エピローグ
――― 広い世界のどこかの、とある国に、ひとりの王様がおりました。
王様は昔、この国に生まれる前には、別の国の人だったそうです。
そのためか、民から人気がどんなにあっても、優しく美しいお妃様や可愛い王女様に恵まれていても、時々、憂鬱そうな様子をなさいました。
生まれる前にいた国に、残してきた人たちを心配されていたのです。
王様はお妃様に相談して、残してきた人たちのことを、夢で見てみることにしてみました。
枕の下に、気になる人の名前を入れて、神様によくよくお祈りするおまじないです。
おまじないの効果か、王様の願いの強さか、その晩、王様は望む夢を見られたのでした。 ――――
そして、また朝がやってきます。
「国王様、起きてくださいませ」
「上に乗らないよ。それから、パパと呼びなさい、チイちゃん」
「けれど国王様」 王女様はツン、と澄まして言いました。
「もう、ひばりが朝を告げてから、ずいぶん時間が経ちましたわ。お日さまは、もう天高くまでお出ましですわ」
「おっといけない」 王様はがばり、と起き上がります。
「朝の陳情をきかなきゃ。会議も入っているぞ。
ああ、忙しい。どうして誰も、起こしてくれなかったんだろう」
「それは国王様、今日が年に1度、国王様がリアだけのお父様におなりの日だからですわ」
王様は、ハタと気づきました。
そうです、年に1度、収穫のお祭りの日だけは、お妃様や王女様とゆっくり過ごせる日なのです。
「そうだったね」
「そうです。だからリアと一緒に、ゴロゴロ寝転んだり、お話をしたり、お茶を飲んだりしましょうね」
「追いかけっこやダンスはしないのかい?」
「ダンスは素敵。でも、追いかけっこはこどもっぽいわ」
「そうかね」
「そうですわ」
王様が笑うと、たまっていた涙がぽたぽたと落ちました。
王女様も笑って、王様の首にぶらさがります。
「ではまずはお話ししましょう。国王様が泣いているのはどうして?」
「パパと呼びなさい、チイちゃん」
「泣き虫パパ。どうして泣いておられたの?」
「それはね……」
王様はゆっくりと、話しはじめました。
――― 遠い遠い世界の、鉄の車が走り、大きな機械が空を飛び、火と水を自在に使うことのできる国と、そこに住む人たちの物語を。 ―――
これにて完結です。
読んでくださった方、感想やアドバイスを下さった方、いろいろと教えて下さった方、応援して下さった方。
この物語は皆様の力で書くことができました。 言い尽くせないほど、感謝しております。
どうもありがとうございます! m(_ _)m
『グリム童話は夢を見せない』参考文献
◎ 厚生労働省 自殺未遂患者への対応 救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き
◎ 自殺未遂者ケアについて - 厚生労働省
◎ 日経新聞
一瞬の油断、加害者に深い心の傷 支援難しく
癒やされぬ輪禍 事故の背景(4)
https://r.nikkei.com/article/DGXNASFK2602C_W0A121C1000000?s=5
◎ 気分変調症(持続性抑うつ障害) 『ハートクリニクック大船』
https://e-heartclinic.com/sp/kokoro/yamai_ippan/ippan_kibun2.html
◎ 全心連 『日本のメンタルサポートの現状』
https://www.mhea.or.jp/counselor/counselor_01.html




