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ライアンの日記②

続・友人ライアンが魔法学園高等部~卒業までを綴った日記です。

やっと日記にリュカス達が出てきます。(笑)

【新レムナリア歴349年4月10日】

本日、高等部に進学した俺。

だが、もう終わった……。全てが終わった……。

もう隣の席に座っている奴を認識した瞬間に俺の華々しい高等部の学園生活は終止符を打ったと言っても過言ではない……。


何で俺の隣の席が、あの有名なリュカス・エルトメニアなんだよ!!

こいつ、去年まで魔道士科にいたじゃねぇーか!!

なに高等部から魔法騎士科に転向してんだよ!!


そもそも魔法騎士科の新入生代表を中等部は魔道士科だったエクトル殿下が行っていた時点で、この可能性を懸念すべきだった……。

確かこいつ、魔道士科では婚約者とセットで大抵はエクトル殿下と一緒にいる事が多かったからな。

高等部に上がる際、魔道士科から魔法騎士科に転向するヤローは多い……。

だからって、よりにもよって俺の隣とか……。

神は俺を奈落に突き落として面白がっているのか!?


とりあえず、昔の事は覚えてなさそうだから、このまま息を殺してやり過ごそうと思っていた俺。

だが、奴はしっかりと幼少期に俺が絡んで来たクソガキだと覚えていやがった……。何だよ!! その記憶力の良さ!!

はぁ? ロナリア嬢に絡んだから、敵認定して覚えていた?

何、その怖すぎる執念……。


もうダメだぁー……。

俺の華々しい高等部での学園生活はもはや消滅したぁー……。




【新レムナリア歴349年5月20日】

高等部に入って魔獣の樹海の上級魔獣エリアで初の実技演習が始まった。

まずは3人程でチームを組めと言われたので、中等部からつるんでいた奴らの方へ向かおうとしたら、何故かリュカスに捕獲されて、そのままエクトル殿下のところまで連行された……。


え? 何で? ある意味、一番望んでいた展開ではあるけれど、それをもたらしたのが天敵のリュカスなのが納得いかない……。

その事をリュカスに聞いたら「僕とエクトル殿下、あまり友人がいないんだよね」って……。お前それ、確実に王族に対しての不敬になるからぁぁぁー!!


何こいつ、どこまで肝が据わってんの?

しかもエクトル殿下の方も「そういう事だから、よろしくね~」とか、朗らかに言っちゃってるし! この二人の関係性がよく分からん……。


その後、何人か俺達のグループに入りたいと言って来た奴がいたが、エクトル殿下がリュカスを理由に丁重にお断りされていた。

何でもリュカスの魔力は、かなり強力過ぎてそれなりに魔力が高い人間でないと一緒に実技演習をする事が難しいらしい。


なるほど。それで中等部最後に学年トップだった俺が抜擢されたと言う訳か……と独り言を言っていたら、リュカスが「違うよ?」と純粋無垢な少年のような顔をして言って来た。

何でも俺は策士的な意味での野心家オーラが一切皆無なタイプと判断されたらしく、エクトル殿下が中等部の頃から自身の側近候補に目を付けていたらしい。純粋に実力重視で、王族の側近を目指している情報をどこからかエクトル殿下が得ていたのだろう……。


いや、その評価はありがたいんだけど、リュカスの言い方ぁぁぁー!!

「良かったね! 単純な性格って思われたから、エクトル殿下のお眼鏡にかなったみたいだよ」って、お前いつまでガキの頃の事、根に持ってんだよ!!

あーあ……。コイツと一緒に組むの嫌だなぁー……。



【新レムナリア歴349年7月19日】

リュカスとエクトル殿下と行動を共にするようになってから、その婚約者であるロナリア嬢とティアディーゼ様とも顔を会わす機会が増えた。

いや、もうロナリア嬢が、小さくてコロコロと表情が変わって可愛いすぎ!!

ティアディーゼ様は、言い方がキツイ方だけど、美の化身っていうくらい女神のような神々しい美しさで拝みたくなるわ……。


俺、このメンバーの中にいていいのだろうか……。

ただでさえ王子みたいな見た目のリュカスと、同じく眩いくらいの輝きを放つ本物の王子であるエクトル殿下と一緒にいるだけで浮いてるのに……。

その上、小動物系の可愛い令嬢と神々しいまでの美少女令嬢まで追加されちゃったよ!


