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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第六章

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178 アヤナ先生



 アヤナがノーザンから帰って来た。


 通学とはいってもノーザンに一週間程度は滞在できるので、留学中の一時帰省を頻繁にするような感じだった。


「お土産はないわよ。いちいち買っていたらお金がなくなってしまうわ」


 そういって私の部屋にふんぞりかえるアヤナはやっぱりアヤナらしい。


「向こうはどうなの?」

「平和よ。ノーザンは冬が一番危ない季節だから」


 ノーザンは氷魔法の使い手が多い。


 氷魔法だけで、しかも離れた場所から氷竜を倒せるというのは驚きの方法、大発見だった。


 実際にそれが可能であることをオルフェ様がやって見せると、大勢の人々が氷竜を倒せるようになりたいと思うようになった。


 人間が全くいない永久凍土の極寒地まで氷竜を追い返せるかもしれないという希望がノーザン中に広まっているらしい。


「ノーザンに行くことで、オルフェ様の実力を改めて思い知ったわ。頭ではわかるけれど、真似するのはかなり難しいようね。そう思うと、ベルサス様がいかにすごいかわかるわ。かなりの真似ができていたでしょう?」

「そうね」

「本当は口を凍らせるだけで大変みたい」


 普通は一カ所を十人で担当し、できるだけ早く凍らせる。


 誰かが失敗しても他の者が成功すれば、それを足掛かりにどんどん凍らせることができるし、修復するのも楽になる。


 でも、オルフェ様は全部の場所を一人で素早く凍らせることができる。


 ベルサス様も補助があればできるので、二人で一体を担当できると考えると確かにすごい。


「暖かい季節になると氷竜の防御力が落ちるから、討伐シーズンになるのよ。でも、氷魔法の威力が落ちる季節でもあるから、必ず負傷者が出るって。光魔法の修練として、私も討伐に参加してほしいって言われたわ」


 アヤナも氷竜の討伐に参加したい。


 でも、討伐軍に同行すると、途中で一人だけ抜けることができない。


 討伐軍に参加している間は帰国しなくてもいい許可をもらいたいことがわかった。


「光魔法は使えるようになった?」

「まだよ」

「簡単なのに!」


 アヤナにとってはそうだけど、私にとっては違う。


「実は魔法陣にも挑戦しているの」


 光魔法を使うよりも光の魔法陣のほうができそうな気がすることを話した。


「あー、ルクレシアは魔法陣が得意だからそうかも!」

「でも、まだできないの。アルード様でも発動できないのよ」

「私も見てあげるわ」

「お願い」


 普通紙と魔法紙に描いたものを見せた。


「全然ダメね」

「やっぱりダメなのね」

「これは魔法陣じゃなくて魔法陣の絵ね。真似して描いただけ。魔力を込めても魔法は発動しないわ」

「アルード様にも絵だって言われたわ。だけど、どうしてなのかわからないの。正直、アヤナの魔法陣よりも見た目は綺麗よね?」

「見た目はね。でも、見た目だけで魔法が使えるわけじゃないから」

「そうね」

「たぶんだけど、ルクレシアが光魔法を使えないからね」

「それはわかるというか……でも、光魔法を使えなくても魔法陣は別よね?」

「そうね。魔法は使えなくても魔法陣を描いて魔法を使える人はいるわ。でも、これは魔法陣の絵だからダメね」

「灯りの魔法は一番簡単な魔法よね?」

「そうよ。前に言ったけれど、子どもでもすぐにできちゃうぐらい簡単よ」

「どうしてダメなのかが全くわからないわ。移動魔法と同じようにね」

「才能がないってことね。それが普通でしょう?」


 私はため息をついた。


「描くところを見せてくれる?」

「わかったわ」


 私は普通紙を用意すると魔法陣を描いた。


「めちゃくちゃムカつくわ!」

「どうして?」

「すごく簡単に描いちゃうからよ!」

「ダメなの?」

「私はちょっとずつしか描けないのに……」


 沈黙。


「でも、そのおかげでわかったわ。ルクレシアは何も考えていないわね?」

「というと?」

「光魔法を発動させることをイメージして描いていないってこと」

「あ……」


 綺麗に魔力が流れるようにスムーズに描くことばかりを考えていた。


 つまり、魔法ではなく魔力を意識していた。


「魔法を発動させるにはイメージが大事だって教わったわよね? 魔法陣も魔法だから同じ。この魔法陣が何の魔法なのか、どんな効果なのか、発動するのか、そういったことを魔法の時と同じように考えて描かないとダメよ?」

「そうよね……魔力のことばかり考えていたわ」

「魔法紙を頂戴」


 アヤナは魔法陣を描いた。


 相変わらずクセ字というか独特な魔法陣だった。


「これが灯りの魔法陣」

「わかるわ」

「見た目は私のほうが変だけど、使えるわ」


 魔法紙に魔力が込められ、魔法が発動する。


「成功したわ。魔法をちゃんとイメージして描いたものだから魔法になったのよ」

「そうね」

「今度は今の魔法をイメージしながら描いてみて」

「わかったわ」


 私は魔法紙に向き合う。


 そして、アヤナが使った灯りの魔法をイメージした。


 これは光魔法。周囲を明るく照らしてくれる魔法よ!


 何度も描いたのでわかってはいるけれど、イメージをしっかりと伝えるためにじっくり描いた。


 そのせいで見た目が少し歪んでしまった。


「バランスが悪くなってしまったわ」

「そうね。でも、さっきよりは感じるわよ。微妙にね」


 アヤナが魔法紙を手にして魔力を込めた。


「あっ!」


 一瞬、魔法陣の一部分がかすかに光ったような気がした。


「魔法なら詠唱買開始早々失敗って感じ。でも、魔力が魔法になろうとした感じはあったから、これでオッケーよ! このまま頑張っていけば発動できるようになりそうだわ!」


 灯りの魔法は失敗したけれど、希望の光は灯った。


「綺麗に描かなくても魔法は使えるわ。私の魔法陣がその証拠よ。綺麗に描くよりも灯りの魔法をイメージして描きなさい。もしかすると、アルード様なら発動できていたかも?」


 ものすごくやる気が出た。


「練習するわ!」


 もう一度魔法紙に魔法陣をじっくり描くことにした。


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