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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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167 一組集合



 朝。


 一組の全員が集まり、一緒に朝食を食べることになった。


「ビスケットは携帯食でしょう? 食べちゃっていいの?」


 アヤナがビスケットの缶を見ながら尋ねた。


「大丈夫だ。たくさんある」


 王族のアルード様は宿泊施設を使うことができたけれど、ベルサス様やカートライト様と一緒に野営することにした。


 すると、先生たちから特別な配慮として大量のビスケットの缶を渡されたらしい。


「毎日ビスケットだけを食べるよりも分け合ったほうがいい」

「昨夜は魔法栗や魚をご馳走になりましたので、ビスケットの缶を提供しようとなったのです」

「栗と魚とビスケットの毎日になりそう?」

「食べられる植物があるといいけれど、冬だから厳しいよね」

「魔法栗を発見できたのは奇跡かも」

「魚もね」

「新しい食料を発見したいわ」

「魔法栗の木があった周辺を手分けして捜索すれば、何かあるかもしれない」

「期待しよう!」


 朝からにぎやか。


 でも、話題は食料のことばかり。


「一応、魔物討伐のために来ていることを忘れないでね?」


 真面目に指摘しておく。


「そうだったわ!」

「キャンプに来たわけじゃないしね」

「冬だけにキャンプには向いていない」

「ここは雪が全然降らないから暖かいほうだけどね」

「暖かい地域なので実のなる木がありそうです」

「そうだな」

「魔法栗の木があるということは、何年も前から魔法植物があったということでしょう? 他にもありそうだわ」

「魔法植物があるのであれば、魔物もいるというのが常識ではあります」

「見つけて殲滅する。一組で協力して成果を上げよう」

「頑張るわよ!」


 全員で気合を入れた。





 朝食後、ネイサンが発見した魔法栗の木のところへ行った。


「想像より大きいです」

「立派ねえ」


 周囲にある木よりも格段に大きい。太い幹から伸びた枝にはたくさんの魔法栗がなっていた。


「この辺を飛んでいたらすぐに気づきそうだけど」

「この地域に住む人々は魔法を使えない。人家がある場所からも相当な距離がある。あまりにも山奥だということで知られていないと思う」

「人里近くにあったらすごい栗の木があるって評判になりそう。食料にもなるし喜ばれそうだけど、これって燃やさないといけないのよね?」

「すぐに燃やす必要はない。撤収日までに処分すればいいだけだ」

「なんだかもったいないわ」


 アヤナは魔法栗の木を見上げた。


「美味しいのに!」

「仕方がない。魔法植物が増えるほど通常植物が育ちにくくなり、魔物が棲みついて増えてしまう原因になる」

「わかってはいるわよ。で、これからどうするの?」

「二人組で探すのはどうだろうか?」


 アルード様が提案した。


「チームごとにすると、ルクレシアとアヤナの面倒をネイサンが見なければならない。戦闘をするようなことがあれば、ネイサンの負担が増えてしまう」

「九人いるので、一人が魔法栗の木で見張りとして残ります。他の八人を二人組に分け、南北東西の担当にすればいいかと」

「時間を決める。飛行魔法を使えばかなりの距離を探索できるだけに一時間だ。魔物を発見したら殲滅。救援が必要なら魔法で合図を」

「了解!」

「誰が見張り役として残るのかしら?」


 エリザベートが尋ねた。


「戦闘ができなさそうなアヤナ?」

「エリザベートに決まっているよ」

「僕もそう思う」


 イアンとレアンが答えた。


「アヤナだけじゃ魔物が来た時に困ってしまう。結界で耐えるしかないじゃないか」

「近接攻撃が得意なエリザベートなら魔物が来ても倒せるし、対応しにくい時は浮遊魔法で空中に逃げればいいよ」

「火や風で攻撃すると、魔法栗の木を痛めてしまうかもしれません。雷魔法の威力を調整して使えば大丈夫でしょう」


 ベルサス様もエリザベートがいいと判断。


「諸事情を考慮した結果、エリザベートが適役ってことね!」

「退屈しない一時間であればいいけれど」


 エリザベートの手の上に小さな雷がビリビリと発生する。


 魔物は大歓迎のようだった。





 私とアルード様が南、ネイサンとアヤナが北、ベルサス様とカーライト様が東、イアンとレアンが西を担当することになった。


「行こうか」

「はい」


 しばらく飛行すると、すぐにアルード様が止まった。


「魔力の気配を感じにくい。下に降りてもいいか?」

「もちろんです」


 地上に降りたアルード様は周囲を見回した。


「向こうに魔力を感じる」


 私も同じほうを探るけれど、魔力を感じられない。


 アルード様の感覚は相当鋭いようだった。


「いた」


 大きなクマが歩いているのを発見。


「グランアルクトスだ」


 魔物。殲滅対象。


 アルード様が剣を抜いたと思うとあっという間に近づき倒してしまった。


「焼却処分を頼む」

「はい」


 私が攻撃魔法を使うと、環境破壊や火災になってしまう可能性がある。


 範囲魔法で一掃したほうがいいような状況でなければアルード様に魔物を倒してもらい、私は焼却処分のほうを担当することになった。


 そのあとに遭遇したのは通常動物のクマ。でも、無残な姿だった。


「グランアルクトスに襲われたようだ」

「そうですね」


 魔物のクマと通常のクマのどちらが強いのかという結果が明らか。


「この辺りの生態系では通常動物のクマが最も危険だったはずだ。だが、現在はグランアルクトスが頂点にいる」

「ここは山奥なので被害といっても通常生物が減るだけです。でも、人里にグランアルクトスが出没したら大変なことになりそうです」

「たった一頭であっても村が壊滅する可能性がある。通常武器だけでグランアルクトスに致命傷を与えるのは難しい」

「狂暴な魔物ですし、殲滅しないとですね」


 移動魔法とアルード様の感覚を駆使して周囲を探索。


 目撃されていた魔物や魔法植物を発見しながら駆除を続ける。


 成果があるのはいいことだけど、魔法植物、草食系の魔物、肉食系の魔物がいる状態だけに、すでにこの地域は通常域ではなく魔物の生息域になってしまっていた。


「この周辺を全て焼却処分したほうが良さそうだ。魔法学院の生徒を集め、人海戦術で成果を出そう」


 現在はチームで魔物を探索しているけれど、それはこの地域で目撃されている魔物の生息域がどの辺りなのかを確認するため。


 魔物の生息域が特定できれば、その範囲を人海戦術で捜索して魔物を倒したり、焼却処分したりすることができる。


「全員で魔物討伐だ」

「まさに期末テストの内容ですね」


 先生たちに魔物の発見及び駆除の報告をすることになった。


 その結果、散開している生徒の全員を集め、翌日に魔法栗の木を中心とした範囲を探索しつつ、魔物を殲滅する。


 また、魔法植物も一掃するため、探索した地帯を火魔法で焼却処分することになった。


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