19 プリン
楽しいランチタイムはあっという間に過ぎ去り、いよいよ私の出番になった。
「ピクニックランチはここまでだ! 点火する!」
アルード様が叫んだ。
私はカーライト様のサポートで頂上へ行くと、豆の木に火魔法を放った。
皆で力を合わせて作った豆の木が燃えていく。
ウネウネしているけれど、これはフィナーレを飾るダンス。
火炎地獄に悶える豆の木ではないと思いたい。
「消火!」
水班が一気に放水作業に入る。
昼間のキャンプファイアーはこれで終了といった感があった。
燃え残った部分の処理、畑の処理、芝生の状態に戻す処理は全部アルード様が連れて来た魔導士の方々がしてくれる。
ディアマス王国が誇る魔導士にそんなことさせてしまって申し訳なく思うけれど、午後の授業もあるので仕方がない。
「非常に良かった」
アルード様はご機嫌。
誰もが見惚れそうな笑顔を浮かべていた。
「秘策は大成功だ。ルクレシア、見事だった」
「アルード様のおかげです」
私はアルード様の眩しすぎるお顔を直視しないようわずかに視線をはずした。
「グループの方々、魔導士の方々、学校関係者の方々にも心から感謝しなくてはなりません。皆様の力なくして、このようなピクニックランチを開催することはできませんでした」
「その通りだ。だが、このような案を思いついた功績は大きい。非常に有意義なランチタイムだった」
「良かったです」
「プリンも美味しかった。カラメルがないことにルクレシアの配慮を感じた」
「恐れ入ります」
「さすが私の婚約者候補だ」
素直に喜んでいいのかどうかは悩むところ。
でも、アルード様が喜んでくれたのはシンプルに嬉しいし、両親もきっとピクニックランチが成功したかどうかを気にしているに決まっている。
大成功だと伝え、プリンも高評価と聞けば、とても喜んでくれるはず。
私の周囲に笑顔と喜びがあふれるのであれば、それは間違いなく私が喜んでいいことだった。
「だが、助言がある」
「なんでしょうか?」
「レベッカにプリンを与えるな」
私は瞬時に固まった。
「でも、好物だと日曜日に言っていたので……」
「私に合わせただけだ。本当は違う。知らなかったのか?」
「申し訳ありません」
私は肩を落とした。
「プリンをあげたあと、アヤナが教えてくれました。あとでレベッカに謝ります」
「必要ない。レベッカが嘘をついたからだ。自業自得だろう」
それもそうですね。
「次のプリンは私とルクレシアで食べればいい」
「そうですね。気を付けます」
「次回が楽しみだ。来週の同じ曜日だな?」
三回目もしてほしいということ?
「それはまだ決まっていません」
「もう決めた。次は私が主催する。招待するため、グループ全員で参加するといい」
「ありがとうございます」
どうやら相当お気に召したらしい。
「ただし、貢ぎ物が必要だ。何かわかるな?」
「プリンです。カラメルなしの」
「二つだけでいい。次のプリンは私とルクレシアで食べる約束だ。他の者の分は必要ない。希少度が下がる」
「わかりました」
「忘れないように」
「はい。必ず持って行きます」
午後の授業が終了。
アルード様が参加するピクニックランチのために、特級クラスの午後の授業を自習時間にしてしまう魔法学院の配慮はさすがだと思う。
アルード様の影響力がすごすぎるということでもあるけれど。
来週もまた午後の授業が自習なのかはわからない。
でも、魔法の授業がなくなってしまったのは残念というのが本音だった。
そんな私に声をかけたのはエリザベート。
「午後が自習だなんて……ルクレシアにとっては残念よね? 大好きな魔法の授業がなくなってしまうし、手本を見せて誇れないもの」
嫌味が地味に効く。
「ルクレシアは巨大な豆の木を綺麗に燃やした。他の者たちも得意な魔法をピクニックランチで使った」
アルード様が私を庇うように口を挟んできた。
「斬新な発想があれば、さまざまなことに魔法を活用できることを学ぶ機会になっただろう。これを魔法の授業とするのはおかしくない。だが、エリザベートにとっては実りのない時間になったようだ。より励め」
「はい」
エリザベートは頭を下げるが、内心では怒りの雷が私に向けて放たれているに違いない。
「ああ、そうだ」
アルード様は何かを思いついたらしい。
「ルクレシア」
「何か?」
「生クリームをつけろ。そのほうが美味しい」
プリンですね。
「わかりました」
プリンの効果は絶大。
夕食の話題として、両親に話すことにした。




