聖都市BIANCO
━二番区の様子はどうなっている━
青白く光るスクリーンに囲まれた部屋に、無機質な声が響く。
「二番区を中心に、不要なゴミの数が安定数を超えています。通過儀礼祭の前に回収するべきかと――」
全面を覆うスクリーンの中に、無数の人間の顔やナンバーが浮遊している。一人の顔が近付いては意味のない記号を羅列して、再びスクリーンの中へ消えていく。
不規則に繰り返すそれを、軽く指で操りながら男は答えた。
━何をもたもたしている。儀礼祭には代表幹部の視察も入るというのに、BIANCOの醜態を晒す気か。……奴らは何をしている。使えないのであれば構わん一掃しろ━
「……いえ、現在Cナンバー所有者が規定値に達していない為、回収者の確保にも難渋している、と報告を受けています」
違和感を覚える程の速さで、写真達が動き出す。
━次の回収候補者を選出しろ。それ以外のナンバーへの保護システムを忘れるなよ。誤認問題はBIANCOの首を絞める事になる━
「了解しました」
――ほんの数十秒で通信は終わった。
遊んでいた男の指がスクリーンから離れたと同時に、逃げ回っていた写真達は光の鎖に掛けられ動きを止めた。
まるで、蜂の巣のようにスクリーンを埋め尽くす光は、更に部屋一体を不気味に光らせる。
「罪人達よ」
その声に呼び寄せられる様に、複数の顔が光の巣をすり抜けて浮上してきた。
――後を追って、漂っていたナンバー達も在るべき写真の元へと収まる。
綺麗に並んだ写真達を相手に、男は冷淡な声で言い放った。
「罪人達よ、奉仕活動の時間だ」