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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第四章

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130 喜びを分かち合って



 私とアルード様のペアが対戦する順番になった。


「攻撃が当たっても大丈夫だ。絶対に痛くない。ひるむな。その様子で減点されないように注意だ。どのような状況によっても私が全力で支援する。強気でいい」

「はい」


 準備時間にアルード様が魔法をかけながら教えてくれた。


「落ち着いていけ」

「はい」

「戦闘開始!」


 開始した瞬間、アルード様が巨大な結界を張った。


 私たちの拠点があるほうではなく、相手チームの拠点があるほうに。


 ようするに、相手の拠点と対戦相手の二人を一つの結界内に閉じ込めた。


 当然のことだけど、対戦ペアはアルード様の結界を内側から壊そうと試みる。


「いつでもいい」

「はい」


 私は深呼吸すると、上級魔法の詠唱を始める。


 邪魔をする者はいないので、長い詠唱を中断される要素は一切ない。


 私とアルード様は一緒に特訓してきた。


 その成果を見せたい。


 私の詠唱がほぼ終わると同時にアルード様が結界を消した。


「焼き尽くせ!」


 結界があったのとほぼ同じ範囲に火の上級魔法が発動する。


 激しく燃え上がる炎は美しくもあった。


 相手の拠点の床の色が一瞬で変わり、対戦相手がつけていた生身へのダメージを身代わりで受けるペンダントが壊れた。


 オーバーダメージを防ぐため、すぐに私は上級魔法を消した。


 魔法への支配権が残っている状態だからこそ、それができる。


「そこまで! 勝負はついた!」


 私とアルード様の勝利が宣言された。


 結界魔法と上級魔法で終わり。


 呆気ない。


 でも、圧倒的な差をつけて勝利したのは心象として良いはず。


「チートじゃない?」


 アヤナが呆れていた。


「やはり尋常ではなかった……」


 ネイサンはがっくりとうなだれている。


「ちゃんとアピールしたわよ? 攻守で別れているし、タイミングも魔法の範囲もアルード様と私で合わせたわ」

「タイミングを合わせて結界を消したのはアルード様でしょうに!」

「むしろ、最初の支援魔法はいらなかったのでは?」


 ベルサス様が指摘した。


「減点?」


 イアンがそう言うと、


「上級魔法が失敗したら、支援魔法がないと困るわよ」


 エリザベートが反論。


「そうだな。上級魔法だけに必ず発動するかはわからない」


 カートライト様が補足。


「この方法は強すぎるよ。ルクレシアの上級魔法が発動したら勝てないかも?」

「結界内に閉じ込められている間に強力な防御魔法や別の結界を張ったらどうかしら?」


 レアンとマルゴットが意見を出す。


「防御力があるチームなら防げます」

「ベルサスなら防げる」


 ベルサス様とカーライト様は真剣に私たちのペアと当たった場合について検討。


「光魔法の使い手がいるペアが有利よね」

「そうだな。だが、上級だ。自分へのダメージは極限まで少なくできるよう対策したほうがいい。魔物討伐ならともかくテストに命を懸けたくない」


 アヤナとネイサンも同じ。


 私たちの真似をするペアもいるかもしれないので、じっくり考えることは大事だった。


「ルクレシア」


 アルード様が微笑む。


「大成功だな」

「そうですね」


 次の瞬間、アルード様が私を抱きしめた。


「一緒に勝つことができて嬉しい」


 私は一瞬で硬直状態。


 皆がいる場所で抱きしめられるなんて思っていなかった。


 でも、長くはない。


 あくまでも喜びを表現するためのものだったらしい。


「ルクレシアのおかげだ。労いたい」


 魔法が発動した。


 優しくて温かい。


 この感覚は回復魔法。


 でも、いつもと違う。


 周囲に黄金色の輝きがたくさん溢れているので、上級の回復魔法かもしれない。


 全然疲れてはいないけれど、たくさん労いたい気持ちをあらわすために使ったのだろうと思った。


「また次も頑張ろう」

「そうですね。ところで、今の魔法は回復魔法ですよね?」

「そうだ。私なりにルクレシアを労いたかった」

「ありがとうございます」


 私はお礼を伝える。


「でも、魔力の無駄遣いのような?」

「そうかもしれない。だが、皆で喜べるだろう?」


 私はハッとした。


「それってまさか」

「さすが王子様! 最高に喜べます!」


 アヤナがにやりとした。


「体が軽くなった……」


 ネイサンが信じられないといった表情で自分を見つめる。


「ありがとうございます」

「感謝します」


 ベルサス様とカーライト様は慣れている感じ。


「試合を見ているだけでも疲れるしね」

「足が痛くないわ!」

「効果覿面?」

「私も回復している?」


 皆のおかげでわかった。


「範囲回復だったのですね」

「喜びは皆で分け合ったほうがいい。より多くの喜びが生まれる」


 私だけに回復魔法をかけるのではなく、範囲でかけることによって近くにいる人たちも回復した。


 対戦で疲れている人も観戦で足が痛い人も喜ぶ。


「やっぱりアルード様の光魔法は愛の魔法ですね」

「私もそう思っている」


 アルード様の笑顔が眩しい。


 愛が溢れているようだった。


 ほらね……大丈夫。


 私とアルード様は前に進んでいくことができる。


「素敵です。アルード様もアルード様の魔法も。もっともっと頑張りたくなります!」


 それを証明するように私は心からの笑みを浮かべた。


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