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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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157 命を大事に



 氷竜討伐は終了。


 事後処理は魔導士たちに任せ、私は王都に帰還した。


 ヴァリウス様は不機嫌だった。


「ネイサンは首だと言ったのに背中に剣を刺しました」


 剣を刺す方向を間違えた。


「背中より首のほうがやわらかいに決まっています。ゼイスレードのくせにそんなこともわからないのですか?」

「申し訳ありません」


 ネイサンはうなだれるしかない。


「ルクレシアも無理をする必要はありませんでした。一匹はアルードの魔法剣で試し切りをすることになっていたので、町から呼ぶための時間稼ぎをしていただけです」


 時間稼ぎをするなら自分一人のほうが楽だとヴァリウス様は判断し、討伐軍の魔導士たちを退却させた。


「魔法を撃ちたいと言うのでブレスが落ち着くまで待っていたというのに、待てませんでしたね? しかも、狙われやすい浮遊状態で撃ちました。ブレスから守る防御盾を張ったというのに、わざわざその場所から移動しました。氷竜が狙っているのはルクレシア。ブレスを発したあとに高度を下げるならともかく、その前に下げると氷竜が狙いを下に変えます。アルードが来なければブレスに当たっていました」

「申し訳ありません」


 私もうなだれるしかない。


「大型の魔物との戦闘をする機会は貴重です。連携を試すのであればなおのこと。余計なことはしないように!」


 極めて強力な魔法剣を使えるヴァリウス様から見ると、氷竜は強敵ではない。


 でも、ディアマスにおける魔物討伐は魔法だけで倒す方法が主流。


 そこで魔導士だけでうまく連携しながら倒せるように実戦訓練をしておき、ヴァリウス様がいちいち北部に行かなくても氷竜に対応できるようにしたかったことが説明された。


「氷竜に立ち向かった勇気とダメージを与えた実力については認めます。ですが、訓練に命を懸ける必要はありません。特別招集の学生であって、正規の討伐軍ではないのです。二人は自分の命をもっと大事にしなさい。いいですね?」

「はい」

「仰せのままに」


 たっぷり怒られたけれど、許してもらえたので良かった。


 何よりも犠牲者が出ることなく氷竜を倒せたのでホッとした。





「ルクレシアが無事でなによりだったわ」


 アヤナは私のことが一番心配だったらしい。


「主人公のライバルになりたがらない悪役令嬢なんていらないじゃない? ゲーム的補正で犠牲者になってしまったらどうしようと不安でたまらなかったわ!」

「アルード様のおかげで大丈夫だったわ」

「アルード様に感謝しなさいよ! まあ、これで危険なイベントは終わりだから」


 犠牲者が出る可能性がある氷竜のイベントは三年生の冬休みに高確率で発生する。


 ここをうまく切り抜ければ、現在いる攻略対象者が残るのはほぼ確定。


 あくまでもゲームの話ということだけど。


「主人公が攻略していて最も好感度が高い対象者が氷竜を倒すはずなのよ」


 現状において、最も好感度の高い相手はアルード様。


 氷竜にとどめを刺したので間違いない。


 でも、ヴァリウス様やネイサンも魔法剣や魔法を使っていたので、好感度はかなり高い。


 その次がアレクサンダー様。


 他のキャラはその場にいなかったので好感度が高くても上位ではないというのがアヤナの見立てだった。


「縁談騒ぎの時もネイサンとアレクサンダー様だったし、この四人が最終候補ね。ちなみに私にとってではなくてルクレシアにとっての相手だから。この四人から結婚相手を選ぶことになりそうね」

「勝手なことばっかり」

「大丈夫。ルクレシアの本命がアルード様だってことはわかっているわ。推しだし、キスもしちゃったしね?」


 完全にからかっている。


「アヤナのほうはどうなのよ? まだ登場していないの?」

「残念ながらまだね」

「いつ登場するの?」

「さあね。実を言うともう無理かも」


 アヤナはため息をついた。


「まあ、出会うのは難しいってわかっていたから」

「私に協力できることはない?」

「アルード様が私を好きにならないようにすることかしらね? だから、このままでいいのよ。とりあえず、無事卒業できることを目指すわ」

「何でも言ってね。協力できそうなことであれば協力するから」

「ありがとう」


 アヤナは笑顔を浮かべるけれど、無理をしているのがわかる。


 ずっと推しのために頑張って来たのに、出会うことさえできないなんて……。


 不思議だった。


 ゲームに登場する人であれば、詳しい情報もわかっているはず。


 自分から会いに行けないのだろうかと思った。


「アヤナの推しは本当にまだ登場していないの?」

「そうよ」

「怒らせてしまうかもしれないけれど、一応は聞くわね。他の人ではダメなの?」

「ゲームならとりあえずって選択もできるわ。でも、現実は一度だけ。だったら本当に好きな人と結ばれたいわ。二番や三番なんて嫌よ。卒業まで待ってみるわ」

「卒業まで? 卒業したらゲームは終わりってこと?」

「それは卒業してのお楽しみってことで」

「教えてよ!」

「ゲームより現実優先。冬休み中にあれこれ考えて準備しないとだから。三学期は短いしあっという間よ? 魔物討伐ばかりだから」


 三人チームで魔物討伐に行く。


 私とアヤナとネイサンの絆はより深まりそうだった。


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