プロローグ
―――広い世界のどこかの、とある国に、ひとりの王様がおりました。
王様には、美しく優しく賢いお妃様と、かわいい王女様がいました。
国のために毎日いっしょうけんめい働く王様は、国の皆の人気者です。
けれども王様にも、悩みが2つ、ありました。
1つめは、お妃さまや王女さまとゆっくり過ごす時間が、あまりないことです。
(なにしろ王様は、とっても忙しいのですからね!)
そしてもう1つは、王様がこの国にこられる前に住んでいたという世界に、残してきた人たちのこと。
この国で幸せに暮らすほど、元いた世界の人たちがどうなったのか、気になってしまうようです。
王様は、お妃様に相談しました。
すると、お妃様はこう申しました。
「わたくしの国に伝わる夢見のおまじないを、試してご覧になってはいかがでしょう?」
お妃様はもと、隣の国の王女様でした。隣の国では、気になる人の名を書いて枕の下に入れ、神様にお願いすると、その人の夢が見られるのだそう。
「ただのおまじないですから、本当に効き目があるかは分かりませんけれど」
優しいお妃様を抱きしめ、王様はお礼を言いました。
そして、その晩、早速試してみたのです。
『千景』
元いた世界の文字で王様はこう書き、枕の下に入れ、神様によくよくお祈りして眠りにつかれました。
ところが、王様の夢にまず現れたのは、王様が全く知らない、男の人だったのです―――