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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第四章

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126 アヤナの帰還



 アヤナが帰って来た。


 ジーヴル公爵領に派遣されたペアは四日間の日程。


 初日は移動日。二日目はベルサス様とカーライト様のペアの試験。三日目はアヤナとネイサンの試験。四日目に帰宅。


 でも、予備日がある。


 ジーヴル公爵領内の魔物が爆増していたのもあって、四日日は四人全員での魔物討伐を行い、予備日に帰って来たことが説明された。


「めちゃくちゃ疲れたけれど、すごい経験になったわ!」


 アヤナは大興奮していた。


「話したいことが盛り沢山なのよ!」

「そんな顔をしているわ」

「とにかく忘れないうちに聞いてくれる?」


 ジーヴル公爵領には多くの魔物がいる。


 ジーヴル公爵は宰相として忙しいので、ジーヴル公爵夫人が魔物討伐の指揮をしている。


 ジーヴル公爵領には氷使いが多くいるので、地上にいる魔物討伐は順調。


 でも、氷使いは浮遊魔法が使えないので、飛行する魔物の討伐が難しい。


 そこで毎年、魔法学院の中間テストとして飛行する魔物の討伐をしてもらっている。


 風魔法の使い手で優秀な者でないと無理だと伝えているので、今年はベルサス様たちのペアとアヤナたちのペアになった。


「びっくりするほど魔鳥がいたわ!」


 今回の討伐対象になった魔鳥は草食系で美味な高級食材になる。


 火や雷での攻撃はできるだけ避けてほしいからこそアヤナやベルサス様たちが選ばれたのもあり、一時的な戦闘不能や捕獲でもよかった。


 倒すだけなら風魔法を範囲で使えばいい。でも、それだとカートライト様とネイサンだけが評価され、ベルサス様やアヤナが評価されない。


 テストなので二人で協力することで魔物を倒すこと、できるだけ現地の事情に合わせた倒し方にすると評価が上がるというのがポイントだった。


 ベルサス様とカートライト様のペアは、浮遊魔法や飛行魔法といった支援系を全てカートライト様が担当し、ベルサス様が氷魔法で魔鳥を倒した。


 夕食にその魔鳥を使った料理が出て、とても美味しいことがわかった。


 次はアヤナとネイサンの番。


 浮遊魔法や飛行魔法はネイサンが担当。


 防御系はアヤナが担当。


 まずは魔鳥を誘導するための魔法攻撃をアヤナが撃ち、固まってきたところにネイサンが上級魔法を使用。


 竜巻に巻き込まれた魔鳥は地上に落ちてしまうため、アヤナが結界内に閉じ込めて捕獲。


 捕獲はジーヴル公爵領の都合なので、結界内に捕獲した魔物の処理についてはジーヴル公爵領の人たちでしてくれた。


「魔鳥は数が多いだけで弱いのよ。大量に捕獲できるから楽しくって」


 領主の息子がいるのもあって、ジーヴル公爵領の対応は最上級。


 至れり尽くせりだった。


「タマゴも高級食材で滋養豊富なのよ。ビビに食べさせるため、タマゴ取りをしようってなって」


 四人で魔鳥の生息地に乗り込んだ。


 カートライト様とネイサンで魔鳥を倒し、ベルサス様が倒した魔鳥を持ち帰るための冷凍保存の作業、アヤナは卵を回収した。


 魔物討伐というよりは、美味な高級食材集め。


 ネイサンが火魔法を使えるのでバーベキューも楽しんだ。


「最高に楽しかったわ!」


 中間テストではなく遠足かキャンプの話のように聞こえた。


「ジーヴル公爵領の魔鳥が増えてきたらまた行こうって。ルクレシアも一緒に行きましょうよ! アルード様や双子も誘うから!」


 すでに友人たちで遊ぶ場所に設定されていた。


「ああいうテストは大歓迎よ! それで、ルクレシアのほうは?」

「ケージャンという都市があるのだけど、その周辺に潜む魔物を討伐したわ」


 私の話を聞いたアヤナは何度も頷く。


「真面目カップルらしいわ。魔法で人々を助ける使命感がひしひしね!」

「ペアよ。カップルではないわ」

「似たようなものじゃない。楽しい思い出になりそうなことはなかったの?」

「魔法の絨毯に乗ったわ。アルード様が操縦してくれて、ケージャンやオアシスの夜景を楽しんだわ」

「素敵! ていうか、魔法の絨毯なんてあるの?」


 構造を説明すると、アヤナは大笑い。


「確かに絨毯ね! 板が挟まっているけれど!」

「魔法の板なんて名称だったら、観光客に喜ばれないわ」

「そうね! 異国風の都市に行けるのはいいなと思っていたのよ。でも、遠いでしょう? 移動で疲れなかった?」

「それは大丈夫」


 行く時は資料を読んで話し合っていたし、帰る時はぐっすり寝ていたことを話した。


「ルクレシアは私のことを図々しいって思っているでしょうけれど、ルクレシアも相当よ。王族三人と同乗しているのにぐっすり寝ることができるなんて。それこそ図々しいわ!」


 否定できない。


「水を克服して良かったわね。おかげでオアシスの風景も楽しめたわけだし」

「そうね」

「期末テストは対人戦よ。いよいよって感じ。負けないわよ!」


 アヤナはにやりとした。


「学院内の予想ではベルサス様とカートライト様のペアが一番強そうって言われているらしいわ。でも、私とネイサンが最強よ! ちなみにルクレシアとアルード様のペアは微妙って言われているわ」


 私は首を傾げた。


「私とアルード様のペアは微妙なの?」

「ルクレシアが攻撃担当でしょう? 当たらないって」


 いくらアルード様がすごくても私が足手纏いになると思われていることがわかった。


「確かに戦闘経験は少ないけれど、王宮で特訓したし……」

「わかっていると思うけれど、うちはネイサンが攻撃担当よ。めちゃくちゃ戦闘経験あるから強いわ」

「そうなの?」

「カートライト様と剣の手合わせをしていたけれど、互角だったわ。身体強化をしたらネイサンのほうが上になりそう。やっぱり複数属性使いは強いわ。近距離攻撃も遠距離攻撃も支援魔法も全部自分でできるのよ? 最高の攻撃役だわ! さすが英雄の子孫ね!」


 同じ攻撃役として、差を感じるしかない。


「悪いけれど、対戦するとしたら私たちが勝つわ! 完勝よ!」


 悔しい。


 何か対策を考えなくてはいけないと思った。


「魔法剣はどうなったの?」

「それはまだ練習中みたい」

「そう」

「なくても勝てるわよ。魔法が強いもの! 風は上級魔法を使えるのよ? 火だって中級魔法を使えるわ! それでいて剣も使えるのよ!」

「剣は関係ないわよね?」

「一学期の期末テストは魔法だけね。でも、二学期は武器も使っていいことになるから」

「そうなのね……」


 ネイサンが強くなる予感しかない。


「ネイサンと組んで本当に良かったわ! 何も心配いらないから楽で仕方がないわ!」


 余裕の表情を浮かべているアヤナ。


 それを見て負の感情が湧いてしまった。


「良かったわね。だけど、ネイサンが活躍するほど、アヤナはすることがなくなるわ。評価されなくて良い成績にならないわ」

「あーーーーーーー!」


 一気に絶望的な表情を浮かべるアヤナ。


 私はざまあみろと言わんばかりの表情を浮かべた。


「その顔、やっぱりルクレシアは悪役令嬢だわ!」

「その通りよ」


 自信満々で答えた。


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