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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第三章

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103 友人でライバル



 私とネイサンは友人になった。


 そして、ネイサンは私をライバルにしたいと言い出した。


「火魔法を練習したい。ルクレシアに負けないように。だから、うちへ来てくれないか?」

「練習塔でするってこと?」

「そうだ。もちろん、ルクレシアも俺に負けないように練習してほしい」

「私はネイサンに勝っていると思うけれど?」

「火魔法はそうだが、風魔法は俺のほうが上だ。そこで、ルクレシアは俺の火魔法にアドバイスをして、俺はルクレシアの風魔法にアドバイスをする。そうやって互いに向上し合うのはどうだろうか?」

「悪くなさそうね」


 ゼイスレード侯爵家の練習塔でまた練習する約束をした。





「女連れか」


 練習塔にいたのは赤い髪の男性。


「兄のジェイスンだ。友人のコランダム公爵令嬢だ」

「なんだって?」


 ジェイスンはじろじろと私を見つめた。


「もっと派手な印象だった気がしたが、魔法学院に入学して落ち着いたのか? 美人なのは相変わらずだが」


 それはきっと社交場で着飾った姿の私。


 今日は私的な外出。魔法の練習がしやすい服装なので、印象が違うに決まっている。


「今日は練習塔を使うと言っていたはずだ」

「お前よりも俺の方が優先に決まっているだろう?」


 ネイサンは私のほうに顔を向けた。


「すまない。練習塔は使えない」

「大丈夫よ。コランダムの練習塔を使えばいいわ」

「良かったじゃないか、コランダムに行ける」


 ジェイスンがにやりとする。


「俺のおかげだぞ?」

「関係ないわ。いじわるな兄ではなく私のほうに感謝してね」

「わかった」


 ネイサンが頷き、浮遊魔法をかけた。


「行こう」

「待て!」


 ジェイスンは怒りの表情。


「そいつはゼイスレードで最も出来が悪い。コランダム公爵令嬢は俺と一緒に練習したほうがいいんじゃないか?」

「お断りよ!」


 私はジェイスンを睨みつける。


「だったら魔法で勝負だ。炎の柱を出して、その先が天井まで到達したほうが勝ちというのはどうだ?」

「ダメだ」


 ネイサンが私の肩に手をかける。


「ジェイスンの火魔法は強力だ。すぐに天井まで届く」

「どのぐらい速いの?」

「一分以内だろう」

「最初に出した炎だけでは届かないから、炎を育てて高くするってことよね?」

「そうだ。ゼイスレードはここで練習して競い合う。慣れている」

「まあ、勝てるわけがないか。コランダムで女だからな」


 ムカついた。とても。


「ずいぶん自信があるのね。だったらハンデをくれてもいいわよね?」

「ハンデだって?」

「私は年下の学生よ? 正々堂々勝負して勝ったからといって誇れるとでも思うの?」

「どんなハンデだ?」

「三十秒待って。そのあとで魔法を使ってくれない?」

「なるほど。三十秒の間にできるだけ炎の柱を育てる気だな?」

「私が勝ったらこの場所を譲ってもらうわ。負けたら貴方と一緒に魔法を練習するということでどう?」

「相手にするだけ無駄だ。負けるぞ?」


 ネイサンが私を止めるけれど、勝算はある。


「やってみないとわからないわ!」

「やる気があるのはいいことだ。ネイサン、三十秒数えろ」


 ネイサンはため息をつくと、懐中時計を出した。


「三十秒だな?」

「そうよ。スタートの合図をして」

「スタート!」


 私は自分に浮遊魔法をかけて急上昇。


 塔の半分を過ぎたところで呪文を唱え、炎の柱を出す。


 簡単に炎の柱は天井に到達した。


「まだなの?」

「三十秒経つ前にルクレシアが勝った!」

「意外と早かったわね」


 私は高度を下げる。


「約束よ。場所を譲って」

「インチキだ! 浮遊魔法を使うのはズルだ!」

「浮遊魔法を使うなというルールがあったかしら?」

「ふざけるな!」

「ふざけてなんかいないわ。ちゃんと勝負したのに、負けたからって難癖をつけるなんてみっともないわ。面倒だからコランダムの練習塔に行きましょう」

「わかった」


 私とネイサンは浮遊魔法で上昇して外に出た。


「ルクレシア」

「何?」

「面白かった」


 ネイサンがにやりとする。


「あんな方法を使うとは思っていなかった」

「真面目に相手するのは無駄でしょう?」

「そうだな」

「弟ではなく、弟の友人を練習に誘うなんて性格が悪いわ」

「ルクレシアが美人だからだ。ジェイスンの性格は昔から最悪だしな」

「急ぎましょう。練習する時間が減ってしまうわ!」


 私とネイサンはコランダム公爵邸宅に移動して、練習塔で一緒に魔法を練習した。


「最初にできるだけ大きい火を出したいと思うでしょうね。だけど、曖昧なイメージでは無理だわ。当たり前だけど、練習塔は高さがあるでしょう? だから、目標を決めるのよ」

「目標か」

「階段でいいわ。ほら、あそことか。あの階段の高さまでの火を出すようにしっかりとイメージして。柱でもいいわ」

「わかった」


 私が火魔法を教える一方で、ネイサンは風魔法を教えてくれた。


「風は空気と同じだ。どこにでも空気がある。その空気は全て風になる」

「そうね」

「風を作る時、使いたい場所のすぐ側で作ることを考える。だが、風というのはいきなりあらわれるものではない。広い空間を空気が流れていく。それが風だ。つまり、遠い場所から空気を大きく強く流すイメージをする。そのほうが大きな風を作れる」

「なるほどね」

「ルクレシアは火を煽る時に風を使った。だが、火を高くしようとするあまり、火の幅を狭めるような風にしてしまった。火は空気があれば勝手に燃える。風で火を押すのではなく、大量の空気を送り込むような風にする。そのほうが風で火を育てやすくなる」

「わかったわ」


 私とネイサンは友人でライバル。


 互いに教え合い、競い合い、向上していけると思った。


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