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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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153 緊急招集



 去年は氷竜が来る可能性があるというだけで討伐軍がすぐに出発した。


 でも、その支出が多額だったため、今年は内密の調査からすることになった。


 予算を抑えるために少人数での調査を行った結果、筆法地域の山岳地帯に氷竜の姿は確認されないということだった。


 なので、期末テストは普通に受けることになった。


「悔しい……」


 アヤナは不満たらたらだった。


「練習に励んだのに!」


 同じ相手ばかりと対戦するのを防ぐため、できるだけ対戦したことがないような対戦相手になった。


 そのせいで私たちのチームはアルード様たちのチームと対戦しなかった。


「いいじゃないか。攻撃魔法を撃てただろう?」


 余裕があったのでアヤナは光の攻撃魔法を使っていた。


「アピールしないと成績が良くならないからよ!」


 アヤナの不機嫌は治らない。


「ネイサンへの攻撃を盾魔法で防ぐ練習をたくさんしたのに!」


 学祭の時、アルード様とベルサス様とカートライト様の三人でネイサンを狙った。


 同じようなことをされないための対策として、アヤナはネイサンの動きに合わせながら盾魔法で攻撃を防ぐ練習をしていた。


「俺だって物足りなかった」


 学祭で一人無双ができなかったことをぶつぶつ言われたので、試験で一人無双させてあげた。


 一人一回は魔法を使わないといけないので、アヤナは防御魔法と拠点への結界。


 私は自分で出した燃える鳥籠に入って防御。


 あとはネイサンにお任せという感じ。


 私とアヤナのアピールポイントが少なくなってしまうけれど、ネイサンがさっさと相手チームを倒してしまうと時間がなくてアピールすることができないのは同じ。


 だったらそれを活用。一人無双をさせてあげたということで納得させるつもりだったのに、物足りないと言われてしまった。


「せっかく強い剣があるというのに!」

「三学期があるでしょう?」


 三学期の中間テストは三人チームでの魔物討伐。


 期末テストは三学年全員での魔物討伐。


 魔法学院は魔法を習う学校だと思っていたけれど、後半のテスト内容を考えると魔物討伐のための人材育成学校のように思えてきた。


「氷竜がいないのは良いことだとわかっているが、招集されたかった」


 ネイサンは残念がっていた。


「氷竜なら炎の魔剣を使える!」

「動機が単純ね」

「でも、効きそうだわ」


 ゲームでネイサンが氷竜を倒せる条件を考えると、炎の魔剣を手に入れた時点で大丈夫だろうという安心感があった。


「昼食時間まで待つと長いし、今日は帰りましょうか」

「そうね」

「明日は来るのか?」

「昼食時間に食堂に来るかも?」

「わかった」


 テストが終わったので解散。


 私とアヤナはコランダム公爵家に帰って昼食を食べることにした。





「王宮から伝令が来ております」


 お母様と私とアヤナで昼食を食べていると、執事が駆け込んできた。


「王太子殿下からです。お嬢様とアヤナ様は至急王宮に来るようにとのことです。魔法学院の制服とローブを着用とのことでした」

「魔法学院のローブを?」


 お母様は怪訝な表情をした。


「魔法の練習かしら? でも、テストは終わったわよね?」

「わかりませんが、行ってきます。至急なので」

「そうね」


 私とアヤナは制服とローブを着て王宮へ向かった。


 待合室にはネイサンもいた。


「招集された!」

「めちゃくちゃ喜んじゃって」

「氷竜かもしれないわね。被害が出ているのかもしれないし、嬉しそうな表情はおかしいわ」

「そうだな。さすがルクレシアだ。気を引き締める」


 しばらくするとベルサス様とカートライト様も来た。


「三人もいたのですか」

「ベルサス様とカートライト様も呼ばれたのですね」

「喜ぶような内容とは思えません」

「そう思う」


 他にも召集された人がいた。


 イアン、レアン、エリザベート、マルゴット、レベッカも来た。


「レベッカも?」

「婚約者候補だからでしょうね」

「レベッカ、久しぶりね。元気がなさそうだけど、大丈夫?」

「お久しぶりです」


 レベッカは淑女の礼をした。


「体調不良ではありません。期末テストが終わっていないからです。午後の試合なのですが、突然招集されたので困ってしまって」

「あー、時間的にダメそう?」

「最後なので、王宮の用件が早く終われば間に合うかもしれません」

「そう言うことね。でも、どうかしらね」

「王太子殿下の招集だから、魔法学院側も考慮してくれるわ」

「そうよね」


 やがて、侍従が来た。


「ご案内いたします」


 別室に移動することになった。


 豪華な部屋にはヴァリウス様とアルード様がいた。


「現時点においては内密の話があります。ディアマスの北部に氷竜が飛来しました。討伐軍が派遣されます。私とアルードは北部に行きます。婚約者候補は王族の相手としてふさわしいことを自ら証明しなくてはいけません。同行しなさい。婚約者候補の護衛として、魔法学院における実力者を数名同行させます。あとはアルードから説明します」

