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フヨフヨ  作者: 猫田一誠
09 大砂海
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082 中継都市

時は遡り、停戦交渉が始まる数日前。



場所は王国南西部に広がる広大な砂漠地帯、ブリーズランド。


その中央部に位置する大オアシス。中継都市シャハール。



砂漠地帯ではあるのだが、大きなオアシスの周囲は岩場に囲まれており僅かながら緑もある。

そんな貴重なオアシスを守るべく、都市の周囲には巨大な外壁が建造され、いつしかそこは立派な都市となっていた。



ブリーズランドでは石材は豊富だが木材は貴重だ。

都市の建物はその全てが石造り。


派手さはないが堅牢でしっかりとした造りの都市。シャハールの街並みからはそんな印象を受ける。



北上した先の漁村から海路を行けば、魔都を経由せずともアルタヤ・カナン氏族国との交易も可能だ。

中継都市シャハールは、魔都ベルフェレスを除けばブリーズランドにおいて唯一の大都市となる。



ブリーズランドの海岸線沿いには小さな漁村が点在し、オアシス以外にも小規模な集落は存在する。


シャハールはそれらの漁村や集落の中心でもある。

都市部に居を構えていない者にとっては、氏族国より流入する物資を手に入れるには魔都かシャハールで購入する他ない。


ブリーズランドの経済は中継都市シャハールを中心として回っていると言っても過言ではない。

砂漠で最も栄えている都市と言えば魔都ではなくシャハール。これは砂漠の民全員の共通見解であった。




そんな砂漠の大都市を訪れた二人の人物がいた。


その二人は、大人の男性と若い女性の二人。

両者ともに外套にすっぽりと体を覆い、フードまで被っていてその外見は隠されている。


しかしその姿は、砂漠では珍しいものではなかった。

下手に肌を露出させれば、ブリーズランドの強烈な日差しはそこに火傷を作ってしまう程なのだ。



二人は街を歩き、目的の施設を発見する。

それは、仕事の斡旋を生業としている商人の店だった。



「ヨハン?探していたのはここ?」

「そのようです。お嬢様。」


二人の目の前にあるのは商家のようだが、取り扱っている商品を告知する看板に業務斡旋の文字も含まれているのだ。



「私達は路銀が尽きてしまってますからね。ティータ様が戻ってくるまでに宿代くらいは稼いでおかないと。」

「ヨハン、晩御飯代もだよ。私、美味しい物が食べたいの。」


ノルンの要望に、ヨハンは嬉しそうに微笑む。


「では頑張って斡旋業務をこなすとしましょう。」



ヨハンはノルンを伴い、扉を開けて建物に入っていく。


店内には、商品と思われる雑貨が並べられており、店の片隅には斡旋業務と思しき依頼の書かれた張り紙が大量に貼られた掲示板がある。

そして掲示板の前には人相の悪い二人組の男が立っており、依頼の内容を吟味している様子だった。



ヨハンとノルンもまた、掲示板の前に移動して掲示された依頼内容に目を通していく。


短時間で終わるもの。求められる技能が戦闘に偏ったもの。

この条件を満たしていれば、ヨハンの能力であればどのような依頼でも楽にこなせるだろう。


ヨハンは二つの依頼を受けることに決め、掲示物を剥がしとる。



【集落の近くにサンドスパイダーが巣をつくってしまいました。討伐求む】


【デザートウルフの間引き業務。報酬は、討伐数に応じて】


選んだ依頼はこの二つだった。



「おめえ、その依頼受けるのか?仲間は?」


掲示板の前にいた、人相の悪い二人組が声をかけてきた。



「いらん。この程度の依頼、俺一人で釣りがくる。」


ヨハンは面倒だとでも言わんばかりにそっけなく答えていた。

そんな態度が二人組の神経を逆撫でする。



「フン、てめえ外から来やがった野郎だな?砂狼の間引きも砂蜘蛛の討伐依頼も、屈強な魔人族の戦士でも一人では手に余る。」

「そうだぜ?まぁてめえが自殺志願なのはいいが、そこのお嬢ちゃんが路頭に迷うことになるのはいただけねぇ。俺らが預かっといてやるよ。」


二人組はニヤニヤと笑いながら、その片割れがノルンのかぶるフードへと手を伸ばす。



「失せろ。今なら見逃してやる。」


ヨハンの放った一言は、店内の空気を凍り付かせるのに十分な殺気を孕んでいた。

男はノルンへと伸ばした手をピタリと止める。



「おお、怖い怖い。わかったよ、兄ちゃんよ、俺らは退散すっから、そんな睨むなって。」


下品な笑い顔のままに、二人組は店を出ていく。



「ヨハン、今のはなあに?」

「お嬢様の記憶に留める価値もない者達です。お忘れください。」


「ふぅん。」


ノルンの興味は店内に並べられた雑貨へと移り、珍し気にそれらを眺め始めた。



ヨハンは店主に依頼を受けることを伝え、簡単な説明を受けてから二人で店を後にした。



「ねぇ、ヨハン。ティータは?まだ帰ってこないの?」


街を歩きながら、ノルンはヨハンの外套を引っ張っている。



「ティータ様は上空からブリーズランドの調査中です。じきに戻ってこられるでしょう。」




ヨハンはティータとのやり取りを思い出す。



「世界の各地にはデルフィナスの端末施設がいくつかあってな。もしもそれらの中に現在も生きている施設が残っていれば、そこに奴の痕跡が残されている可能性がある。」


ティータの言う、ノルンを狙っているという敵性存在について、ヨハンはいくつかの情報を聞かされていた。



「私も知っていることは少ない。名前すら分からないくらいだからな。言えるのはこのくらいだ。」




曰く、その敵は老化しない。もしくは若さを得る手段を持ち合わせている。


曰く、その敵は少なくとも旧文明の時代に光都デルフィナスに生きていた。生まれがいつなのかは不明。


曰く、その敵の目的は不明だが、光の女神の力を必要としていることは確認済。



ヨハンはティータの言葉を反芻し、考える。


(そしてその敵は、ノルン様を狙っている。ならばノルン様の正体はやはり…。)



