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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第四章

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119 力を合わせた結果



 昼頃、休憩を取ることになった。


 廃墟と化した都市に行くと、未だに古い建物が点在している。


 日影があるので、そこでポケットに入れておいた軍の携帯食を食べることにした。


「魔力はどうだ?」

「結構使ってしまいました」


 攻撃は私の担当。


 ずっと中級で対応していたけれど、範囲魔法ばかりなので魔力がどんどんなくなった。


「水分補給も忘れるな。戦闘には余裕がある。水を飲みながら魔法を使っても怒られない」

「はい」


 ポケットから取り出した水は冷たくない。


 それでも一口飲むと、生き返るような気がした。


「討伐は順調だと思う。だが、魔力の節約を優先しているため、上級魔法を使っていない」

「そうですね」

「兄上がどのような評価をするかは全く分からないが、魔力の節約を最優先にするのはよくない気がする。全力を尽くさず、出し惜しみをしているように見えてしまわないかが気になった」

「魔力の節約を最優先にすると、初級魔法の割合が多くなるはずです。でも、三年生になって初級魔法ばかりでは高評価になりそうな気がしません」

「そうだろう? ルクレシアは中級魔法を何種類も使っている。火だけでなく風も使っているのはアピールになる。評価は良くなるはずだ」


 中間テストで使用する魔法は自分が選択している属性の魔法である必要はない。


 自分が使える魔法であれば何でもよく、適切に使っているか、有効かどうか、成果があるかどうかなどで判断される。


「私は光魔法だからな。攻撃もできなくはないが、攻撃は十分にできている。安全を確保するには支援に専念したほうがいい」

「そうですね。アルード様の魔力はどうですか?」

「長時間使い続けているだけあって消耗はしている。まだ大丈夫だが、ルクレシアのほうが消耗しているだろう。ここでやめることもできるが、どうする?」

「気温も上がっていますしね」

「そうだな。このあとはより暑くなるだろう」


 私は討伐した場所の数を数えた。


「アルード様、六ケ所で討伐をしましたよね?」

「そうだな」

「もう一カ所、残っていますよね?」

「気づいていたのか」


 ケージャンから馬車は南に移動した。


 その位置を中心点として北西、西、南西、南、南東、東方面で討伐をしている。


 残っているのは北東方面のみ。


 そこで魔物討伐をすれば、ケージャンの周辺における魔物討伐が完了する。


「ノルマではない。砂漠地帯のどこで魔物討伐をするかは私たちで考えていい。より多くの成果を上げられるように移動したが、一カ所だけの討伐だけもいい」

「そうですね。でも、アルード様はケージャンの安全につながるような魔物討伐をしようと考えました。そこで、七カ所を設定。順番に回っていたわけですよね?」

「そうだ」

「全部回れるかどうかはわかりません。魔力次第。状況次第です。私に教えてしまうと無理をするかもしれないので、何も言わなかったのですよね?」

「さすがルクレシアだ。完全に見抜かれている」


 アルード様が苦笑した。


「本当は伝えたほうがいいのはわかっていた。なぜなら、ペアでの魔物討伐だからだ。しかし、ノルマではない。ここで終わりにしてもいい。正直に言うと、想定していたよりも時間がかかってしまった」


 一カ所につき一時間と想定。


 移動時間を短縮するため、私を抱き上げて最速移動をした。


 順調かつ魔力があるなら昼までに七カ所の討伐が終わる予定だったが、魔物の集まりが悪かった場所があり、六カ所しか回れなかった。


「このまま終わってしまうと、ケージャンに最も近い場所の討伐を残してしまいます。魔力的に問題がなければ、残った一カ所も回りたいです。最後なので結界のサイズを広めにして魔物を集めやすくするのはどうでしょうか?」

「それはいいが、範囲魔法の対象に全部を収められないかもしれない」

「上級魔法なら範囲を広くできます。それで一気に片付けます」

「わかった。それで終わりにしよう」


 私とアルード様は最後の討伐予定場所に移動した。


 アルード様が大きなサイズの結界を張ると、すぐに魔物が集まって来た。


 予想外だったのは、ケージャン方面から集まる魔物が多かったこと。


「ケージャンの付近に多くの魔物が出現しているという話は聞かなかったが、地中にかなりの魔物が潜んでいたようだ」

「そうですね。では、上級魔法を使います」


 私は詠唱を開始した。


 数えきれない魔物が巨大な結界を覆うように集まっている。


 ケージャンを守るために、人々を安心させるために、魔物を一掃したい。


 私の魔法でそれができる。


「燃え尽きろ!」


 私の強い気持ちは魔法の炎に変化した。


 集まった全ての魔物を包み込んで消し去った。


「最後が一番多く倒せました!」


 私は達成感でいっぱいだった。


「そうだな。私たちの魔物討伐は中間テストのためだが、ケージャンの人々の命と安全、生活を守るために寄与しただろう。この経験は一生残る。魔物を倒したことを誇りに思える」

「アルード様のおかげです。魔物討伐をする場所の設定が最高でした」

「ルクレシアと一緒だからこそ、全ての場所で討伐ができた。二人で力を合わせた結果だ」


 私もアルード様も笑顔。


 二人の力を合わせて魔物討伐をすることができたと思った。


「兄上、これで終わりにします」

「わかりました。評価対象になるのはここまでです」


 私とアルード様に回復魔法がかかった。


「よく頑張りましたね。討伐場所の設定、討伐方法、討伐成果の全てを評価します。気になったのは、アルードがルクレシアを抱え上げて移動したことです」


 お姫様抱っこはダメってこと?


「そのようにするのであれば、ルクレシアに移動魔法をかける必要はありませんでした。魔力の無駄です」


 アルード様はハッとした。


「最初は違う方法を考えていたので……」

「些細なことですが、魔力を節約すると言っていたではありませんか。見逃さないように」

「心に留めます」

「帰りは私が移動魔法をかけます。アルードはルクレシアを抱き上げなさい。そうすれば、私とアルードの二人分だけで済みます」


 アルード様が私を抱き上げる。


 中間テストが終わっても、お姫様抱っこ。


 安心した気持ちのせいか、なんとなく恥ずかしい。


「かけます」


 魔法がかかった。


 ヴァリウス様に移動魔法をかけられたことはあるけれど、その時とは全く違う感覚。


 物凄い風の存在を背後に感じる。


 全てを追い抜くための力を集め、走り出すのを待っているかのようだった。


「移動する」


 一気に最高速度になった。


 アルード様に必死でしがみつくしかない。


 安心感も恥ずかしさも全部吹き飛んでしまった。


「これが兄上の魔法だ。すごいだろう?」


 すごいどころではない。


 最強の風使いはヴァリウス様だと確信した。



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