここぞとばかりに魔導士に質問した。


 魔導士は優しく丁寧な口調で教えてくれていたが、だんだんと様子が変わっていった。


「特級クラスのはずでは?」

「この程度の問題がわからないのですか?」

「もう少し自分で考えてみなさい」


 呆れられているというか、突き放されているというか。


 でも、レベッカは気づいていないというか、めげずに質問をしていた。


 そのせいで魔導士から不穏な空気があふれ出した。


「私に質問するのはアリアーヌ子爵令嬢だけです。なぜかわかりますか?」

「他の方は優秀だからでは?」

「そうです。勉強ができるというだけではありません。相手に対する礼儀と限度をわきまえています。これが最後の教えです。黙って勉強しなさい!」


 ついに魔導士を怒らせてしまった。


「申し訳ありません」


 肩を落とすレベッカが可哀そうだった。


 王子に同行するほど優秀な魔導士に教えてもらえるのは大幸運。


 優しい口調で親切そうな雰囲気を漂わせていただけに、聞きやすくもあった。


 レベッカの質問内容から察するに、勉強がわからないというよりも、魔導士と話してみたかったのだと思う。


 前にあれこれ話してしまったので私は遠慮したけれど、普通はレベッカのような人がいそうでもある。


 でも、アヤナと男子陣は黙って勉強していたため、普通の反応をしたレベッカが悪目立ちしてしまった気がした。


「そろそろ休憩にするのはいかがでしょうか?」


 勉強会を主催したのは私。


 雰囲気が悪くなったのであれば、改善するように務めなくてはならない。


「今日は特別なお菓子を用意しました。全て私とアヤナで一緒に考えたものです」


 私はアルードに顔を向けた。


「私とアヤナは身分差があります。だからこそ、友人になることで互いに学び合えることが見つかるだろうとアルード様が言いました。今日のお菓子はまさにそれです。私とアヤナが力を合わせた結果が出ていると思います。ぜひとも、試食していただけないでしょうか?」

「新作のプリンがあるはずだ。試してみたい」


 アルード様がそう言うと、次々と特別な菓子を食べてみたいという声が上がった。


「第二王子の言葉がどれほど効いたのか興味があります。確認しましょう」


 怒りのオーラが漂っていた魔導士の雰囲気も和らいた。


 私はお茶の用意を急いでするように伝え、気分を変えるためにも特別な応接間のほうへ運ぶよう指示した。


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