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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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159 チームで魔物討伐



 三学期。


 始業式が終わると特級クラスに行く。


 でも、すぐに三人チームのためのクラス替えが行われた。


 第一組、第二組という名称に変わり、成績に関係なくチームメイトは同じクラスになった。


 私のクラスは一組。チームメイトのアヤナとネイサンも一緒。


 アルード様とベルサス様とカートライト様のチーム、イアンとレアンとエリザベートのチームも同じ。


 一組は三チームの九名しかいなかった。


「一組には実力が突出している最高レベルのチームばかりだ」


 担任が全員を見回しながら言った。


「九名しかいないために驚くかもしれないが、これはチームの派遣先が一緒だからでもある。一組として派遣されるが、現地では三人チームでの行動が原則になる」


 三学期は授業やテストという形にはしているけれど、卒業後に向けた準備、経験を積むための期間になる。


 魔法学院や王都ではどうしても屋内施設内での魔法練習が多い。


 だけど、卒業後に魔法を活かす場所は多くある。屋内とは限らない。


 魔物討伐等の場合は野外になる。


 緊急招集の場合、魔法学院の生徒や卒業者が条件として指定されることが多い。


 そういったことからも、緊急招集された場合の訓練をするということだった。


「ここにいるメンバーは氷竜討伐の緊急招集を受けていた。同じような経験をすることになる」


 私たちがヴァリウス様に緊急招集されていたことは知られていた。


 先にそういう経験をさせるため、ヴァリウス様は私たちを招集したのかもしれない。


「中間テストはディアマスの国境や冬季の魔物討伐を行っているところに派遣される。だが、一組はレベルが高い。ノーザン王国に派遣されることになった」

「ノーザンに?」


 アヤナが驚きの声を上げた。


「もしかして、氷竜を倒して来いってことですか?」

「そうなるかもしれないな」


 そんな……。


 王宮にいる魔導士たちでも魔法が効きにくいので簡単には倒せない。


 小型の氷竜を倒すにも時間がかかった。


 アルード様のチームはともかく、他のチームだけで倒すのは厳しい気がした。


「だが、安心しろ。ノーザンの討伐軍の手伝いだ。後方支援だろう」


 なるほど。


「クルセード王子が向こうに行っている。詳しく教えてくれるだろう。では、関連書類を配布する」


 説明書類や資料がたくさん配布された。


「一応、派遣を拒否することはできる。だが、卒業できなくなるので注意だ」

「拒否するわけがないし!」


 アヤナの言う通り。


 そんな者はここにはいない。


 一番怪しかったのは私だろうけれど、今は大丈夫。


「では、健闘を祈る。準備をして集合日に集まれ」


 一時限目だけで今日は終わりだった。





 三日後。


 私とアヤナは荷物をまとめて魔法学院に登校した。


「おはよう!」

「おはようございます」


 ベルサス様とカートライト様とエリザベートがいた。


「おはよう」

「おはよう。荷物が大きいな?」

「魔法武器か魔法具ですか?」

「杖です。長いので箱が大きくなってしまいました」


 護身用の武器は携帯していい。


 でも、杖は必須ではないし大きいので、箱に詰めて荷物扱いにした。


「私の杖もあるのよ!」


 お父様とお母様がアヤナのために光魔法用の杖をこっそり特注していた。


「コランダム公爵夫妻が成人祝いにくれたの! 大感激しちゃった!」

「アヤナは一生コランダムに頭が上がりません」

「そうだな」

「何かと口も出されそうね」

「平気! 気にしないわ!」


 アヤナは自分の杖をとても気に入っていて、ベッドで一緒に寝ているぐらい。


 自分だけの魔法の杖をいつか持ちたいと言っていたけれど、お父様とお母様のおかげで早く実現したことに心底喜んでいた。


「ずっと魔法学院の杖を借りていたから……これからは自分の杖なのよ? 最高だわ!」

「ものすごい喜びようね」

「わかる。自分だけの特別な魔法武器は誰でもほしい」

「カートライトは特にそうでしょう」


 全員で笑っていると、イアンとレアンが到着した。


「おはよう!」

「遅刻しなくて良かった」


 双子の荷物も結構多かった。


「何を持って来た?」

「あれこれ。派遣先が他国だからさ。とにかく持って行けってうるさくて」

「ワイデン伯爵家の名誉がかかっているって言われると逆らえない」

「時間です! 飛行馬車に荷物を乗せてください!」


 各自が乗るほうの飛行馬車に荷物を積むように言われた。


「こっちに入れて!」


 エリザベートが同じ馬車のほうに荷物を持って来た。


「いいの? チームと離れてしまうけれど」

「女子同士の話だってしたいじゃない」

「俺は……向こうのほうがいいか?」


 ネイサンが聞いてきた。


「馬車のサイズを考えると五人はきつくない?」

「乗れなくはない」

「ネイサン、一人にしてしまいますが、飛行馬車での移動時間は長くありません」

「列車に乗るまでだ」


 ベルサス様とカートライト様が声をかけてきた。


 友情を感じる。


「そうだな。飛行馬車なら駅まですぐだろう」

「混雑を避けるための飛行馬車だからな」


 各馬車に乗り込むと、すぐに出発した。


 中間テストの魔物討伐の時は目的地まで飛行馬車だったけれど、それは派遣される人数が少なくて、魔物討伐をしてほしい領地からの支援があったから。


 大勢が派遣されるような場合は費用を抑えるため、飛行馬車で移動するのは駅まで。


 そのあとは列車で北部の国境地帯まで向かう。