「正規の討伐軍とは違うため、別動隊のようなものだ。二人一組で行動する。組み合わせを考えた」


 私とネイサン。


 アヤナとカートライト様。


 エリザベートとイアン。マルゴットとレアン。レベッカとベルサス様。


「ベルサスとレベッカのペアは浮遊魔法や移動魔法が使えない。ベルサスの担当はイアン、レベッカについてはレアンで担当だ。全員が一緒の時はそれでいいだろう」


 討伐軍に参加すると言っても、ヴァリウス様が率いる者に任せればいい。


 婚約者候補は拠点における活動で、雑務担当になる。


 非常時の経験を積むため、厚待遇は一切ないとのこと。


「ルクレシアは王太子の婚約者候補だ。火魔法が使えるだけに兄上に同行だ。ルクレシアの護衛を担当するネイサンも同じだ」

「はい」

「仰せのままに」

「一時的な処置として、王宮の魔導士見習いの制服を貸与する。男性は武器を扱うことを考え、騎士服にする。個人所有の魔法武器や魔法具があれば急いで取りに戻れ。何かあるか?」

「アルード王子殿下に申し上げます」


 レベッカが発言した。


「このあとすぐに出発するのでしょうか?」

「そうだ。屋敷に戻る必要がない者は着替えて出発するまで待機になる」

「私は期末テストを受けていません。時間的にすぐに魔法学院に戻れば間に合います。テストを受けてきてもいいでしょうか?」

「兄上、いかがいたしましょうか?」

「無礼です!」


 ヴァリウス様が冷たい口調で答えた。


「氷竜によって多くの人命が危険にさらされています。一刻も早く討伐軍は出発しなくてはならないというのに、それでも王子の婚約者候補ですか?」

「期末テストはチーム戦です。レベッカは他の者に迷惑をかけたくないのだと思います」

「関係ありません! チーム戦だとしても一人で参加できます! 自分の力を最大限に活用すればいいだけのこと! 一人で三人を相手にする者もいます!」


 ヴァリウス様はレベッカを冷たく見据えた。


「レベッカは魔法学院に行きなさい。期末テストを受ければいいでしょう。討伐軍への招集は取り消します。その資格がありません。アルードの婚約者候補としてふさわしくないことがはっきりとしました!」


 廊下に続くドアが開いた。


 レベッカの体が持ち上がり、部屋から放り投げられた。


 そして、ドアが閉まる。


 前にアヤナがされたのと同じ。魔法による強制退出。


「他に同じようなことをほざく者はいませんね?」

「兄上、レベッカを参加させないとなると、ベルサスの扱いをどうすればいいでしょうか?」

「アヤナとカートライトと組ませなさい。三人チームです。イアン、レアン、エリザベート、マルゴットは四人チームです」

「では、そのように」

「急いで準備しなさい!」


 ヴァリウス様はバルコニーにつながる扉を開け、浮遊したままどこかに行ってしまった。


「一時間以内に準備をしてほしい。ルクレシアが使っていた部屋があるだろう? 女性用の着替えは全部そこにある。男性用の着替えは私の私室だ。個人所有の魔法武器と魔法具を用意したら各部屋に集まって着替えるように。兄上の指示があるまで待機だ」

「わかりました」


 ベルサス様が答えた。


「カートライト、家まで飛行魔法を頼めますか?」

「わかった」

「ルクレシアとアヤナはネイサンの飛行魔法で、エリザベートはイアン、マルゴットはレアンの飛行魔法で戻ったほうがいいのでは? 馬車よりも早いはずです」

「私の杖は魔法学院のものだからいらないわ。すぐに着替えに行けるわ」

「俺がルクレシアを飛行魔法で送る。それでいいか?」

「お願いするわ!」


 氷竜戦に備えてイグニスのおじい様から素敵な杖を借りている。


 それを持って行くつもりだった。


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