ちなみに本日、高等部初の学期末試験の結果が発表された。

俺の成績は学年全体で19位……。

まぁ、中等部の魔道士科から俺よりも優秀な生徒達がわんさか魔法騎士科に転向して来てんだから、この結果はある程度覚悟していた。

そしてその該当者にリュカスとエクトル殿下も入っている……。


まぁエクトル殿下は高等部の魔法騎士科進級時は主席だったから、今回一位なのは分かる。だが、何故リュカスが3位なんだよ!!

こいつ、中等部は魔道士科だったから魔法学と魔法実技は高得点取れても、剣術はそこそこしか出来ないはずだろ!?


だが俺は、この時ある事に気が付いた。

こいつの婚約者であるロナリア嬢がアーバント家の一人娘だと言う事を……。

すなわち、こいつの将来の義父はあの魔法騎士科に定期的に講師で来る鬼教官のアーバント子爵と言う事だ!!


何だよ、こいつ……。

顔も良くて、魔力も剣術も凄くてオマケに婚約者が小動物系の可愛い令嬢とかって、もう本当嫌すぎだろう……。

オマケに後ろ盾が『炎剣の狼』の異名を持つ初代魔獣討伐精鋭部隊の一人である鬼教官のアーバント子爵って……。しかも気に入られてるらしいし。


神はこいつに何物与えれば気が済むんだ?

こいつに与える前に一個ぐらい俺になんか凄い能力、恵んでくれよぉー……。




【新レムナリア歴349年9月23日】

なんか初等部から、こまっしゃくれた美少女がやって来た……。

何でも彼女はエクトル殿下の母方の従兄妹、つまり現王妃様の親戚にあたる侯爵令嬢で今年12歳になるらしい。

名前はマリエンヌ・コークウェル侯爵令嬢。

ちょうど俺と殿下で昼食を取っている時にわざわざ高等部の学食にやってきたのだが……。


どうやらこの令嬢、幼少期からエクトル殿下をお兄様と言って慕っていたそうで、いつか自分が殿下の婚約者に選ばれる事を夢見ていたらしい。

だが、エクトル殿下は高等部に進学して、すぐにティアディーゼ様との婚約が確定した。その事に納得出来ないと抗議しにきたという。

まだ幼いとはいえ、なんという猛者だ!!


しかし殿下は、昼食後に生徒会の引継ぎ打ち合わせがあると言って、この令嬢の対応を俺に押し付け、逃げて行かれた……。

はぁ!? 何それ!! 俺、全く関係ないんですけどぉ!?

しかもこの令嬢、余程肝が据わってるんだか知らんが、ここからひたすら俺に如何にティアディーゼ様よりも自分の方が殿下の婚約者に相応しいかを語り出した……。

何この状況。俺、もう心折れそうだったんですけど……。

何が悲しくて、貴重な昼休みに幼女のドヤ話を聞かなきゃならないんだ!


とりあえず昼休みが終わる少し前にこのこましゃく令嬢を初等部に送り届けた後、殿下に猛抗議した。

だが殿下は「だってライアンは子供の扱いが上手そうだったから!」と、ちっとも反省してない様子を披露して下さった……。


確かに俺は中等部の頃にバカ兄がやらかした所為で、早々に甥っ子と姪っ子(バカ兄の子供は双子だった)の子守りを同時にやる事が多かったので、子供の扱いには慣れているが……。

それでも納得行かねぇぇぇぇー!!

今度、リュカスがいる時にあのこましゃく令嬢が来たら、絶対に押し付けてやる!!




【新レムナリア歴350年5月14日】

俺は高等部二学年に進級した。

成績の方は、殿下とリュカスに魔法学の勉強のコツを聞いて、何とかもう少し上位に行けないかと相談してみたが、凡人の俺には天才たちの言う勉強のコツが理解出来なかった……。

その事を憐れんでくれたロナリア嬢とティアディーゼ様が、凡人の俺にも分かるように魔法学を教えてくれた。この人達は女神か!!


ちなみに二人にどうやって勉強のコツを見出したか聞いてみたら、二人共それぞれの婚約者から教えて貰ったと言っていた。

すなわち、それはリュカスとエクトル殿下だ……。解せぬ!!


そんな優しい女神の一人のロナリア嬢だが、最近リュカスと手を繋いでいる機会が少なくなったような気がする。

もしや喧嘩でもしたのかと思い、軽く聞いてみたが「そんな事ないよ」と曖昧な笑みで返されてしまった。これは絶対に何かあったな。


だが俺の場合、リュカスに探りを入れると返り討ちにされたり、言いくるめられたりする可能性が高い。

ここはリュカスの更に上を行く腹黒さを持つエクトル殿下に聞き出して貰おうと、一応報告しておいた。殿下なら、恐らく上手く聞き出せるだろう。

その時、俺もちゃっかり聞き耳立てて、あいつの弱みを握ってやる!!




