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ライアンの日記①

リュカスの友人ライアンが学園在学中に綴った日記(中等部編)です。(笑)

日記形式なので、敢えて冒頭段落ちを付けておりません。

ですが、もし読みづらい等のお声があれば対処させて頂きます。

※全三話になります。

【新レムナリア歴346年4月6日】

やっと念願の魔法学園に入学出来た。

今思うと幼少期の俺は、本当にバカな行動をしたと深く反省している……。

昔、我が家が王家から賜った家宝の宝剣を調子に乗って室内で振り回し、自室を壊滅状態にしてしまったあの黒歴史を俺は、一生後悔し続けるだろう……。

まさか振っただけで魔法発動型の剣だったとは知らなかった俺も悪いが、そういう危ない武器を子供の手の届くところに置いておく父上も父上だ!

その所為で13まで、みっっっっちり厳しい教育係三人に俺は指導され、俺の魔法学園への入学は中等部まで先送りにされた……。


だが、俺のメンタルは強かった!

魔法学や剣術のレベルは上がったが、根本的な性格まで教育係は改善出来ず、俺はありのままの俺で今日この日を迎えている。

頑張った、俺! 教育係ども、ざまぁーみろっ!


そんな俺を学園に送り出す父上は、何故か訝しげな表情をしていた……。

父上、そこは誇らしげな表情で息子を送り出すところじゃないのか?

馬車に乗り込む俺に父上からかけられた言葉は「お前……絶対に学園で問題起こすんじゃないぞ? 子供の頃のようなイタズラをしたら、もう許されない年なんだからな?」と釘を刺して来た……。

普通ここは華々しい学園生活を迎える息子に激励の言葉を贈るところだろう!!


だが、その事はもういい……。

今日から念願の学園生活……しかもずっと憧れていた魔法騎士になる為の第一歩を俺は踏み出すんだ!

そんな胸の高鳴りもあり、俺は父上に義務付けられて厭々始める事となったこの日記もこんなに書き綴ってしまった。

今日から俺は生まれ変わるんだ! 

絶対に王族付きの凄腕魔法騎士になってやるぞ!




【新レムナリア歴346年5月10日】

魔法学園に入学してから一カ月が経った。

だが、俺は早くも日記付けに関しては挫折しかけている……。

書くの面倒くせぇーんだよ!! 父上のバカぁぁぁぁー!!


ちなみに学園生活の方は、すこぶる充実している。

俺自身、魔力の高い家系でもあるからか、発動が難しい魔法剣を初日の実技授業ですぐに発動出来た!

先生も「お前、品性は貴族令息として問題大ありだが、魔法剣の素質は凄いな!!」と褒められた。

いや……これ、褒められてはいない?


何にせよ、今学期の俺の目標は、学期末試験で上位10位以内に入る事だ!

父上、見てろよぉ~!!




【新レムナリア歴346年7月18日】

学期末試験の結果が出た。

魔法学、魔法実技、剣術の三項目の総合で順位が決まる。

そして俺はなんと学年5位だった!

まぁ、一番高得点出してたのが魔力が高い家系出である魔法実技だったので、自分の実力と言い張るには少し抵抗があるんだが……。

(ちなみに点数が一番取れなかったのは魔法学だった)

なんにせよ幸先の良いスタートだと思う。

このまま俺は上位を爆走してやる!


ちなみに日記に関しては、面倒なので月に一回しか付けない事にした。

俺は今、将来有望な魔法騎士見習いとして忙しいからな!




