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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第六章

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175 光魔法の課題



 大噴水の改修工事には多くの貴族が招待されていたため、私とアルード様がどう思っているか、ヴァリウス様がどう思っているのかがあっという間に広まった。


 国王陛下が光魔法を特別視しているのは誰もが知っている。


 私はアルード様の婚約者候補からはずれてしまったけれど、光魔法が使えるなら再考される可能性があるというヴァリウス様の言葉に納得する人々が多かった。





「とりあえず、練習しよう。ルクレシアには愛がある。大丈夫だ」


 光の魔法は愛の魔法と言われている。


 それはわかってはいるけれど、私は光魔法を使えない。


 アルード様のことが好きという気持ちだけで光魔法が使えるわけではない。


「前にも話しただろう? 湖で溺れた時のことだ。魔法で発光しただろう?」

「複合魔法かもしれないというあれですね」

「そうだ。あれを使うことができれば、光魔法だと言える」

「でも、また溺れるわけにはいきません」

「手に水をつけて光らせる。新しい光魔法だとなるだろう」

「むしろ、新しい光魔法だと言う気ですね?」


 アルード様は微笑んだ。


「普通の光魔法を使ってもいい。雷魔法を必死で練習したように光魔法を必死に練習すればできる。ルクレシアは魔法が大好きだろう?」

「そうなのですが……本音を言っても?」

「構わない」

「光魔法はなんとなく無理だと思うのです。私の感覚は鋭いのでそういうのは当たる気がします」

「雷魔法の時には思わなかったのか?」

「そうです。何とかするしかないと思って」

「光魔法も同じだ。なんとかするしかない」


 そうだけど。


「実は抜け道を用意してある」


 アルード様は護符を取り出した。


「使えるか試してほしい」


 私が魔力を込めると魔法が発動した。


 回復魔法だった。


「ルクレシアは光魔法を使えた」


 狡い方法。


「国王陛下が激怒します」

「わかっている。真面目に光魔法を練習してほしい。だが、いろいろと抜け道があることは教えたい。ハイランドに駆け落ちして結婚することもその一つだが、大騒ぎになる。そこで兄上がうまく収めるための課題を出してくれた。このまま認めろというのではなく、父上のこだわりに合わせるので認めろという方法だ。貴族たちも納得しやすくなる」

「そうですね」

「ルクレシアが自分で光魔法の護符を作ってもいい。魔法陣は得意だろう? 発動できる光の魔法陣を描けるのであれば、光魔法を使えるのと同じだ」

「そうですね!」


 そのほうが良さそうな気がした。


「光魔法の魔法陣を描くための本と灯りの魔法の手本を用意した。光の魔法陣を描く練習もしてみてほしい」

「はい!」

「私は大学に通うとはいっても毎日ではない。いつでも王宮に来ていい。わからないところは教える」

「わかりました。とりあえず、魔法陣の練習をしてみます!」


 光の魔法陣を描いて発動させることができればあっさり解決。


 やる気が出た。





 屋敷に戻ると、普通紙に魔法陣を描く練習をした。


「悪くないわね」


 いきなり一筆書きで描くのは難しいので、少しずつ描いて練習。


 最終的にはスムーズに描けるようにしたい。


 魔法を使う時に呪文がスムーズに言えないと発動しにくいように、魔法陣を発動させる時もスムーズに魔法文字や文様を描くほうがいい。


 どうすれば魔法陣が発動するのかという根本についてはどの属性も同じ。


 あとは光の魔法陣を描く能力があるか、それを発動させる能力があるか。


 コランダム公爵家は光の系譜から火の系譜になってしまっていて、私も火魔法しか使えないように思える。


 でも、実際は風魔法や雷魔法も使えたし、あくまでも魔法についての話。


 魔法陣は別よ!