【新レムナリア歴350年6月23日】

リュカスが学期末試験の4日後に行われた剣術大会で準優勝した。

ちなみに俺はこの前日、実家が管理している魔獣の樹海と隣接している領地に昆虫型の魔獣が大量発生した関係で、三日間程学園にいなかった。

俺の得意な属性は地属性なので、地中に潜った魔獣どもを一網打尽にするのに特化している。そんな理由で父上から早急に呼び出しされたのだ。

くそぉ~! 学園内での俺の数少ない見せ場がぁ!!

しかもリュカスに先を越されたぁ……。


ちなみに優勝者はエクトル殿下だったそうだ。

ティアディーゼ様の話しによると、二人の決勝戦はお互いの腹の探り合いという感じでの剣の打ち合いだったらしい。

そしてその戦いを制したのが、リュカスよりも更に腹黒なエクトル殿下だ。

うん。納得の結果だ。というか俺もその試合、見たかったなぁ……。


だが、この大会後、リュカスの人気が更に上がってしまったようだ。

最近、リュカスが歩いているだけで女子生徒が群がり、握手を求めてくるらしい。ロナリア嬢、大丈夫かなぁ……。

まぁ、リュカスが相変わらず、好意を向けてくる令嬢達を冷たくぶった切ってるから心配ないとは思うけれど。

でも最近のロナリア嬢、なんか元気ないんだよなぁ。

エクトル殿下とティアディーゼ様も心配してるから、何かあってもお二人が動いてくれるとは思うけれど、少し心配だ……。




【新レムナリア歴350年9月22日】

夏季休暇が明けて二週間がたった辺りから、何故かリュカスとロナリア嬢が一切手を繋がなくなった。

といういよりも、一緒にいる姿を見なくなった。

昼休みもロナリア嬢は友人令嬢達とお昼を食べているし、リュカスの方も授業後にロナリア嬢を迎えに行かなくなった。


あの二人がケンカか?

だがたまに構内ですれ違うと普通に挨拶はしているんだよなー。

じゃあ何だ? 一緒にいすぎた所為で倦怠期にでも入ったのか?


何にせよ、ロナリア嬢と顔を会わせていない所為かリュカスの機嫌が、すこぶる悪くて鬱陶しい……。

そんなに会いたいなら、会いに行けよ!! お前は乙女か!!

まぁ、顔はある意味乙女顔ではあるけどなー。





【新レムナリア歴350年10月8日】

何か今日は色々な事があり過ぎた……。

今日の魔法騎士科は上級魔獣エリアへの実地訓練がメインだった。


そこで俺とエクトル殿下は、リュカスのとんでもないヘタレっぷりを再確認した。あのバカ、あれだけロナリア嬢に溺愛行動とっておきながら、自分では控え目にこっそりやっているつもりだったらしい。

あんなキラキラ美男子の幼馴染兼婚約者に平然とした友人面で、追い込むぐらい溺愛行動されたら、いくら柔軟で大らかなロナリア嬢でも戸惑うっつーの!!

あいつ、学力が学年3位のくせしてバカなのか?

これには流石のエクトル殿下も呆れ顔だった。


だが大変だったのはこの後だった……。

実は今日、ロナリア嬢の魔道士科も魔獣の樹海の初級魔獣エリアに初等部一年を引率する課外授業だったんだが、キラービーに追われてパニックを起こしたクソガキの所為で、引率していた令嬢を庇って一緒に山道から転げ落ちて捜索部隊が組まれる事態になった。


更に恐ろしい事に二人のもとに上級魔獣のカオスドラゴンが飛来してきて、それを確認したリュカスが後先考えずに二人のもとへ向かい出すし……。

その所為で俺は、その現場から救助隊を呼びに行くのにスゲー走らされる羽目になった。つか、何で初級魔獣エリアにカオスドラゴンがいるんだよ!!


しかも俺が救助隊を呼びに行っている間、リュカスの奴は緊急事態だからと言って、瞬間的に魔力を受け取る為にロナリア嬢と、かなり長い間キスしてたっていうじゃねぇーか!!

何で俺がいない時にそういう事すんだよ!!

くそぉ~!! いいなぁー。濃厚キスシーン、俺も見たかった……。

ちなみにエクトル殿下は、バッチリその状況を見たらしい。

俺、本当に間が悪すぎ……。


その後、問題のカオスドラゴンをロナリア嬢から魔力を受け取ったリュカスが、一瞬で凍らせたんで、ロナリア嬢も一緒に組んでいた令嬢も大事に至らず、無事に救出された。本っ当ーに良かった!


