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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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15 秘策



 放課後。


 私とベルサス様は教室に残り、話し合いをすることになった。


 一対一でもよかったのだけど、サブリーダーになったレベッカが同席したいと申し出た。


 それなら自分もと言い出したカーライト様も同席。


 二対二で話をすることになった。


「早速ですが、アルード様のグループの全員が参加する場合、何人になるでしょうか?」

「五十人です」


 ベルサス様が人数を答える。


「多いですね……」

「これでも食堂の席を確保しにくいために制限しています。そちらは?」

「三十人です!」


 私が答えようとすると先にレベッカが答えた。


 私のグループも身分に関係なく入れるせいで希望者が殺到した。


 レベッカから食堂の席取りが大変になると指摘され、慌てて入れるのを一時停止にしたため、その人数になった経緯がある。


「私はルクレシアに聞いたのですが?」


 ベルサス様に睨まれたレベッカは途端に硬直した。


「申し訳ありません」

「ベルサス様、レベッカはサブリーダーです。少しでも私を補佐したいと思ってくれたのだと思います。レベッカ、配慮は嬉しいけれど、今は任せて」

「はい」


 レベッカは緊張した面持ちで頷いた。


「レベッカをサブリーダーに推薦するとは思いませんでした。いいのですか?」

「というと?」

「一部でレベッカがアルード様の婚約者候補に加わるかもしれないという噂があります。そのような女性を腹心にしていいのかということです」

「問題ありません。レベッカはいつも私のことやグループのことを考えてくれています。皆もわかっているので賛成してくれました」

「そうですか」

「私が不在の時に代理を務めてくれる者を指定しておいたほうが、皆も安心すると思いました。今回の件についても、私が体調不良などで休んだ場合、レベッカが代理を務めることができます。アルード様、ピクニックランチの担当のベルサス様にとってもそのほうがいいと思うのですが?」

「わかりました。それで、グループ内での話し合いはどうなりましたか?」

「開催日は来週の同じ曜日ということになりましたが、人数が相当増えます。堅実かつ無難な案として二カ所に分ける案が出ました」

「確かに堅実かつ無難ですね。ですがその場合、どちらの場所で誰がランチを取るのかを決めなくてはなりません」

「そうなのです。くじ引きで決める案も出ました」

「無難ですが、あまり良い案とは言えません」


 私のグループがくじ引きで決めるとなると、ベルサス様はそのことをアルード様に伝えなくてはいけない。


 それを聞いたアルード様もくじ引きを採用しまうと、ベルサス様は運次第でアルード様と離れることになる。


 だからこそ、くじ引きが無難だとわかっていても、良い案とは言わない。


 自分が確実にアルード様の側にいられる案でなければ、良いとは言わないと思った。


「そうですか。ところで、ベルサス様におうかがいしたいことがあります。アルード様のグループではどの属性を得意にしている者が多そうでしょうか?」


 ベルサス様は眉を上げた。


「得意な属性?」

「魔法です。風、水、土、氷です」

「確認しなければわかりませんが、土と水が多そうな気がします。風もまあまあ。氷は少ないでしょう。ちなみに私は氷が得意です。何か魔法が必要ということであれば、話してほしいのですが?」

「まだ考え中なのです。カーライト様が得意な魔法は?」

「風だ」

「双子の方々は?」

「風だ」


 嬉しい! ゲームアプリの攻略相手は優秀だと思うので。


「属性で何かするのか? それともチームを分けるのか?」

「風魔法が得意な者がいると、移動が早くスムーズにできると思いまして。土と水は十分いそうなのでいいとして、問題は氷です。私のグループではレベッカともう一人しかいません」

「氷魔法を得意とする者はあまりいません。希少なほうでしょう」

「ここだけの話ですが、私に秘策があります。ですが、魔法が重要になります。そして、いくつかの条件をクリアしなければなりません」

「詳しく話してください」


 私は思い出したスチールを元にして考えついたことを説明した。


「なるほど。確かに秘策と言うべきものですが、条件をクリアしなければなりません」

「中庭に対する許可が必要です。一日だけで構いません。何かあれば私が責任を取りますので、アルード様から先生のほうに伝えてくださらないかと……」


 すんなり許可がもらえそうな人物を活用しない手はない。


「アルード様を利用するつもりとは……無礼ではありませんか!」

「アルード様のグループが全員参加できるようにこの秘策を使うのです。私だけのグループだけなら前回と同じで済みますので、秘策を使う必要はありません」


 アルード様が自分のグループの全員を参加させたいのであれば、秘策を実行するために協力するのは当然だと思う。


「アルード様は自分のグループから参加する人数を限定的にするという案を最初に提示してくれました。それでいいなら、やはり秘策は必要ありません。ただし、少数の男子生徒を大勢の女子生徒が取り囲む状況になりますのでご了承ください」


 ベルサス様の表情が険しくなった。


 でも、私は正直にどうなるかを説明しただけ。


 普通に予想すれば、わかることでもある。


「この件は保留です。アルード様に伝え、判断を仰ぎます」

「よろしくお願いいたします。一応、許可が出た場合に備えて話しておきますが、風班、氷班、水班が必要です」

「土は?」

「使い手が多いので大丈夫です」

「わかりました」


 たぶんだけど、これで決まり。大体は。


「秘策を実行する場合ですが、日曜日にコランダム公爵邸に来ていただきたいのです。風班、水班、氷班の方だけです。開催前の予行練習をしたいと思います。いかがでしょうか?」

「それについても聞いてみます」

「では、よろしくお願いいたします」


 私は丁寧に頭を下げた。


「ルクレシアは公爵令嬢です。そこまで頭を下げる必要が?」

「ベルサス様はアルード様の代理と同じ。二つのグループが全員参加できるよう協力していただきたいのもあります。グループリーダーとして誠心誠意を示したいと思いました」

「そうですか。良い心がけだと思います。では、これで」


 話し合いは終了。


 ベルサス様とカーライト様を教室で見送ることにした。


 馬車乗り場まで一緒するのは気が重いので。


「さすがルクレシア様です」


 レベッカが私をまじまじと見つめた。


「あのような案をお持ちとは思いも寄りませんでした」

「普通は思いつかないでしょうね。だけど、せっかく大勢でするわけだし、楽しめるようにしたいでしょう?」

「そうですね。ですが、許可が出るでしょうか?」

「アルード様次第よ。普通はできないわ。実行できる可能性は低いから、皆の前では言えなかったのよ」


 期待させておいて、やっぱり無理だったとがっかりさせたくない。


「確かに実行可能かどうかはわかりません。難しい気もします」

「もしダメだったら、二カ所にしましょう。レベッカの案で行くわ」

「わかりました」


 レベッカが頷いた。


「でも、試してみたいです。ルクレシア様の秘策を」

「私も同じよ」


 自信はある。


 記憶の中から引っ張り出したスチールのおかげで。


「予行練習の準備もしないと。両親に許可を取らないといけないわ」

「コランダム公爵から許可を取るのも大変では?」

「実はそうなのよ。でも、ベルサス様に話してしまったし、アルード様にも伝わってしまうと言えば、しぶしぶでも許可をくれると思うわ」


 外堀を埋める作戦とも言う。


「秘策を実行するのは大変だけど、特別な催しにしたいの」


 いくつもの条件をクリアしなければならないだけに難しい。


 それでも、最初から諦めていては何もできない。


 堅実で無難な案でその場を乗り切るよりも、私は挑戦することを選んだ。



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