 そう思うことができた。


「なかなかいい感じだわ」


 悪くないと思ったので、魔法紙に描いてみる。


 アヤナの描いた魔法陣よりも綺麗という自信がある。


「光って!」


 灯りの魔法が発動すれば課題はクリア。でも、発動しなかった。


「さすがにそこまで簡単ではないってことね。悪役令嬢でも」


 黙々と練習。


「今度こそ」


 魔法紙に描いた魔法陣に魔力を込める。


 でも、発動しない。


「綺麗に描くだけではダメってことはわかっているのだけど」


 魔法陣は魔法と同じ。魔力がないと使えないし、魔力がある人が描かなくてはいけない。


 だから、本にある魔法陣を触って魔力を込めても魔法は発動しない。


 それはただの印刷物。絵や図であって魔法陣ではない。


 そもそも本の紙は魔法紙でもない。


「水の中で特別な魔法を使えたことは事実だわ。発光したから光魔法が使える可能性があるというのはわかるのよ。でも、あんな状況になったら困るし、やっぱり魔法陣よね」


 私は魔法陣を見つめた。


「アヤナがいればいいのに」


 アヤナであればこの魔法陣を発動できるかもしれない。


 自分が描いたものは自分が一番発動させやすいと言われているけれど、技能次第。


 私が描いたものを自分で発動できなくても、発動させる技能が高い者であれば発動できる可能性がある。


「アルード様のほうがいいわね。アヤナより発動させる能力が高いだろうし」


 私は休憩しようと思って背伸びをした。


「そういえば、魔法陣の本があったはず」


 居間には戸棚があり、お気に入りの本やいつでも見返せるようにしたい本がある。


 礼儀作法の本もそこにあったので、ルクレシアになったばかりの頃に役立った。


 魔法陣の本もあったけれど、学校の教本があったので気にしていなかった。


「これこれ」


 ネイサンの情報によるとルクレシアは魔法陣コンクールで入賞したらしいので、その時に使っていた本かもしれない。


 パラパラと見てみると、書き込みがたくさんある。


 ゲームではわがままな令嬢らしいけれど、この書き込みを見るとちゃんと勉強していたのだと感じた。


 字も綺麗なのよね……。


 文字を綺麗に書くことについては昔から主人公のアヤナに勝っていると思いながら、魔法陣の本を読んでみる。


 魔法学院に入らなくても基本はこれでわかるといった感じの本だった。


「魔法も楽しいけれど、魔法陣も面白いわ!」


 子どものルクレシアも同じように思ったのかもしれない。


 それで魔法陣に興味を持ち、魔法陣コンクールに参加した。


「これも魔法陣の本だわ。ルクレシアは魔法陣が好きだったのかもしれないわね」


 手に取ったのはさまざまな魔法陣が描かれた手本集。


 初心者用や初級の魔法陣が乗っているので、これを描けるように勉強すれば、子どもでも魔法が使えるかもしれない。


 火属性ではなく、全部の属性の魔法陣が少しずつ載っていた。


 光属性の魔法陣には書き込みがあった。


「もしかして、光属性の魔法陣を描けるように練習していたの?」


 王家は光の系譜。光魔法の使い手であれば、アルード様の婚約者候補として有利。


 それでルクレシアは光属性の魔法陣を練習していたのかもしれない。


 もしかしたら、光魔法も練習していたとか?


 そのおかげで水の中で不思議な魔法を使えた可能性があると思った。


「何か他にも……」


 私は本当のルクレシア・コランダムについて知りたくなった。


 礼儀作法の本は注意する部分を強調するような線があるだけだった。


 でも、魔法陣の本はどれもかなりの書き込みがある。


 ルクレシアの努力が垣間見えた。


「でも、ここには光魔法の本がないわね」


 私は侍女を呼んだ。


「何か御用でしょうか?」

「子どもの頃に使っていた教科書をみたいの。どこにあるかしら?」


 侍女は怪訝な表情になった。


「学習室にあると思いますが?」

「ああ、そうよね!」


 私はうっかりしていたようにふるまった。


「ここの戸棚を見ていたから……変なことを聞いてしまったわ。忘れてくれる? 恥ずかしいから」

「わかりました。ですが、学習室の鍵は見つかったのでしょうか?」

「え……」


 またしても問題が発生した。


「ないわ」

「マスターキーを取って来たほうがいいでしょうか?」

「そうして。ここを片付けているから」

「かしこまりました」


 侍女が出ていく間に戸棚の本を綺麗に整える。


 魔法陣の本だけはテーブルのほうに移動した。


「お嬢様、持ってきました」

「学習室に行きましょう」


 どこかわからなかったけれど、侍女が先に歩いてくれるので問題ない。


 すぐ近くの部屋だった。


 侍女がマスターキーで鍵を開けてくれる。


「こちらは掃除用に使うので絶対に返していただかないと困ります」

「わかっているわ。なくす前に返すわよ」

「よろしくお願いいたします。では」


 私は学習室に入った。


 暗いので灯りをつける。


 壁際は全部本棚で、埃を防ぐガラス扉がついていた。


 中央に円形のテーブルがあり、椅子が二脚。


 家庭教師と一緒に勉強していた部屋かもしれない。


「開かない?」


 本棚の扉は引っ張っても開かなかった。


 鍵がかかっているような感じだけど、見たところ鍵穴はない。


 普通に開ければ良さそうなのに、開かないとは思ってもみなかった。


「どうすればいいのよ……」


 私は頭を抱えた。


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