【新レムナリア歴346年7月21日】

日記は月に一回と宣言したが、今日少し厄介な事が判明したので書く事にした。

あと四日で夏季休暇に入れる本日だが、本日学園の待ち合わせ広場で、ある男子生徒と女子生徒を見かけた。

どうやら魔導士科の学生のようだが、そいつらは貴族なのにガキみたいに常に手を繋いでいて、魔法騎士科でも噂になっている奴らだった。

女っ気の一切ない魔法騎士科の俺達にしてみれば、学び舎である学園で女と手を繋ぐその男子生徒に対しての殺意と嫉妬が凄い……。


そして俺も本日、初めてそいつの面を見たんだが……。

これが腹立たしいくらい女みたいな綺麗な顔をしてやがるヤローで、隣に手繋ぎ女子生徒を侍らしているにも関わらず、他の女子生徒達にキャーキャー騒がれ囲まれていた。


恐らく手を繋いでいた女子生徒は、奴の婚約者だろう。

その子は嫌な気分にならないのだろうかと、しばらく二人を眺めていたら、俺はある事に気が付いた……。

そいつらは、俺がガキの頃にお茶会で見かけたバカみたいに手を繋ぎまくっていたお花畑コンビだったのだ!


俺は昔、そいつらを揶揄おうと絡みに行って返り討ちにされた事がある。

しかも男の方が、魔獣討伐で王家からの信頼が厚いエルトメニア家の三男で、その事が父上にバレて一週間程、地獄の筋トレ刑にされた嫌な思い出がある……。


確かにうちも同じ魔獣討伐の要である伯爵家だから、エルトメニア家と付き合いがあってもおかしくはないと思うが、そもそも何でうちの方が、爵位が上なのにあっちの方が優位なのか意味が分からん!

だが、後から兄上達に聞いた話だと、昔父上は魔獣討伐の精鋭部隊にいた事があって、その時に現エルトメニア伯爵にシバか……ではなく、お世話になったらしい。


同時にあいつがエルトメニア家の人間だって知ってからは納得した。

なんかあいつ、子供の癖に妙な落ち着きがあってスゲー肝が据わってたんだよな……。

しかも一緒に連れていた女の子は小動物みたいで、かなり可愛かったし。

だから面白くなくて絡んだんだけど……。


だが、俺はもうあの頃とは違う!

いくら連れの女の子が可愛くても、あいつらには関わらない方がいいと今ならはっきりと分かる!

向こうも多分、あの時の事は忘れていると思うから、今後は極力関わらない方がきっと得策だ。

まぁ、学科も違うし、そんな機会はないと思うけどなー。




【新レムナリア歴346年8月27日】

夏季休暇で久しぶりに実家に帰省したら、日記を一カ月に一回しか書いていなかった事が父上にバレて、今日までの一カ月半、地獄の筋トレ&剣術鍛錬を父上だけじゃなくて、兄上達も面白がって俺の事をしごき倒して来た……。


正直、この一カ月半は地獄のような休暇だった……。

学園の体力作りでも吐いた事ないのに久しぶりに吐く程、鍛錬を付けられて俺は身も心もボロボロだ……。

くそぉぉぉ~!! 兄上達、面白がりやがってぇぇぇー!!

父上の暴走しごき、止めろよっ!!

早く学園寮に帰りたいと切実に思った……。


とりあえず日記に関しては、ブチ切れた父上から「そんなに嫌なら、もう書かなくてもいい!!」とのお言葉を頂いた! よっしゃー!!

だが、折角書き始めたので、嫌な事や面白い事があった時だけ、記録に残していこうと思う。

まぁ、嫌な事があった時に書くのは、愚痴を日記にぶちまけてストレス解消が目的になるけどな!




【新レムナリア歴347年4月29日】

俺が中等部二年にあがって三週間程が過ぎた。

同じクラスには去年一緒だった奴が多く、気心知れたメンバーばかりの新学年スタートなので非常に気楽だ。


いつもつるんでいるメンバーとそんな事を話しながら、学生寮に戻ろうとしていた俺達だが、その目にあるバカップルの姿が飛び込んで来た。

あのエルトメニア家三男のリュカス・エルトメニアと、その婚約者のロナリア・アーバント嬢だ……。


あいつらはこの魔法学園では有名で、初等部の頃からずっとガキみたいに常に手を繋いでいる。だがそれには理由があって、常に魔力漏れする体質のリュカスに膨大に魔力が有り余っているけれど使えないロナリア嬢が魔力譲渡を行う為に常に手を繋いでいるらしい。


魔力譲渡って、スゲー体調悪くなるあれだろ?

俺も昔、ふざけた兄上達にやられた事があるけれど、あまりの気持ち悪さに三日間寝込む程のかなり危険な行為じゃないのか?

