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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第五章

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142 学祭予選



 中間テストが早い人ほど大変という人もいるけれど、逆の人もいる。


 なぜなら、中間テストが終わったら学祭のための三人チーム作りに移行するから。


 中間テストもチーム作りも終わっていればすぐに練習に入れる。作戦などを立てるための話し合いもしやすい。


 私とアヤナとネイサンの三人はそれに当てはまった。


「今度は仲間ね! 大歓迎!」


 アヤナは私が合流したことを心から喜んでくれた。


「アルード様の弱点を教えて!」

「ないわよ」


 正直に答えた。


「光魔法は魔導士レベルだし、剣術もすごいし」


 強敵であるベルサス様とカーライト様のペア、アヤナとネイサンのチームと対戦したからこそわかる。


 やっぱりアルード様は強い。


 ゲームにおいて王道の攻略対象者と言われるだけあって、完全に王子様スペックだった。


「でも、二つだけ攻略のきっかけになりそうな部分があるわ」


 一つは魔法による攻撃がほとんどないこと。


 光の攻撃魔法もあるけれど、種類が少ない。


 もう一つはできるだけ攻撃したくないという前提があること。


 ベルサス様とカートライト様の評価を上げるために、アルード様が一番目立つようなことを避ける。それにはアルード様の攻撃を減らすのが最も効果的だった。


「ベルサス様もカートライト様も攻守どちらも担当できるわ。でも、カートライト様は風なのでどちらも物足りない感じがしたわ」

「ベルサス様のせいよ」

「俺もそう思った。見た目としてはカートライトのほうが武器も扱えるし機動力もある。魔法の発動も速くて全てがスムーズに見える。だが、決定力が不十分だ。ベルサスは基本的に魔導士タイプだが、レイピアの技能はかなり高い。何よりも、全てが細かい」


 ベルサス様の武器はレイピア。


 他の剣よりも細くて強度もないけれど、軽くて扱いやすいためにスピードのある攻撃とピンポイントで狙った攻撃ができる。


 それをしっかりと使いこなすには相当な技量が必要だけど、ベルサス様はできる。


 臨機応変であっても正確、魔法も緻密。


 氷という属性のせいで目立ちにくいけれど、対人戦でベルサス様は本当にすごい人だと実感した。


「頭も良いから切り替えも早いのよね」

「作戦を立ててもうまくいかなかった場合は変えないといけない。ベルサスはそれもうまい」


 私とアルード様のペアと対戦した時、ベルサス様は私の上級魔法への対応として修復を選んだ。


 そのためにアルード様に攻撃するのをやめ、逃げ回るための攻撃に切り替えた。


 そのせいで私は上級魔法ですぐに拠点を攻略することができず、アルード様はベルサス様を結界に閉じ込める作戦に変更しなければならなかった。


「アルード様とベルサス様が組むなんて嫌すぎるわ」

「あの二人を最もうまくサポートできるのはカートライトだ。まさに最強チームだろう」

「魔王様が最強チームかも?」

「それは別枠だ」


クルセード様は部下の二人とチームを組んで参加する。


 ようするに、ハイランドチーム。


「クルセード様とアイン様のペアと戦ったのよね? 強かった?」

「レベルが違ったわ」

「俺の火魔法は全然効かない。遊ばれただけだった」


 そんな気はしていた。


「期末テストのほうが重要だ。学祭も頑張りたいが、三人で組む場合の改善点を見つけるためだと思っている」

「意外と冷静!」

「当たり前だ。何も考えずに倒せるような相手ではない」

「倒すつもりなのね……」

「当然だ!」


 ネイサンの表情は真剣そのもの。


「そのために必死で魔法剣を覚えた!」

「そうね。でも、風だし。なぜ、火じゃないのよ?」


 ゲームにおけるネイサンの隠し能力は炎の魔法剣。


 でも、ネイサンが覚えたのは風の魔法剣だった。


「俺が最も得意にしている魔法が風だからに決まっているだろう?」


 わかる。


 ネイサンは風の上級魔法を使えるけれど、火の上級魔法は使えない。それを考えると、風魔法のほうが得意。


 そうなると、ゲームにおける苦手な火魔法を鍛えて強くするという条件に当てはまらない気がするし、そもそも炎の魔剣のアイテムも隠し能力のレアカードもない。


「火に変えられないの?」

「別の剣を用意しないといけない」


 現在の剣は風の魔法剣を使うための特注品で、火の魔法剣を使うためにはそのための剣が必要になるという。


「属性で違う剣じゃないといけないの?」

「当たり前だ。属性の力に耐えることができる専用の剣でないといけない。普通の剣では魔法の力に耐えられずに壊れてしまう」

「そうなのね」


 アヤナはしょんぼりした。


「ネイサンは火魔法を頑張っているし、風の魔法剣はすでに知られてしまっているわ。だから、火の魔法剣のほうがいいかもって思ったのに」

「なるほど。一理あるが、火の魔法剣用の剣を作るには時間も金もかかる。難しい」

「もう一本借りられない?」

「試合に持ち込める武器は一人につき一つだけだ。もう一本借りるのは無理だろう」

「役割について考えましょう」


 三人チームはどんな役割分担にするかがペアの時と変わる。


 どんな役割分担をするかはチームごとに違う。


 普通は攻撃役、支援役、防御役。


 だけど、全員攻撃役ということもあれば、全員が防御役というのもある。


 組み合わせは多種多様。


「俺が攻撃役、ルクレシアが支援役として遠距離攻撃、アヤナが防御役だろうな」

「そうね。でも、普通じゃない? もうちょっと何かない?」

「武器を扱えない二人が前に出ることはできない」

「私は盾魔法が使えるわ。盾として前に出られない?」

「一人でベルサスとカートライトとアルード様の攻撃を全部受けられるのか?」

「無理! それなら結界にするわ!」

「そうなると、次に三人が狙うのはルクレシアだ」

「結界を張るわ!」

「結局、俺に来る。さすがに三人ではまともに戦えない。逃げるしかない」

「そうよね……」


 三人で考え込む。


「ルクレシア、何かない?」

「意表をつくのは大事だけど、役割については普通でいいと思うわ。戦闘中は状況に合わせて臨機応変でいいでしょう?」

「そうね」

「そうだな」

「自分の扱える能力をもう一度見直しましょう。アヤナは防御魔法の強化が必須。ネイサンは同時撃ちの練習よ」

「さすがルクレシアだ。見抜かれていた」


 ネイサンは連続撃ちをできるけれど、同時撃ちができない。


「二つ同時に撃てるといいわ。ベルサス様とカートライト様に攻撃できるでしょう?」

「四つじゃなくていいのか? アルード様や拠点攻撃も必要だ」

「理想だけど難しいわ。二つでもいいのよ。とにかく撃てるように」

「二つならできなくはないが苦手だ。ずれる」


 ずれたら同時撃ちではなく連続撃ちになってしまう。


「二つでいいわ。無理をしなくていいから練習して」

「わかった」

「私はちょっとだけ調べることがあるから、二人は塔で練習していて」

「了解」

「先に行っている」


 アヤナとネイサンは練習塔に向かった。


 私が向かったのはお父様の部屋だった。


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