176 恋をしている
朝になると急いで王宮に行き、アルード様に面会した。
困ったことがあると、光属性の授業でアルード様に聞けばいいと言っていたアヤナを思い出す。
私も五十歩百歩ね。
「おはようございます!」
「おはよう」
アルード様はシャツ姿。
起きたばかりという感じがどことなくした。
「すみません。大学に行く前に会いたくて」
「私も会いたかった。ルクレシアとは毎朝会いたい」
アルード様がキスをしてくれた。
嬉しくて恥ずかしくて甘い感じ。
「用件があるのだろう?」
ハッとした。
「そうです。実は光の魔法陣を描いたので発動できるか見ていただこうと思って」
私は魔法紙を渡した。
「これです」
「綺麗ではあるが無理だな。魔法を感じない」
「魔法を感じない?」
「教本に乗っている魔法陣を見て、魔力を流せば発動できると思うか?」
「思いません」
「それと同じだ。これは魔法陣であって魔法陣ではない。魔法陣の絵だ。そっくりだが、絵で魔法を使えるわけがないだろう? 魔法にならない」
「なるほど」
「一応、試す」
アルード様は魔法紙に魔力を流そうとしたみたいだけど、魔法陣は全く反応しない。
魔力に反応する輝きが発生しない。
「やはりダメだ。絵だ」
「そうですか」
しゅんとした私をアルード様は慰めるように抱きしめた。
「早く見せたかったのだろう? 自分では発動できないが、私ならできるかもしれないと考えたのか?」
「そうです」
「嬉しい。ルクレシアが光の魔法陣を早く描けるようになりたい証拠だ。それだけ私と結婚したがっていると思っていいのだろうか?」
「そうです。アルード様との結婚を認めてもらえるように頑張っています」
課題を出されたのはアルード様だけど、実際に課題をクリアできるかどうかは私にかかっている。
アルード様が必死に教えても、私が光魔法を使えなければダメということになってしまう。
「朝から幸せだ。ルクレシアのおかげで愛を感じられる」
アルード様はもう一度私にキスをした。
「早く結婚したい」
「そうですね」
「課題をクリアできるようにルクレシアを支える」
「ありがとうございます」
「絵ではあるが、綺麗に描けている。いずれ本物の魔法陣を描くことができるだろう」
「頑張ります。それとですね、まだありまして」
「魔法陣か?」
「魔法について教えていただきたいのです」
「どの魔法だ?」
「扉を開ける魔法です」
学習室にある扉付きの本棚が開かない。
鍵穴がないのに鍵がかかっているような感じがして開かないことを話した。
「ずっと使っていなかったので、どうやって開ければいいのかわからなくて……」
「魔法の鍵のことか? 鍵を忘れてしまったのだな?」
「そうです!」
よくわからないけれど、そういうことにしておく。
「強制解除の魔法を知りたいわけか」
「はい!」
「無属性だが難易度が高い。まあ、学習室の本棚だからな……ルクレシアが鍵をかけたのであればできるかもしれない」
強制解除の魔法を教えてもらった。
「ありがとうございます! これできっと開けられます!」
「良かった。だが、私が一緒に行って開けてもいいが?」
そのほうが確実。
でも、見られたらまずいものが出て来るかもしれない。
「開けられなかったらまた王宮に来ます。アルード様に面会する理由になります」
「そうだな。開けられなかったら王宮に来てほしい。どんな理由でもルクレシアと会いたい」
アルード様にキスされる。
「愛している」
アルード様は恋をしている。
間違いなく私に。
そして、私もアルード様に恋をしている。
用件は終わったのになかなか帰ることができないのがその証拠だった。




