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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第四章

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110 五人だけの三学期



 三学期。


 ネイサンは特級クラスになった。


 クラスメイトになったことを一緒に喜ぶはずが、欠席だった。


 アルード様、ベルサス様、カーライト様、イアンとレアンも欠席。


 というか、特級クラスの男子生徒は一人もいなかった。


「氷竜の捜索に参加しているのよ」


 エリザベートが教えてくれた。


「魔法学院の生徒は三年生の男性か二年生の特級クラスの男性であることが応募条件よ」

「未成年の学生なのに参加しているの?」

「基本的には成人だけど、今年中に十八歳になる人はみなし成人ということで参加できるのよ」


 戦争や魔物の大発生、災害が起きた時などは成人を対象にしたさまざまな募集がある。


 今回は魔物の捜索なので、軍が魔法の実力がある者でみなし成人以上の協力者を募集していた。


 こういった募集に参加した経歴は何をするにも有利になるので、応募できる者はこぞって参加したがる。


「愛国心を示すチャンスでもあるし、評価されるようなことがあれば高身分者や地位の高い人の目に留まりやすいでしょう? チャンスを掴むためにも参加するに決まっているわ」

「そうなのね」

「私も参加したかったけれど、男性のみの募集ではね」

「女性の募集があったとしても、光魔法を使える者でしょうね。土属性なんて募集されないわ」


 マルゴットがため息をついた。


「私だって雷魔法しかないわ。風魔法はイマイチだし、浮遊魔法は練習中だし、移動魔法の効果は低いし……採用されても雑用係になるのが目に見えているわ」


 エリザベートは移動魔法を使える。


 でも、走るのが遅いので、魔法をかけてもあまり効果はないとのこと。


「氷魔法よりもましだけど」

「氷竜に氷魔法は効かないものね」


 レベッカは無言。


 チャイムが鳴り、担任が教室に駆け込んできた。


「ギリギリになってしまった。予想通り女子しかいないが、三学期だ。気を引き締めて勉強に励むように。とりあえず、午前中は自習だ。三年生の男子と二年の特級クラスの男子がいない状態で授業をどうするかを話し合うことになっている。ではな!」


 担任が出て行った。


「大変そうね」

「三年生と二年の特級クラスの男子がいないなんて普通じゃないしね」

「二年生の上級以下の男子はいるけれど」

「三学期の期末テストを受けられなかったらどうなるのでしょうか?」

「総合順位の上位を女性だけで独占してしまうかもね?」

「氷竜の捜索に協力したことで留年なんてしないわよね?」

「軍の募集だから大丈夫じゃない?」

「卒業はできると思うけれど」

「それを話し合うつもりなのよ」


 自習は女子五人でたっぷりと話す時間になった。





 お昼。


 今日は久しぶりに五人一緒に食べようとなり、食堂に行った。


 いつのように席取りをしている人が少なく、女子生徒が圧倒的に多かった。


「女子ばかりね」

「男子もいるけれど、なんとなく元気がないわね」

「そりゃそうよ。協力したくても応募できないわけだから」

「実力が足りないって言われたのと同じよね」

「一年生は年齢的にどうしようもないけれど」

「二学期は特級クラスで三学期から上級クラスになった人は悔しいでしょうね」


 アルード様のグループが確保している場所が空いていたので、そこで食べることにした。


 エリザベート、マルゴット、レベッカのグループはいつも通りの場所に陣取っていたけれど、周囲と交渉して私たちの近くの席に移動してきた。


「こういう時こそ、しっかり食事をしておかないとね!」


 アヤナは食堂のランチを堪能する気だった。


「協力している男子たちも昼食の時間かしら?」

「順番に取るのかもね」

「どういう食事を食べるのかしら?」

「捜索隊と同じよね?」

「後方支援だろうし、安全性の高い都市か町の拠点にいると思うわ」

「じゃあ、都市か町にある拠点で食べるの?」

「軍で食事が出る場合もあるけれど、飲食店で食べることもあるわ」

「北方の名物料理を堪能しているかもね」


 予想も含めて話が盛り上がった。


「ねえ、エリザベート。こういう時って女性は何もできないの?」

「できなくはないけれど、学校を休んで手伝いに行く必要はないわ。そこまで緊急ではないし、何かあっても救済対象にならないわよ?」

「そうだけど、何かできそうなことがあるならって思ったのよ」

「ルクレシアの気持ちはわかるわ。女性だって活躍できることがあるはずよ。男性しか活躍する機会が与えられないなんてずるいわ」


 マルゴットは不満顔。


「そうですね。参加できれば経歴で有利になります。今回の募集は男性優遇と同じです」


 レベッカも不満顔。


「捜索だから言えることだわ。討伐だったら大変よ?」

「そうね。氷竜と戦うのは命がけだってこと、忘れないようにしないと」


 私は動揺を隠した。


 全員、氷竜の捜索だと思っている。


 でも、私はアルード様から直接聞いただけに、王太子殿下が討伐命令を受けていることを知っていた。


 それはつまり、氷竜が発見されればすぐに討伐軍としての戦闘が始まる。


 ゲームで氷竜が来るのは三年生の冬休み。


 攻略対象者から犠牲者が出る場合もあるというのが気になって仕方がない。


 今回は捜索だけで終わりますように……。


 とにかく全員が無事戻ってくることを願わずにはいられなかった。


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