表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/178

177 学習室の本



 王宮から帰った私は学習室に直行した。


「開いた!」


 さすがアルード様! さすが私!


 無属性とはいえ難易度が高い魔法をすぐに使えてしまったのは、きっと悪役令嬢のポテンシャルが高いおかげ。


「ということは、私は鍵をかける魔法を使えるわけね」


 魔法の鍵をかける魔法を習得したい。


 本物のルクレシアはすでに習得はしているけれど、私は呪文さえ知らない。


 呪文が書かれている本をあとで探そうと思った。


「なんて素敵なものが!」


 魔法の鍵の本があった。


 これを読めば覚えられそうな気がした。


「他には……」


 大人の私から見ても難しそうな本がたくさんある。


 ルクレシアが勉強家だったのか、圧の強い両親が揃えたのか。


 小学校や中学校の教科書もあった。


 でも、ノートがない。処分してしまったのかもしれない。


 取りあえず、強制解除の魔法を使って本棚の扉を開けまくった。


「そもそもこんなものしかないのに魔法の鍵をかける必要があるの?」


 貴重な本ということであればわからなくもない。


 でも、学校の教科書をしまっている本棚に魔法の鍵をかける必要はない。


「本当に読んでいたのか怪しい感じの本もあるし」


 魔法学院を卒業している私から見ても難しい本がある。


 しかも、分厚い。


「辞典なんてあっても使わないわよね。お金持ちだからこういうのも揃えてあるってだけ……ん?」


 気づいてしまった。


「これ、違うわ」


 辞典があるように見せかける偽物だった。


 なぜなら、本と本の間にあるはずのへこみがない。真っすぐ一列に並んでいた。


 案の定、張りぼてだった。


「後ろは空っぽ……じゃないわね?」


 大きな箱があった。


 浮遊魔法でテーブルまで運び、内側を見ると手紙の束が入っていた。


「手紙を集めて入れていた箱みたいね」


 封筒には何も書かれていない。


 束ねているリボンを解き、封筒の中から便箋を取り出した。


 ――体調はどうだろうか? とても心配している。 見舞いに行きたいが、許可が出ない。


 身分を考慮して代筆。でも、書く内容は自分が本当に考えた言葉だと書いてある。


 内容はお見舞いの手紙だった。


 たぶん、ルクレシアが事故にあった時にもらったもの。


 ――ルクレシアが元気になれば、王宮で会える。


 誰からの手紙かわかった。


「アルード様からだわ!」


 日付も宛先もないのでおかしいと思っていたけれど、王家の伝令が直接持ってきて渡したものであればおかしくない。


 ――必ず元のようになる。今はゆっくり心を落ち着けることが大切だ。

 ――人間の体の多くは水分だ。私たちは水の塊だということになる。人間に会っても怖くないだろう? 水も怖くない。

 ――水は冷たい。そのせいで怖いかもしれない。お湯ならどうだろうか? ルクレシアは火の系譜だ。火魔法が好きだろう? 火魔法で水をお湯にすることができる。つまり、お湯は火属性だ。ルクレシアを優しく温めてくれる。優しい温かいものなら怖くない」


 一生懸命励まそうとする気持ちが伝わって来た。


 こんな手紙をたくさんもらったルクレシアは勇気づけられたに決まっている。


 少しずつでも頑張ろうと思った。


 そして、普通の生活を送れるようになった。


 アルード様はずっと子どもの頃から支えてくれていた。ルクレシアを心から愛していたのだと感じた。


 嬉しい……でも、寂しくもあるわ。


 なぜなら、この頃のルクレシアは私ではなかった。本当のルクレシアだった。


 それはつまり、アルード様が愛しているのは本当のルクレシアのほう。


 私じゃない……。


 その考えを否定するように頭を振った。


 今のルクレシアは私でしょう? 考えても仕方がないことだわ!


 私は手紙を束ねて元通りにした。


「こんなところに隠しているなんて……秘密の宝物みたいね」


 どうしてここにしまったのかはわらないけれど、ルクレシアは秘密にしたかったのかもしれない。


 いつでもすぐに読めるように取り出せる場所ではなかったから。


「魔法の鍵を使えるわけだし、アルード様の手紙を隠しているし、ルクレシアは子どもの頃から……お利口さんって感じだったのかしらね」


 それで何でもできてしまうのだろうと思えばおかしくない。


「魔法陣関係のものを探すつもりだったのに、寄り道してしまったわ」


 魔法の鍵の本のように役立ちそうなものがあるかもしれないと思い、とりあえずはざっと見てみることにした。


「こっちは魔法陣の本ばかりね?」


 タイトルを見ると難しそうに感じる。


 魔法陣コンクールの本もあったので手に取ると、紙が挟まっていた。


「練習したもの?」


 さっきから本や本への書き込みはあるけれど、ルクレシアが自分で書いたノートなどが一切なかった。


 なので、子どものルクレシアが手書きした紙かもしれないと思うだけでドキドキした。


「魔法陣ね。普通の紙だわ」


 難しくはない。魔法陣の外郭である円以外には火属性の文様だけでほぼ空白。


 コンクール用の基本となる魔法陣かもしれない。


 でも、その魔法陣から感じるのは才能。


 普通紙なので魔法陣を描いても魔法にならない。火属性の文様だけならなおさら。


 なのに、魔法を使えてしまいそうな気がしてしまう魔法陣。


「ルクレシアは魔法陣の天才だったりして」


 天才だったら光魔法の魔法陣を描けるはずなのにと自虐的に思った私は固まった。


「これは……何?」


 紙が挟まっていたページに書き込みがびっしりとあった。


「こんなにも……謎過ぎるわ」


 だけど、私は知りたい。


 本当のルクレシアのことを。


 ルクレシアとして生きていくには、本当のルクレシアについて知る必要がある。


 そんな気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