 列車泊で翌朝には国境地帯の駅に到着。馬車で国境を越えてノーザン王国に入り、迎えの飛行馬車に乗り換える。


「列車に乗るのは生まれて初めてよ! しかも泊まれるなんてすごいわ!」


 アヤナはめちゃくちゃはしゃいでいた。


 ノーザンへ行くとわかってからものすごく浮かれている。


「氷竜がたくさんいる国へ行くのに喜ぶなんて」

「他国に行ける機会はなかなかないからね」

「僕たちだって嬉しい。他国へ行くということについてはね」

「そうだな。移動する途中のことも良い経験になる」

「部屋割りです」


 ベルサス様がカギをくれた。


 基本的には二人部屋。身分順。


 アルード様とベルサス様、カートライト様とネイサン、イアンとレアン、エリザベートとアヤナ。私は一人部屋だった。


「個室にいてもいいのですが、ラウンジやサロンもあります。そこでミーティングをしたり、全員で話したりできます」


 富裕層に人気の豪華列車を貸し切り。内装はとても綺麗で高級感が漂っていた。


「ラウンジは夜間のみバーになります。ですので、男性が優先的に集まる場所にします。サロンは女性優先です」

「食事はどこで食べるの?」


 アヤナが聞いた。


「通常は個室なのですが、今回は団体での貸し切りなのでラウンジに集合して食べます。食事の時間になったらラウンジに集合です。それ以外の時間でも軽食や飲み物が用意されていますので、客室係や乗員に確認してください」

「了解!」

「中間テストなのに高級列車の旅が楽しめてしまうわね」

「それだけノーザンで頑張れってことかも」

「礼儀作法もしっかり守らないとだね」


 荷物がきちんと運び込まれているかを確認したあとは自由時間。


 昼食時間にラウンジに集まった。


「これからノーザンへ向かう」


 アルード様が全員を見渡した。


「わかっていると思うが、ノーザンは一年中寒い国だ。冬季に活動する魔物が多くいる。その代表が氷竜、白剣虎、北方熊で危険度も高い。魔物討伐のために行くことを忘れないでほしい」


 全員が頷く。


「ディアマス内での移動については安全だ。国境を越えると気を遣うことが増える。今のうちにくつろいでほしい。では、一組に乾杯!」

「乾杯!」


 グラスが掲げられ、飲み物を飲んで拍手。


 まるでパーティーのような感じだった。


「ルクレシア」


 一人だけの私のところにアルード様が来た。


「九人だけに半端になってしまう。私と交代するか?」


 アルード様はベルサス様と向い合せの席だった。部屋割と同じになっている。


「大丈夫です。一人のほうが窓の景色をじっくり見れるので」

「ずっとではない。夕食と朝食は席替えする」

「はい」

「誰と一緒になるか楽しみにしていればいい」


 そうしようと思いながら、一人で豪華なランチを食べた。





「私は公平を重んじる。そこでくじ引きだ」


 夕食の席はくじ引きで決めることになった。


 一番から五番までのくじが二枚ずつ入っている。


 同じ番号の人がペアで向い合せの席になり、一人だけの番号を引いた者が一人だけになる。


 ただし、一回でも一人になった者は一人席を免除。なので、私が一人席になってしまった場合はくじ引きをやり直しになる。


 同じ部屋の者との組み合わせもダメ、やり直しになることが説明された。


「やった! ルクレシアだ!」


 イアンと一緒の席になった。


「一人を回避した! レアンと一緒でなくて良かった!」

「双子で一緒の席は普通過ぎるものね」

「やり直しになるかもよ?」


 アルード様はネイサン、ベルサス様とレアン、エリザベートとカートライト様、アヤナが一人だった。


「私が一人なんて! 久しぶりのぼっちだわ!」

「魔法学院の最初の頃を思い出すね」

「そうだね」

「ルクレシアのおかげで一人でなくなったから」

「寂しいかもね」

「ふっ、余裕で平気よ!」


 それぞれが席について食事が始まった。


「ちゃんと話すのは久しぶりな気がする」


 イアンが早速話しかけて来た。


「いろいろあったからね。話しかけにくい気がしていた」

「そう?」

「王太子殿下の婚約者候補だよ?」

「ああ、そうね」

「神様がくれた最後のチャンスかな」


 ドキリとした。


「卒業後はハイランドに留学しようと思っている」

「そうなのね」

「僕は風だ。ハウゼン伯爵のおかげで雷も使えるようになった。ここだけの話だけど、エリザベートとの縁談はどうかって……だからハイランドに逃げる」


 なるほど。


「エリザベートのことは嫌いじゃない。友人だしチームメイトだと思っている。でも、一生ハウゼンで肩身の狭い思いをしたくない。功績で爵位をもらうため、夫婦で魔物討伐に行けって言われるのも嫌だ」

「わかる気がするわ」

「一生懸命火魔法も覚えた。ルクレシアと同じ属性授業になりたかった。でも、強くない。特級クラスからはずれるわけにはいかない」

「別の属性に変更するのは大変だわ。得意な属性のほうがいいと思うわよ」

「僕もそう思う。もしもだけど、何かから逃げたくなったらハイランドに来るといいよ。僕が案内するから」

「現地案内人になってくれるってわけね」

「きっとたくさんのことを教えてあげられる。そうなりたい。レアンとも離れて、僕だけの人生を歩いていくよ」

「応援しているわ」


 それは心からの言葉。


「イアンがイアンらしい人生を見つけられるように。頑張って」

「ありがとう」

「今度は私の話を聞いてくれる?」

「もちろん」

「氷竜の時、町でどんなことをしていたの? 女性陣とは別行動だったみたいね。男性陣は何をしていたの?」

「ルクレシアらしい質問だなあ」


 会話を楽しみながら食事も楽しむ。


 一人でご馳走を食べるアヤナも含め、夕食はどの席も楽しそうな雰囲気に包まれていた。


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