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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第一章 

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14 次の回



 翌日のランチタイム。


 アルード様とそのグループもランチピクニックに参加したいと聞いた私のグループメンバーは喜びの声を上げた。


「来週の同じ曜日にしようと思っているの。場所についてはもう一度よく考えないといけないわ。アルード様のグループも一緒だと人数がとても多くなるわ。敷物にしても占領するような感じになってしまわない?」


 アルード様もそのことは気にしており、参加する人数に制限をかけると言ってくれた。


 こちらの事情も考えてのことなのでありがたい。


 だけど、参加したくてもできない人がいるのは可哀そうであり、残念な点でもある。


 この部分をなんとかできないか、良い案がないかを全員で考えてみたいことを話した。


「そうですね……できるだけ全員でしたいですよね」

「でも、芝生の上を占領してしまいますよね」

「できるだけ詰めて敷物を置いたり、座るとか」


 アルード様のグループと一緒にランチピクニックを楽しむこと自体は問題ない。


 敷物や座る場所が詰め詰めの状態でも、むしろ男子との距離が縮まって話やすいということで、歓迎の意見が多かった。


 でも、アルード様のグループが同じように思うかはわからない。


 同じように女子生徒と交流する機会として楽しんでくれるならいいけれど、場所が狭いことに不満を感じるかもしれない。


中庭を占拠することを快く思わない可能性もある。


 お弁当を持ってきたくない人もいるかもしいれない。


 だからこそ、アルード様が先に参加人数を調整すると言ったのかもしれなかった。


「この件についてはベルサス様が担当なので話し合うことになっているの。だけど、こちらのグループとしてどうしたいか、どんな案が出ているかということはまとめておかないとね」


 続々と出る意見は不安な点ばかり。


 解決するための案が出てこない。


「困ったわ……」


 私がそう言った時だった。


「私に案があります」


 レベッカが発言した。


「場所を二カ所にするのはどうでしょうか?」


 中庭だけにすると、さすがにスペースが足りないかもしれない。


 そこで別の場所と合わせて二カ所で開催する。


 そうすることで中庭に参加者が集中するのを防ぐという案をレベッカが説明した。


「さすがレベッカ様です!」

「そうしましょう!」


 これで解決したかのうように思えるけれど、私もその方法については考えていた。


 言わなかったのは、別の問題が起きることがわかっているから。


「その案は私も考えていたのよ。だけど、その場合は参加者を二つに分けないといけないわ。片方の場所だけ希望が集中すると困ってしまうのよね」


 アルード様のグループを二つに分けた場合、アルード様とベルサス様とカーライト様は必ず一緒になる。


 女性に大人気の三人がいるほうの場所でランチを食べたい希望者が絶対に多くなる。


「全員の希望通りにしてあげたいけれど、無理だと不公平になってしまうでしょう?」

「くじ引きで決めるのはどうですか?」


 レベッカが提案した。


「運次第です。何度も開催すれば、いずれ自分が希望する場所になるのでは?」

「そうですね!」

「くじ引きで!」


 レベッカの案に賛成する意見が次々と出た。


 堅実な案なのは確か。


 でも、他に何か方法があればと思ってしまう。


 頭をフル回転させ、名案を思い付き、皆で楽しい時間を過ごしたい。


 誰もが笑顔になれる幸せなひと時、魔法学校での素敵な思い出になるようなイベントにしたかった。


 何か……何か思い出すのよ! この世界のことでも、そうでないことでもいいから!


 次の瞬間、私は知り合いに見せられたスチールを思い出した。


「質問があるの。アンケートよ」


 全員の視線が私に集まった。


「得意な魔法について聞くわ。風魔法が得意な人は?」


 すぐに手が挙がった。


 少ない。


「次は水魔法よ。得意な人は?」


 まあまあいる。


「土魔法が得意な人?」


 たくさん。


 土魔法は魔法使いの中で最も得意な者が多いと言われているだけある。


「氷は?」


 レベッカが手を挙げた。


 特級クラスだけに個人能力に対する期待は大きいけれど、他には一人しかいない。


 希少ということ。


「氷が少ないわね……」

「氷よりも水の人が多いから」

「氷を使うことがあまりないから」

「火を消すなら氷よりも水だし」


 水魔法は汎用性が高い。


 幼い頃から水魔法の練習を始める者が多く、そのまま得意になっていくからこそ、似通った属性である氷魔法の使い手が育ちにくいのではないかと感じた。


「ありがとう。私のほうでもう少し考えてみるわ」

「火、雷、光については聞かなくていいのですか?」


 レベッカが質問してきた。


「とりあえずだから」

「もしかして、得意な属性で場所を分けるとか?」

「ああ、そういう手もありますね!」

「反属性同士の者が同じ場所にならないようにするってことですね」

「火、雷、光で一カ所、風、水、土、氷でもう一カ所に集まるということですね」

「待って! 風と氷は反属性よ?」

「そうだけど、火がいるほうと一緒にするわけにはいかないわよ」

「火と氷より、風と氷のほうがましね」


 憶測から話が進んでいく。


「待って。アルード様のグループの事情も聞かないとだし、ベルサス様と話し合ってみるわ」


 私はレベッカに顔を向けた。


「話し合いがどうなるかわからないけれど、二カ所になる可能性もあるわ。そうなると、私だけで指示出しをするのは無理でしょう? だから、レベッカを私のグループのサブリーダーにするのはどうかしら?」


 サブリーダーに推薦することで、レベッカへの信頼を示したい。


「私がサブリーダーですか?」


 レベッカは驚いていた。


「ええ。レベッカはいつも冷静だし、任せても大丈夫だと思うの。私が不在の時、皆をまとめたり支えたりしてほしいのだけど、どうかしら? 無理にとは言わないけれど」

「ぜひやらせてください!」

「皆の意見も聞くわ。レベッカをサブリーダーとして認める場合は拍手をしてくれる?」


 すぐに全員が拍手をした。


 これでレベッカは私のグループのサブリーダーになった。


「レベッカ、これからもよろしくね」

「はい! とても嬉しいです!」


 レベッカへの期待と応援を込めて拍手をすると、メンバーたちも強い拍手で応じてくれた。


「ランチタイムの話し合いはここまでにしましょう。ランチを食べずに教室に戻るわけにはいかないわ」

「そうですね」

「大変、時間が!」

「急いで食べないと!」

「こういうのも、いつもと違っていいかもね?」


 急いで食べることも楽しめる。


 そんなメンバーと一緒にいられることを、私は幸せだと感じた。


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