二年生
ティムはもう自分がのろまだと思わなくなった。
一番足が速いと思われた友達もそうは思われない。
なぜなら背中に背負ったドラゴンはティムの物は見るからに重そうで、一番足の速いと思われていた友達のドラゴンはとても軽そうだった。
背負ったドラゴンは卵だったころと違いにぎやかに鳴き騒ぐようになった。
そして、授業の合間に食事の世話をしなければならない。
食べたら自分とドラゴンのトイレを済ませる。
卵だったころとは段違いの忙しさだった。
ティムは自分の背負う箱の中のドラゴンを見る。
くるくるとした金色の瞳がきれいだ。
ティムはため息をつく。
自分が仲間のうちで一番のろまだというのは間違いだと分かったけれど背中に食い込むこの重みは一向に改善されない。ドラゴンはとても重い。いや以前よりもっと重くなったかもしれない。
そして寝る時間以外は箱を背負いっぱなしなのもこれまでと変わらないのだ。
ピーファー時の抜けるような声でドラゴンは鳴く。
随分と周りが騒がしくなって今まで卵だったころの静けさが嘘のようだ。
ドラゴンは日に日に重くなっていく。そしてティムはそれに毎日耐え続けていた。
ティムが歩くとその足音だけで周囲は引いていく。
丸で地面がえぐれそうなとんでもない足音がするのだ。
一度踏み台を使おうとしたら踏み台がつぶれてしまった。
周りを見ればドラゴンは箱から大きくはみ出しているのが見えた。重さにあえいでいるのはティムだけではなく全員が徐々に重くなるドラゴンに根をあげそうになっていた。
毎日重さに押しつぶされそうな気持でティムは学校で勉強に励んでいた。
ドラゴンはティムの後頭部の髪で遊んでいた。加えて引っ張られて思わずのけぞる。
「こーら」
そう言って後ろに手を伸ばしてドラゴンをつつく。
振り返るとドラゴンは何もわかっていない顔で首をかしげていた。
そしてついにドラゴンの重さにてぃみは耐え切れなくなった。
箱に押しつぶされそうになっているとドラゴンは箱から這い出した。
そして、ティムは気が付くとドラゴンに乗せられていた。
「おめでとう、卒業だ」
ドラゴンがティムを運べるようになったから卒業になった。
ティムはドラゴンにあわせた部隊に配属が決まった。同級生たちも同じように配属されていく。
ティムは軍学校を卒業した。