でもなぁー……。

リュカスのやつ、いくら緊急事態だったとはいえ、普通6歳児の目の前で一切の躊躇もなく、ガッツリな濃厚キスシーンを披露するかぁ?

あいつのメンタル、鋼かよ……。

前から思っていたが、リュカスの心臓には絶対に剛毛が生えてると思う!




【新レムナリア歴350年10月10日】

二日前のカオスドラゴン討伐の件での噂が、学園内に変な尾ひれがついて広まっていた。

リュカスがロナリア嬢への愛の力でカオスドラゴンを倒したって何だ?

どっからそんな幼稚な御伽噺みたいな作り話が出たんだ?

まぁ、キスしてロナリア嬢から分けて貰った魔力でリュカスがカオスドラゴンを氷漬けにしたんだから、あながち間違っていないんだが、何か腑に落ちん。


そんな俺は、今日も何故かエクトル殿下の従兄妹であるこまっしゃくれた侯爵令嬢こと、こましゃく令嬢のマリエンヌ様に捕まっていた。

今回はそのリュカス達の噂の真相を聞きたくて、わざわざ高等部の学食にご降臨されたとの事だが……。このこましゃく令嬢、去年の9月から月に一回のペースで高等部の学食に来てんだけど、これ大丈夫なのか?

今年の4月に「中等部にあがったから新しい制服をお披露目しにきた」とか言って、何か恋敵のティアディーゼ様と仲良くなっていたぞ?


つか何で毎回、狙ったようにリュカス達がいない時に来るんだよ!

殿下はいても、すぐに「生徒会が……」とか言って逃げて俺に丸投げだし!


もしかしてマリエンヌ様って高位貴族特有の威圧的な雰囲気の所為で、同級生と馴染めず、友達がいないんじゃないか?

少し心配になって軽く聞いてみたら、真っ赤な顔をして怒った後、そのまま逃げるように初等部の校舎に戻って行った。どうやら図星だったらしい……。

いつも初等部まで送り届けてたけれど、よく見たらお付きの護衛らしき綺麗なお姉さん騎士が慌てて追いかけていく姿がみえたので、多分大丈夫だろう。


でも女の子の場合、13歳でクラスで浮いてるって、きついよなー……。

殿下も従兄妹なんだから、もう少しは気にかけてあげればいいのにー。




【新レムナリア歴350年11月3日】

なんかこましゃく令嬢ことマリエンヌ様が、取り巻きっぽい令嬢数人を連れて高等部の学食にやって来た。

この間、俺が友達がいないのかと聞いてしまった事で、かなり彼女の自尊心を傷付けてしまったらしい……。

だからって3人も友達連れてくんなよ!!


ただ幸いな事にこの時は殿下だけでなく、ティアディーゼ様とロナリア嬢にリュカスもいる全員集合状態だった。

そんな小さな淑女達の目当ては、今話題のリュカスとロナリア嬢の愛の力でカオスドラゴンを倒したという噂の真相だった。

4人とも、目をキラキラさせながら渦中の二人を質問責めにしていた。


その思春期真っ只中な乙女令嬢達からのこっぱずかしくなるような質問にリュカスが、余所行きの笑顔を浮かべて嬉々として答えてやがって、非常に腹が立った。

何よりもかわいそうなのはロナリア嬢だ……。

その間、耳まで真っ赤にして薄っすら涙まで浮かべて、答えるのが恥ずかしくなるような質問の総攻撃を受けていた……。

この年頃の少女達の恋愛に対する興味って、恐ろしい程パワフル過ぎる。


だが俺が気になったのは、質問責めとリュカスのこっぱずかしい返答内容の所為で、恥ずかしさから顔が真っ赤になってしまうロナリア嬢の反応を思いっきり満喫していたリュカスだ!

あいつ、ワザとロナリア嬢が赤面するようなこっぱずかしい内容で返答してやがってた!!

言っておくが、それが許されるのは、お前のその高い顔面偏差値だから許されるんだぞ!?

俺みたいな平凡顔の男がやったら袋叩きにされる案件だからな!!


エクトル殿下もそうだけれど、美男子は絶対に自分の顔面偏差値が高い事を知っていやがる……。

くそぉ~!! これだらキラキラ系美男子は嫌なんだよ!!


ロナリア嬢も大変だよなー。

あのカオスドラゴンの件以来、あからさまにリュカスから溺愛行動されまくってて、学園内でも更に有名になっちゃってるし……。

しかもリュカスの奴、他のヤローへの牽制も兼ねてワザと周囲に見せつけるようにロナリア嬢とイチャイチャしてやがる!!

