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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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158 聖夜の儀式



 王宮で聖夜の昼食会が開かれた。


 今回は立食式。


 私は王太子の婚約者候補としてヴァリウス様の側に、アヤナは第二王子の婚約者候補としてアルード様の側にいることになった。


「王太子殿下に聖夜のご挨拶を申し上げます」

「アルード王子殿下に聖夜のご挨拶を申し上げます」


 ヴァリウス様のところへ挨拶に来る人が絶えない。


 アルード様のほうも同じ。


 私は側でずっと立っていないといけないので大変だけど、何も言わずに黙っているだけでいいという部分については楽だった。


 やがて国王陛下と王妃様が来た。


「今宵は聖夜だ。聖なる加護がディアマスに与えられる。光の加護を我が忠臣に」


 全員が一礼する。


 国王陛下と王妃様は退出してしまった。


 終わり? 


 早い。びっくりするほどに。


「ルクレシア、ついてきなさい」

「はい」


 ヴァリウス様の退出も早い。


 国王陛下が来るのを待っていただけというのが明らかだった。


「兄上!」


 廊下を歩いている途中でうしろからアルード様が追いかけて来た。


 ヴァリウス様の退出を見送ったあと、退出したらしい。


「食事にしましょう」


 食堂へ移動。


 用意されているのは三席のみ。


 アルード様の婚約者候補の席はなかったので、アヤナたちは会場にいるのだと思った。


「今年は早く終わって良かったですね」

「支出を抑えたいだけでは?」

「討伐軍の予算を抑えられるのは困ります」

「許可が出ないのですか?」

「金がないの一点張りです。王妃の衣装を新調する予算はあるようですが」

「申し訳ありません」

「アルードが謝る必要はありません」

「また氷竜が来るかもしれないというのに」


 確かに……。


 ゲームでは冬休みだけかもしれないけれど、現実も同じとは限らない。


 冬の間は来る可能性がある。


「ここだけの話、兄上だけで倒せるはずです」

「絶対に私だけでは行きません。魔物討伐の予算を削減され、その予算を国王派の優遇に使うだけです。いいことなど一つもありません」


 ヴァリウス様が強いほど、いいようにこき使われるだけ。


 魔物討伐で評価を上げたい人々が功績を上げる機会を失って不満を強める。


 実力主義を尊ぶ王太子派にとって、確かに良いことは一つもない。


「クルセードがノーザンにいます。氷竜の数が減っているのでは?」

「クルセードはほとんど倒していません」

「そうなのですか?」

「どの程度の被害が出ているのか、ノーザンの対応がどのようなものなのかを見に行っただけです」

「そうですか」

「貴族の反応はどうでしたか?」

「特には」

「婚約者候補が一人減ったのに?」

「たった一人です」


 ヴァリウス様の怒りを買ったせいで、レベッカはアルード様の婚約者候補として討伐軍に同行する許可が出なかった。


 王太子派の貴族もヴァリウス様を怒らせたことに激怒。婚約者候補からはずすべきだと声を上げた。


 レベッカは新しく追加された婚約者候補で、アクアーリ伯爵家も有力貴族ではない。


 学業の成績が良かったのは一時的なことで、最近は成績が下がっている。


 光属性でもないということで、国王派や第二王子派の貴族たちもそっぽを向いた。


 そのせいで国王陛下が婚約者候補からはずすことを決めた。


 聖夜の昼食会にはレベッカもアクアーリ伯爵家も招待されていない。


 アクアーリ伯爵家は終わったという話が聖夜の一番の話題になっているはず。


「あと三人もいます。面倒ですね」

「その通りです」

「一番難しいのはエリザベートです。アレクサンダーとハウゼンに影響が出ます」

「兄上から見るとそうですね」

「マルゴットを早めにはずしたいところです。父上とブランジュのつながりを切らなければ」

「ブランジュは資金的な支援をしています。魔物討伐の予算が少なくなるのでは?」

「そうなればディアマス中に魔物の被害が出ます。予算を少なくした国王に対する国民の不満が高まるでしょう。悪くありません」

「わかります。ですが、苦しむのは国民です」

「国民は真実を知るべきです。自分たちの安全を守っているのは国王ではなく王太子だと」


 私は黙って食事をするだけ。


 だけど、どう考えてもヴァリウス様とアルード様だけでするような話を聞いてしまっている気がする。


 遮音魔法を忘れているのではないかと思ってしまった。


「そろそろ傾国の美女にも話題を振ってあげましょう」


 ヴァリウス様が微笑んだ。


「良い方に傾ける案はありますか?」

「……氷竜が来てしまいました。ですので、毎年冬に氷竜が来ることを想定した予算を計上しておきます。先に予算を確保しておけば、氷竜が来なかった時にその予算が浮きます。他の魔物討伐用に使えます」

「普通ですね。その程度は誰でも思いつきます」

「申し訳ありません」

「アルード、かばってあげないのですか?」

「兄上は傾国の美女という言い方をした。ちょっとした軽口だ。本当に役立つ案を出せというわけではない。大丈夫だ。くだらない話をしてもいい」

「くだらない話なんて……恐れ多いです」

「昼食にルクレシアを一緒させているのはなぜだと思う?」

「婚約者候補になったからでは?」

「傾国の美女になったからです。良い方のね。ご褒美ですよ」

「ありがとうございます」

「聖夜は贈り物をする。これを」


 アルード様はポケットから箱を取り出した。


「ルクレシアに。私と兄上からだ」

「ヴァリウス様とアルード様に心からお礼申し上げます」

「開けなさい」


 箱を開ける。


 中に入っていたのは身代わりのペンダントだった。


「常時これを身につけばいい。安全を確保しやすくなる」

「お心遣いに深く感謝いたします」

「ネイサンにも贈られている。氷竜討伐で活躍したことへの褒賞だ。ルクレシアに対しても同じ理由になる」

「はい」

「これは個人所有の魔法具だ。三学期はチームで魔物討伐をする。その時にも使えばいい」

「そうですね」


 とても実用的な贈り物であり、褒賞だった。



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