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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第六章

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173 愛の魔法



 一週間後。


 アルード様の婚約者候補からマルゴットがはずされることになった。


 元々マルゴットは王太子の婚約者候補からはずれた姉の代わりとしてアルード様の婚約者候補になった。


 本人はそのことを喜び、アルード様と気持ちを通わせようと努力していた。


 でも、アルード様は見向きもしない。


 それなら長女のイザベル様を王家に仕える魔導士として尽くさせ、マルゴットには同じ土属性の相手と結婚させ、婿養子として迎えたい。


 王子と娘が政略結婚をしなくてもブランジュは王家の忠臣であり続ける。誓約するため、マルゴットが他の相手と結婚するのを許可してほしいとブランジュ伯爵が願い出た。


 国王陛下は渋い顔をしたけれど、マルゴットは光属性の魔法使いではない。ブランジュが誓約するのであればいいとして、マルゴットを婚約者候補からはずした。


 そして、マルゴットはチームを組んだことがきっかけで親しくなった男性と婚約した。


 エリザベートもハイランドに短期間だけ留学することが決まった。


 エリザベートは魔法大学に入りたかったけれど、国王陛下の意向で進学できなかった。


 アルード様の婚約者候補としての見識を広げる勉強をするため、短期間だけハイランドに行かせたいとハウゼン侯爵家が願い出ると、旅行と同じということで許可が出た。


 コランダム公爵家も、アヤナの能力向上のためにノーザンに短期留学の許可を願い出た。


 氷竜討伐を担当しているオルフェ様がぜひノーザンに来てほしい、ノーザンの氷竜の討伐がすすめばディアマスに氷竜が飛来することはなくなると口添えした。


 光属性の魔法使いであるアヤナを本命に考えている国王陛下は相当しぶったので、通学式が提案された。


 一週間ほどノーザンに行って勉強し、氷竜の状況や勉強したことを報告するために帰ってくるというのを繰り返す。


 ノーザンや氷竜の状況もよくわかるようになり、アヤナもずっとノーザンに行ったままではない。


 催事への出席は最優先にするということで、国王から許可をもぎ取った。





「行って来るわ!」


 私は駅までアヤナを見送りに来ていた。


「この世界で列車通学するなんて思わなかったけれど」


 魔法学院の時には豪華列車が手配されたけれど、さすがにそれは費用がかかりすぎる。


 アヤナは普通の列車に乗り、ノーザンまで通学することになった。


「気をつけてね」

「大丈夫! オルフェ様が面倒を見てくれるわ!」


 ヴァリウス様とアルード様からオルフェ様に頼み、アヤナはノーザンの王城に泊まれることになった。


 ノーザンとディアマスを行き来するので、書類等があれば届ける伝令の役目もこなすことにもなり、ノーザンでの滞在費用については基本的にかからない。


 氷竜討伐や光魔法の治療を必要としている人のために行動したいアヤナをノーザン国王も歓迎しているらしい。


「頑張ってオルフェ様とノーザン王家に取り入るわ!」

「応援しているから」

「私もルクレシアを応援しているわ。じゃあね!」


 アヤナは手を振って列車に向かっていく。


 すでにエリザベートもクルセード様と共にハイランドに行ってしまった。


 なんだか寂しい。


 アルード様に会いたい……。


 愛の魔法をかけてほしくなった。





 アヤナを見送った私は王宮へ向かった。


 アルード様への面会を申し込むと、すぐに許可が出た。


「ルクレシアに会えて嬉しい」


 アルード様は私を抱きしめた。


「兄上ではなく私に面会だと聞いた。どうした?」

「アヤナのことを報告しに来ました」


 ちゃんと理由は考えた。


「駅で見送ってきたところです。ノーザンに出発しました。アヤナはアルード様の婚約者候補なので伝えようと思って」

「そうか」


 アルード様が微笑む。


「納得の理由だ」

「会えてよかったです。アルード様は魔法大学に入られたので、いないかもしれないと思って」

「私の実力はすでに魔法大学を卒業できるほどにある。公務や王家の事情を優先するのは当然だけに、毎日通学する必要はない」

「そうですか」

「実は見せたいものがある。別室へ行こう」


 私はアルード様の執務室に連れていかれた。


「これだ」


 机の上に広げられたのは設計図。


「大噴水ですね」

「どのように変更するかが決まった」


 事故が起きてから大噴水周辺の催事は一切禁止されている。


 他の場所で催事をすればいいだけではあるけれど、由緒ある大噴水の側で催事が開けないのはどうかという意見もあったので、改修工事はすぐに許可された。


「噴水として活用するのは中央の高い部分だけにして、水を溜める場所の深さを少なくする」


 深い場所に設置された噴水装置はなくし、同じような事故が起きないように底上げする。


 また、大噴水の外側には土を盛り、石組みをすることで高低差を少なくする。


「ヘリの幅を増やして座れるようにする。暑い時期は内側のほうに三十センチほどの高さで水を張る予定だ。その程度であれば子どもでも溺れない。水遊びの場所になって丁度良いだろうとなった」

「とても良さそうです」

「これなら安心だろう?」

「安心です」

「完成したらお披露目のパーティーをするつもりだ。できれば出席してほしい」

「わかりました」

「きっと克服できる。水だけでなく大噴水への恐怖心も」

「私もそんな気がします」


 アルード様のおかげで私は安心できる。


 愛の魔法をかけてくれるおかげで。


 だから、私も愛の魔法をかけてあげたい。アルード様に。


「アルード様の身上書を見ました」

「気に入ったか?」

「素敵です。身上書もアルード様も全部」

「他の者に劣るようなものであってはならない。兄上が厳命して作らせた」

「一生の宝物にしたいです」

「あれは一つしかない。縁談を受けない場合は返却する必要がある。一生の宝物にするには縁談を受けるしかないが?」

「縁談を受けたいです」


 直接伝えようと思った。


「私はヴァリウス様の婚約者候補ですが、アルード様と結婚したいです」

「本当か?」

「本当です。アヤナもエリザベートも好きな人と結ばれるために頑張っています。私も好きな人と結ばれるように頑張りたいと思いました」

「ルクレシアは……私のことが好きなのか?」

「好きです」


 はっきりと答えた。


「ずっと前からアルード様のことが好きです」

「私もルクレシアが好きだ」

「両想いですね」

「その通りだ!」


 抱きしめられた。


 嬉しい。


 キスされた。


 嬉しい。


 全部、愛。


 私がどうしても欲しくて、手に入らなくて、悔しくて、否定して、全部手放さそうとして、それでも諦めきれなかったもの。


「ずっと愛してください。私を安心させてほしいのです。愛は素晴らしいものだと信じていられるように」

「ルクレシアが安心するように側にいて愛し続ける。私の愛でルクレシアを幸せにする」


 愛の魔法がかかった。


 アルード様の言葉は愛の呪文と同じ。


 何度も私を幸せな気持ちにしてくれる。


「心から愛している」

「私も愛しています」


 幸せな気持ちが消えないように、二人で愛の魔法をかけ続けた。


 きっと大丈夫。私もアルード様も愛の魔法が使えるから。


 どんなことがあっても支え合いながら頑張れると思った。


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