リュカスに愛されたのが運の付きだな……。

ロナリア嬢、心中心よりお察し申し上げます……。




【新レムナリア歴351年4月21日】

高等部3年になった。

同時にエクトル殿下から側近にならないかと、すぐにスカウトが来た。

ずっと待ちと望んでいた王族付きの魔法騎士の未来が約束された瞬間だが……どうも達成感が薄い。何故だ? リュカスも一緒だからか?


そんな俺の学園卒業後の予定は、2年間は城で公務をされるエクトル殿下に仕え、その後はオークリーフ侯爵家に婿入りという形で臣籍に下ったエクトル殿下にくっ付いて、引き続き側近として仕える流れになっている。


ちなみにリュカスの方は、エクトル殿下と同じく2年後にロナリア嬢と挙式してアーバント子爵家に婿に入る為、殿下の側近を担うのは城勤めの期間のみ。

そもそもあいつ、未だに殿下の側近を何とかして断ろうとしているからなー。

ロナリア嬢と早く結婚したいのは分かるが……。

そのロナリア嬢の方は、お前があまりにもグイグイ行き過ぎるから、逆にこの2年間の猶予が設けられた事にホッとしていると思うぞ?


そんな俺は、本日地獄のような虚しい状況に耐えていた……。

右を向けば自制心をかなぐり捨て、婚約者を妄信的に溺愛するリュカスが。

左を向けば、そのリュカスにつられティアディーゼ様に溺愛行動を始めたエクトル殿下がいた為、昼休憩のこの時間が、最近苦痛でならない!!

二人共! ここに独り身の哀れな友がいる事を忘れないで!!


あと一年間、ずっとこんな感じかよー……。

というか俺、この二年間は学園でも二大派閥と言われている美男子二名と一緒につるんでいたのに、何で一人も言い寄って来る令嬢がいないんだ?

美男子と一緒に行動していたら、普通そのキラキラオーラの加護にあやかれるはずだろ!! 

それすらあやかれない程、俺は世間的にはしょっぱい顔なんだろうか……。

うわー。この二人といると本っ当、自信無くすわー。




【新レムナリア歴351年3月4日】

明後日には、6年間過ごしたこの魔法学園を卒業する。

ちなみに明後日の卒業パーティーだが、エスコートする相手がいない俺は、エクトル殿下の護衛も兼ねて参加する事になっている。


うわー、学園最後のイベントなのに結局この6年間、甘酸っぱい恋が待ち受けているはずの青春的な状況は、俺には一度も訪れなかったわー。

俺、何処で間違ったんだろう……。

中等部につるんでいた奴らは、いつの間にか婚約者見つけて謳歌してたし。


そんなこの6年間だが、色んな事があったようだが、日記を読み返してみると大した事もなかったように思える。

つか俺、日記サボりすぎだろう!!

本っ当、気になった事や嫌な事あった日以外は付けていないよな!!

これじゃ、父上も「もう付けなくていい!!」って啖呵切りたくもなるわー。


それでもこの6年間、リュカスやエクトル殿下と出会えた事は、俺の人生にとって大きな転機だったと思う。お陰で念願の王族付きの魔法騎士には二年限定でなれるし、その後は侯爵となったエクトル殿下に仕えるから将来は安泰だ!


リュカスともロナリア嬢とティアディーゼ様が親友なので、その関係で卒業後も顔を会わす機会が多そうだしなー。

それを喜んでいいのか、嘆いていいのか……俺の中では未だに葛藤がある。


そんな俺は現在深夜1時を回っている状態で途方にくれている……。

五日後には、6年間過ごしたこの愛着ある学生寮を巣立たねばならないんだが、なんと未だに室内の荷造りと片付けが終わっていない状態なのだ。


どうしよう……。五日後にはここを追い出されるのに……。

このままじゃ、いつも学生寮の清掃をしてくれてるおばちゃんに確実に罵倒されてしまう!! あのおばちゃん、何か知らないけれど俺に対してだけ、妙にお節介なんだよなー。

リュカス曰く、俺がだらしが無さ過ぎるから、口だしせずにはいられないとか言っていたけれど、それだけじゃないと思うぞ?


何にせよ、早く荷造りを終わらせないと……。

でも掃除や片付けをやろうとすると、何故か今やらなくてもいい他の事が気になり始めるんだよなー。

そんな感じで今現在、日記を綴っている俺は本当にダメだと思う……。

次回で『ライアンの日記』は最終話になります。

(※日記調ではなく三人称になってます)

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