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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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146 攻撃開始



 ベルサス様がアイン様、カートライト様がナハト様、アルード様がクルセード様と魔法剣で戦い始めた。


 個別撃破を試みることにしたらしい。


 魔力が減っているので魔法を多用できない。それで魔法剣での攻撃を選択したのかもしれない。


 アイン様の武器はトライデントと呼ばれる三又の槍で長さがある。


 ベルサス様のレイピアはそれに比べるとリーチがないので、二歩分は踏み込まないと攻撃が届かない。


 魔法で補おうとするけれど、すでに床面の氷は溶けてしまっていて、水面から浮き出した水球がベルサス様に飛んで来る。


 魔法攻撃は前面や上方からが基本。不意をつくために横や後ろからすることもあるけれど、真下から飛んで来るような攻撃はかなり珍しい。


 それに対応しながらアイン様と戦わなければならないベルサス様はどう見ても苦戦していた。


 カートライト様の相手であるナハト様の武器は頑丈そうな短剣。


 でも、ナハト様の背後に黒いモヤモヤがあって、そこから黒い鞭のようなものが何本も伸びてカートライト様を攻撃していた。


 魔法なのだろうけれど、見たことがない。


「あの黒い魔法は属性さえわからないわ」

「闇魔法だ。似たような攻撃をする魔物がいる」


 ネイサンが教えてくれた。


「光の国だったディアマスに闇魔法の使い手はほとんどいない。だが、ハイランドは違う」

「黒いのがまさに闇って感じね」

「アルード様対策だろう。光と闇は相性が悪い。結界を壊せる」


 ネイサンの言葉に私とアヤナはハッとした。


「不味いじゃない!」

「ナハト様をなんとかしないと!」


 結界を壊されたら毒の水が流れ込んで負けてしまう可能性が高い。


「あれだけ黒い鞭を出していると対応しにくい。速さがあるカートライトで対応して結界に近づけないようにする作戦だろう」

「なるほどね」


 アルード様がクルセード様に攻撃しているけれど、クルセード様は余裕で剣をさばいている。


 クルセード様がアルード様に剣や戦術を教えているので、師弟対決みたいなものかもしれない。


「これでは倒せないわ」

「そうね」


 アヤナも悔しそうに同意する。


「善戦はできるかもしれないけれど、これは成績アピールじゃないわ。勝たないと!」


 ものすごい声援が続く。


 ベルサス様とカートライト様がかなり押し込まれてきて、アルード様が光魔法で援護している状態だった。


 クルセード様が積極的にアルード様を攻めないからこそ、アルード様もサポートができている感じ。


「見ていることしかできないなんて嫌だわ!」


 アルード様を助けたい。


 ベルサス様とカートライト様も。


 だけど、これは三対三の勝負。


 わかってはいるけれど、何もできない自分が悔しくてたまらなかった。


 するとその時。


「ルクレシアも参加してもいいぞ? このままではつまらない。俺を楽しませてみろ!」


 私の声を聞いたのか、クルセード様が挑発するように叫んだ。


「ちょっと! 物凄い挑発だわ!」


 アヤナが憤慨する。


「俺も参加したい!」


 ネイサンが叫んだ。


「ネイサンとアヤナも来い! 面白くなればいい!」

「さすが魔王様! 遠慮なく!」


 アヤナが素早く防御魔法をかけ始める。


「ネイサン、私に浮遊魔法と移動魔法をかけて!」

「俺が先だ!」

「私が先よ、早く!」


 しぶしぶネイサンがアヤナに浮遊魔法と移動魔法をかけた。


 アヤナが会場に飛び込む。


 真っ先に使ったのは回復魔法。


 アルード様、ベルサス様、カートライト様の疲労を軽減するためだった。


「ナイス、アヤナ!」

「それが大事だよ!」

「気をつけて!」

「下よ!」


 イアン、レアン、マルゴット、エリザベートが叫ぶ。


 アヤナはすぐに自分を守るための球状結界を張った。


 水面から浮かび上がった水の塊が次々と結界に当たるけれど、崩れて落ちていく。


 やっぱりアヤナの結界は強い。攻撃されても簡単には壊れなかった。


 アヤナの攻撃をしたアイン様に隙ができたのを見て、ベルサス様がレイピアで攻撃をするけれど、間一髪でかわされてしまった。


「惜しい!」

「ベルサス! 俺がやる!」


 ネイサンが参加。


 ベルサス様と交代しようとした。でも。


「カートライトを!」


 ベルサス様はカートライト様のほうを支援してほしがった。


 おそらく属性の関係。


 アイン様は水。しかも、強い。


 ネイサンは風と火を扱えるけれど、火攻撃を無効にされてしまうのでもったいないと考えた。


「カートライト!」


 ネイサンがカートライト様の援護に向かう。


 黒い鞭に掴まっては切っていたけれど、それをネイサンが一気に全部を切り離した。


「俺がやる! 一人でいい!」

「任せた」


 カートライト様は相当な負担だったのかすぐに下がる。


 水の塊が水面から浮かんで襲い掛かるけれど、それを食い止めたのはアヤナの盾魔法。


 自分には攻撃されないタイミングと考えて結界を解き、カートライト様の援護に回った。


「こっち!」


 アヤナとカートライト様は合流。結界の内側に入った。


 たぶん、相手の攻撃を受けないようにしながらしばしの休憩と作戦タイムを取るつもり。


「ルクレシアはまだか?」


 まだです!


 何を言われても無視するのは詠唱をしているから。


「燃え尽きろ!」


 上級魔法が発動。


 この状況を不利にしている要因でもある床面に広がる水を攻撃した。


 でも、アルード様たちの拠点を入れない程度で範囲を指定している。


「消えないわ!」


 エリザベートが叫んだ。


 アイン様の水魔法はやっぱり強い。だけど、何度も撃てばいい。


 私はもう一度上級魔法を詠唱し始めた。


「狡いぞ、ルクレシア! そこにいたら攻撃できない!」


 言われてしまった……。


 攻撃魔法の範囲にしていい場所は決まっているため、範囲外から魔法を使えば私への攻撃はできない。


 狡いのはわかっていたけれど、飛び込んだらアヤナのように即攻撃されてしまい、詠唱の長い上級魔法が使えない。


 悪役令嬢は狡いのが仕様よ!


 すでに詠唱中なので、次の上級魔法を撃ってから中に入ることにした。


 二発目はアイン様に向けて。


 アイン様の水魔法は相当な強さだけど、開幕からずっと水を張っている。水魔法の攻撃も何度もしているので、魔力が確実に減っている。


 すました表情は変えないけれど、ベルサス様に攻撃されて水の管理も大変なはずだった。


 上級魔法が無事発動。避けられてしまったけれど、ベルサス様がアイン様の動きを読んで攻撃した。


 氷魔法がアイン様に当たる。


「当たった!」

「やっと!」

「いける!」


 たった一発の魔法で大歓声。


 その声に紛れるようにして私も試合場所に突入した。


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