一年生
本日は入学式。
子供たちは一列に並んで先生がもってくる箱を並んで受け取った。
箱は背中に当たる場所だけが柔らかい布でそれ以外は硬い石でできていた。
子供たちは受け取った箱をそれぞれ担いでいく。
「皆さん、箱はすべていきわたりましたか?」
箱を配っていた先生は一列に並んだ子供たちにそう尋ねた。
『はあーい』
子供たちはいっせいに答える。
「では、これからずっと一緒に過ごすこの箱を大切にしてくださいね」
ティムは背負った箱がとても重かった。背中に当たる布は冷たかったけれどしばらくするとティムの背中の温かさが移っていく。
これからすべての生活をこの箱を背負っていかなければならない。
重さでよろめく足を引きずってティムは教室に向かった。
箱は短時間で済ませる入浴以外の時間ずっと背負っていた。ベッドで眠ることもできず椅子の上で眠ることになる。
座学の時間はいい、だが体を鍛える時間はティムはひたすら周りから遅れまくった。
箱の大きさはみんな同じだ。なのに箱の重さによろめいているのはティム一人だった。
ティムはこの学校に向いていないのかもしれない、だけど入学してしまった以上もうやめることはできない。
まるで羽でも生えているようにひらひらと舞うように走っていく同級生を見ているとどうして自分だけがとため息をつきながらティムは重い足を引きずって走った。
いつでも最後尾を走り続けるティムにほかの子供たちは後ろ指を指して笑った。
そして季節は巡り最初に箱をもらった季節がやってきた。
先生が箱を下ろしなさいと授業が始まる前に言った。
お風呂に入る短時間以外ずっと背負いっぱなしだった箱を下ろす。その時はこの今まで開けたことがない蓋がはじけ飛んだ。
そして、細かな破片がティムや他の子供たちの顔に当たった。
箱いっぱいに入っていたのは大きな卵だった。そして卵の上部分が砕けて中からうろこの生えた顔がのぞいていた。
「これが君たちの相棒になるドラゴンだ、三日以内に名前を付けてあげなさい」
先生がそう言っているが子供たちは卵から這い出して来るドラゴンをひたすら見つめることしかできない。
ティムのドラゴンは金色だった。そしてひときわどっしりとした体格をしていた。
まだ飛ぶことのできない小さな翼をパタパタと揺らす。
そして一番身軽だった同級生のドラゴンはひょろっとした体格だった。しかし翼はとても大きい。