(ちなみに兄上達は父上に怒られて、鬼教官のアーバント子爵主催の地獄の鍛錬合宿に一週間強制的に参加させられていた。ざまぁーみろ!!)


だがその日、俺らが目にした二人は……なんと四阿でイチャイチャと膝枕をしていやがった!

いくら婚約者同士とは言え、もう少し節度をわきまえてイチャつけよ!!

何なんだよ、あいつら!!

そもそも、そんな婚約者がいる男に言い寄る女子生徒達も頭おかしいだろう!!

少しぐらい魔法騎士科の俺らにも目を向けろよ!!


くそぉ……。いいなぁー。婚約者からの膝枕……。

世の中の人前でイチャ付く全バカップルは、全て滅べばいいと思う……。




【新レムナリア歴347年8月14日】

長兄が当初の予定よりも大分早目に本日結婚式を挙げた。

相手は子爵令嬢で子供の頃からの兄の婚約者だが、あのバカ長兄は順番を間違えて、結婚式よりも先に婚約者を孕ませやがった!!

ソフィー姉様……。清楚で控え目でおっとりとしたした雰囲気で、義弟になる俺達にも凄く優しい人だったんだけど、うちのバカ兄は完全に煩悩で生きているような奴だから、その毒牙には抗えなかったらしい。不憫過ぎる……。


そんなソフィー姉様だが、バカ兄の隣でとても幸せそうな顔をしていたので、俺と二番目の兄は、そのバカ長兄を罵倒する事が出来なかった……。

今日の結婚式だって、わざわざ学生である弟の俺達の夏季休暇の時期に合わせて欲しいと、ソフィー姉様が強く要望してくれたらしい。

悪阻が酷い時期と被りそうだったのにソフィー姉様は、本当に優しい人だ……。

あのバカ兄には、本っっっっっっ当ーに勿体ないっ!!


そんな親戚が大勢集まる場では、決まってお節介なババアが必ず存在する……。

俺と次兄は家督を継ぐ事もない為、未だに婚約者はいない状態なのだ。

二番目の兄ちゃんはともかく、三男の俺は別に急がなくていいだろうが!!

そもそも今の俺には、将来王族付きの魔法騎士になるという野望がある!

婚約者なんか与えられたって、構ってる暇ねぇーよ!!


でも……以前見かけたリュカス・エルトメニア達の事をふと思い出すと、少しだけ婚約者欲しいなぁーと思ってしまう事がある。

膝枕、男のロマンだよなぁ……。




【新レムナリア歴347年3月9日】

本日は中等部の最上級生達の卒業式だった。

卒業と言ってもすぐ隣の高等部の校舎に移るだけなので、あまり実感がなかった。

それでも慕われている先輩達は、暑苦しい後輩達に囲まれ、号泣されていた。

それが筋肉質な先輩なら、そこまで気にならなかったが、中には美男子と崇め奉られている先輩も多かったので、そういう先輩がむさ苦しい筋肉ムキムキのヤロー後輩に囲まれている様は、不憫に思う。

だがそういう先輩は、見た目だけでなく対人スキルも優雅なので、号泣しながら群がるヤロー後輩達にも優しく対応していた。

やはり顔がいい男は中身も男前なんだなー。


そんな俺は本日、いかつい先輩達に囲まれ、バシバシと背中を叩かれまくるという拷問を受けた……。

痛い……。全員ガタイがいい上に上級魔獣を余裕で倒せる人達ばかりの猛者だから、背中が部位破壊されるんじゃないかっていうくらい痛い……。


そんな先輩達は俺に「早く高等部に上がって来い」とか、「ワンコ系の後輩いないと寂しいんだよなー」とか、訳が分からん事をほざいていた……。

ワンコ系って何だよ!! 俺は犬に成り下がった覚えはねぇーぞ!?


そんなもみくちゃにされている最中、ふといつもつるんでいる奴らに助けを求めるように視線を送ると、何とも言えない憐れむ様な目を向けられた……。

俺はこの視線が、どういうものなのか知っていた。

それは少し前に美男子先輩方に俺自身が送った視線と同じものだった。

違う! 俺は断じて男にしかモテないというタイプじゃない!!


