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~貴女に読む物語~

海に囲まれた小さな島で暮らす家族。


娘は明日で7歳になります。


この国では7歳になるとある儀式が行われます。


それが楽しみで楽しみで仕方ない女の子。


儀式にまつわるお話をしてほしいと母にせがみます。


「ねぇ、母さん。いつものお話よんで!」


「ふふっ、いいわよ。むかし、むか~し・・・」

海に囲まれた小さな島国がありました。

人々は平和にのんびり暮らし、諍いもありませんでした。

この世の理想郷とされるニライカナイを信じ、日々敬虔な祈りを捧げていました。


ですが、そんなのんびりした暮らしをしている小さな島国が海を離れた遠くの国々に属国として狙われ、平和が脅かされる日が近づいてきました。


この小さな島国に生まれ育った一人の女性であるディーグは祝女(のろ)と呼ばれ、日々を祈りの儀式を捧げていました。

平和の危機に際し、寝食を断ち、祈りを捧げ続けました。


太陽を司るティーダウ神は日頃からこの島民たちそして祝女(のろ)であるディーグの暮らしぶりを好んでいました。

大国の脅威に晒されることとなるこの小さな平和な島について憐れみました。


そこで、この島で一番祈りを捧げていたディーグの夢に現れ、3つの加護の神器を授けることを祝女(のろ)であるディーグに伝えました。



ひとつは勾玉でできたつけるものを守護するという美しい首飾りのガーラダマ。


神の世界とつながることができるという大きな鏡のカガン。


龍神から生まれたこの世の禍を断つことができるという刀のナジナタ。



この3つを祠に置いてきたこと、これらを守る間は太陽の守護を得てこの国は繁栄するだろうことをディーダウ神は祝女(のろ)に約束しました。



また、この3つの宝はそれぞれの精霊が守ることを伝えました。

精霊は人には姿がみえませんが、精霊と秘宝をお世話する巫女(ユタ)が数人選ばれること、そのときは左手に刺青のようなハジチを証として残し、聖なる力を授けると言われました。


ティーダウ神の寄り代として祝女(のろ)であるティーグを指名し、祈りを捧げる限り、ティーグの血を継ぐ者に祝福を与えることを約束しました。

祝女(のろ)そして巫女(ユタ)が寿命を全うし、理想郷であるニライ・カナイに招かれるその日まで決して乙女たちの純潔な魂が奪われることがないように強く言いました。


奪われた日には奪われた者と奪った者に大きな災いを与えると言葉を残し、ティーダウ神は姿を消しました。



祝女(のろ)・・・ディーグが不思議な夢であったと目を覚ますと、左手の甲に五つ星が刻まれていました。

あわてて、夢でみた3つの祠にいくと、ガーラダマ、カガン、ナギナタがそれぞれありました。



そうして、ティーダウ神から授けられた3つの神器を守り、崇めるために小さな島はナーファ王国がつくられました。


ティーグは国の権力であった男にナーファ王の立場を任せました。

そしてティーグ自身はティーダウ神の寄り代としての祝女(のろ)として、ティーダウ神と3つの神器への祈りのために捧げることとしました。

ナーファ王もティーダウ神の教えを伝え、これらを守ることを王国民に伝えました。



ガーラダマ、カガン、ナジナタが奪われないよう、秘密裏に城に置くものは精巧なレプリカをおき、宝はそれぞれ3つの祠をそのまま聖域として祀ることとしました。

城では祝女(のろ)が3つの神器のレプリカを通して祈りを捧げることとしました。


また3つの神器を守る聖域をウガンジュと名づけ、精霊に使える者として巫女(ゆた)が守ることとなりました。

ウガンジュを守る巫女(ゆた)たちは神器を守る精霊を迎えるウンケーの儀式、精霊を送るウークイの儀式を行い、日々祈りを捧げ続けました。

王国民たちはなにかあれば巫女(ゆた)に相談し、巫女(ゆた)は精霊の言葉を聞いて人々に伝えました。巫女(ゆた)に対して王国民は敬意を払いました。


こうして、3つの神器を守ることで島の海流が代わり、外からの船を寄せ付けることができなくなり、平和は守られることとなったのです。

ナーファ王国民の者が漁業などにでて荒れた海流に巻き込まれたときは、髪を海に捧げれば落ち着きました。

ナーファ王国民はますますティーダウ神の寄り代である祝女(のろ)と3つの神器を守る巫女(ゆた)たちに祈りを捧げるようになりました。


こうしてナーファ王国は小さいながらも平和でおっとりとした時間を長く過ごすことができるようになりました。


しかし、これを面白く思わなかったのは外の国々です。

自然の要塞と化した海流があるため、攻め入ることはできませんが、小さな小舟でなんとか潜り込むと神、そして精霊の言葉を聞くことができる巫女(ゆた)を攫おうとする事件が多発しました。


巫女(ゆた)の左手の甲にはティーダウ神の祝福の証である五つ星のハジチが刻まれているため、外の国の者でも見分けるのは簡単でした。


そのため、王国民のすべての少女が7歳の誕生日を迎えると巫女(ゆた)にあらわれるハジチの印を模したものを左手に刻むようになりました。

すべての女性にハジチがあれば、誰が祝女(のろ)か巫女(ゆた)か外の者にはわからないからです。


ハジチの印は泡盛で墨をすり、それを手の甲に模様を描いてから針に墨をつけ、上から縫い針を束ねて突くため激痛を伴いました。そのため、指から小さな模様を少しずついれていくことにしました。

激痛を伴うことではありましたが、ハジチをすることは王国民の女性のすべての憧れである巫女(ゆた)とお揃いとなるため、大変誇らしいことでした。



手の甲に最後の模様をいれる時期になると、巫女(ゆた)に選ばれた少女にはいつの間にか五つ星のハジチの印が現れます。

少女たちは自分の手の甲に五つ星が現れるかどうか心待ちにする日々が続き、現れなければがっかりしながらも好きな花や流行の形を刻むことで成人とみなされました。



王国民のすべての少女が手の甲に刻むようになってから、巫女(ゆた)の証を一見しただけではわからなくなったことで守りやすくなりました。


また、王国民以外は刺青という文化を忌み嫌っていたため、巫女以外の少女も含めて人さらいされることが激減しました。

仮に人にさらわれても手の甲に刻まれたハジチによる守護によるお導きからなのか、遠く離れた外の国で発見されたときでもハジチを証拠に無事にナーファ王国に戻ることができるようになりました。


ナーファ王国はティーダウ神のお導きであると大変喜びました。


しかし、祝福を狙った少女拐いは時々起こるため、ウガンジュの周辺には魔よけとして石敢當という文字を刻んだ石碑や石標を置きました。

さらに王国民にはT字路の突き当たりや三叉路に悪霊が横行すると言い伝え、ウガンジュ周辺だけでなく、民家の周りにも設置するよう伝えることでウガンジュの場所がわからないようにしました。


そうして人々は加護を与えてくれる神に感謝して、幸せに暮らすのでした。


「ありがとう、お母さん!明日のイジチ、楽しみだなぁ~!私もユタに選ばれるかなあ?」


「どうかしらねぇ。なれたらいいわねぇ。」


「うん!でもとっても痛いんでしょ?ちょっと怖いな」


「ふふっ、特別に黒砂糖を用意しているわ。甘いものを舐めながら気をそらせないね。」


「ありがとう!がんばるね!!」


そうして少女は6歳の最後の夜を終えるのだった。

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