目力でそう訴えたが、奴らはまるで打ち合わせをしたかのように綺麗にタイミングを合わせて首を左右に振った。

奴らは、俺を助ける気はなかったらしい……。

何て薄情な友人達なんだ!

その後、俺は先輩達からアホみたいな数の中等部の腕章を押し付けられた……。

これ、どうすりゃいいんだよ!! 下手に捨てられないじゃないか!!




【新レムナリア歴348年6月3日】

中等部の最上級生になった俺は、将来の事を考えてこの一年は必死で成果を残す事を目標に過ごそうと計画している。

一緒につるんでいる奴らも、流石に来年から高等部を控えている身としては、将来の事を考えざるを得ないらしい。皆、必死で学業に専念し始めた。


そもそも俺達の殆どが、貴族令息と言っても次男以下の立場なのだ。

その場合、高等部に上がってから頑張っても遅すぎる……。

何故なら高等部に進学したと同時に優秀な学生の囲い込みが始まるからだ。


俺の目標は王族付きの魔法騎士!

それが無理なら辺境伯お抱えの魔法騎士でもいい。

もしこのまま勤め先が決まらないと、実家の魔獣討伐部隊の一員としてこき使われる運命が待っている……。

父上は人使いが荒い……。そしてその後に家督を継ぐ兄上も父上と同じような性格をしているので、やはり人使いが荒い!

そもそも実家で厄介になる羽目になったら、絶対にあの二人からハンパ者って弄られまくられる日々しか想像が出来ん!!


それだけは嫌だ!! 俺は……俺は絶対に負け組になんてならない!!

勝ち組になるんだ!!




【新レムナリア歴348年3月9日】

一年があっという間に過ぎた……。

正直、この一年間はがむしゃらに頑張るしかなかったので、日記を書いている暇もなければ、日記に書けるような面白い事や腹立たしい事もなかったと思う。

いや、あったかもしれないが思い出せない……。


それぐらい必死だった俺は、中等部最後の学期末試験で一位を獲得した!

よっしゃぁぁぁぁぁー!! これで俺の将来の安泰は確定した!!

たとえ王族付きの魔法騎士になれなくても爵位が高い貴族達は、こぞって俺を欲しがる!! これで勤め先にあぶれる事はない!!


そんな華々しい最後を飾れた俺だが、本日の卒業式では号泣しているガタイのいい後輩達から、もみくちゃにされた……。

何だ、この状況……。

これ、去年見た顔面偏差値が高い先輩達と同じ目に遭ってないか?

でも俺の場合、スマートに対応する事が出来ない程、後輩達が追い縋って来て、なんか制服から色々な物が、ブチブチと引っこ抜かれまくった……。


ちなみに腕章に関しては、一番面倒をみていた後輩が一人いて、そいつが欲しがったので早々に渡した。

だが、それが引き金となり、物凄い勢いで後輩達が俺に群がり出したのだ……。

何でだよ!! お前ら、実技演習でちょっと一緒になっただけの間柄だろ!?

何でそんなに俺を慕ってくるんだよ!!

むさ苦しいヤローに慕われたって嬉しくねぇーんだよっ!!


気が付いた時には、制服の上着のボタンはカフスも含め全て搾取されつくされていた……。あーあ、記念に大事に取っておきたかったのに……。


そんな俺によく目を掛けてくれた中等部教員が声をかけて来た。

「お前、そのガサツな部分を直せば、すぐに王族付きの魔法騎士に選ばれると思うぞ? 高等部に上がったら魔法学や実技はもういいから、社交マナーを徹底的に身に着けろよ~」って、どういう意味だよ!?

俺が進級するのは高等部の魔法騎士科~!!

なのに魔法学や実技よりも社交マナー学べって、どういう事!?

もういっそ、登城して令嬢向けにやっている花嫁修業用のマナー教室にでも行けと言う事か?


冗談じゃない!!

俺はありのままの俺で王族付きの魔法騎士まで昇り詰めてやる!!

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