ぶんぶんと頭を振る。


(その正体が何であろうと関係ない。俺は俺の運命に寄り添い、付き従うのみだ。)



ヨハンは思考を切り替え、次はティータが捜索中の旧文明の遺跡について考える。



ティータの知る限りでは、旧文明の遺跡は五ヶ所。

ただし、ティータが知らないだけで他にも遺跡は存在するかもしれないとのことだ。



サミュール連邦東部に広がる荒野の何処か。

王国北西部のグランシア山脈の何処か。

王国西部、ウートガルド大森林の何処か。

王国南東部にどこまでも続く南海の何処か。


そして現在調査中のブリーズランドで五つだ。



ブリーズランドの何処かには知られざる三つ目の大都市があり、それは砂に埋もれた旧文明の遺跡を利用した地下都市。

地下の洞窟には巨大な地底湖が存在し、それを水源として過去にベルフェン氏族と敵対した魔人族が暮らしているという。


これは砂漠の民の中では結構有名な噂話だった。

その地下都市にはファラビアという名前もあり、実在するかもわからないのに民には確かに認知されているのだ。



三人はふらりと立ち寄ったブリーズランドに点在する集落の一つで、そんな噂話を耳にした。


それならばと、中継都市シャハールを拠点として調査を行うことになり、現在に至るという訳だ。

調査には時間を要するだろう。シャハールでの滞在費用は必須となる。



ヨハンとノルンはその費用を捻出する為の依頼をこなすべく、シャハールの外門を通り街の外へ。


そんなヨハン達を尾行する二人組の男をヨハンは当然察知していた。



後方の岩陰をコソコソと移動する二つの物体に、ヨハンは小さく溜息を零していた。





場所は変わり、ヨハン達が出て行った方向とは逆の方角となるシャハールの東側には軍勢が集っていた。


王国への遠征に向かう五千の精鋭部隊である。



シャハールでの補給を済ませ、今まさにこれから王国へと向かって出立するところだ。

今しがたシャハールに到着していたヨハン達とは丁度入れ違いになった格好となる。



調査に飽きて一度ノルンの様子を見に戻ろうかと考えていたティータの望遠の魔眼はこの軍勢の姿をしっかりと捉えていた。



「何だあの集団は…?」


ティータは少し離れた場所に着陸し、背中の大翼を隠すと、堂々と軍勢に向けて歩いて行った。




「なぁ、なんか変な女がこっちに歩いて来るんだが…。」


ティータの姿を軍勢側も視認したようだ。


「あれ?この日差しの中、外套も羽織ってねえぞ!?」



ティータの服装は、一般的にパンツドレスと呼ばれている服装に酷似していた。色は黒に近い紺。

所々にレース編みの部分があり、白い肌が露出している。


砂漠の常識で考えれば、いかれた格好だと指摘されてもおかしくない。

強烈な日差しは直接肌に当てれば火傷を引き起こすのだ。


実際には高レベルのティータの肉体は、どれだけ日に当てようと火傷どころか日焼けすらしないのだが。



通常であれば、慌てて駆けより外套を羽織らせるところだろう。

だが、ティータの姿を見た戦士達は、その美しさに魅了され、そんな気遣いなど頭になかった。



「おいおい、姉ちゃんよぅ。そんな恰好で誘ってんのかぁ?」


ティータは品のない笑い顔で近づいて来る男を完全に無視して付近にいた別の戦士に質問する。



「お前達は何だ?どこかで戦争でもやるのか?この集団の目的を答えられる者はいるか?」



その質問に対する返答は、大きな笑い声だった。



「ふむ。木っ端共では話にならんか。」


ティータは戦士達を無視して視界の正面にある大きなテントへと歩を進める。



「ちょっと待てって、姉ちゃんよ。無視はねぇだろ?」


そう言ってティータの腕を掴もうとした戦士の身体がふわりと宙に浮きあがる。


「うおっ!?何だこりゃあ!!」


そのまま横殴りの突風が浮き上がった戦士にだけ吹き付け、その体を近くの岩に叩きつけた。



「私に触れるな。」


ティータは岩の下で気絶する戦士に冷たく言い放ち、さらに歩を進める。



「この女、風魔術を使うぞ!!」


戦士達は一斉に臨戦態勢をとる。

しかしティータはそれに構わず前方の大きなテントへ向けて歩く。



「何の騒ぎだ!!」


丁度、指揮官らしき人物が物音に気付いて表に飛び出してくる。



「お前がこの集団の指揮官か?今すぐこの集団の目的を言え。面倒だから返答が得られないのであれば今すぐ全員吹き飛ばすことにする。」


面倒になってきているのはティータの正直な気持ちだった。



それに対して指揮官は意外にもあっさりと情報を吐き出した。


「俺達は魔都からやってきた部隊だ。魔王陛下直々に王国に攻め込むことを命令されている。で、俺らに何かあるのか?姉さんよ?」



ブリーズランドでは、魔人族の最大勢力、ベルフェン氏族の長である魔王に逆らうことは死と同義である。

魔王の名を出した指揮官は自分達の優位を確信しているのか、横柄な態度を隠そうともしない。



「王国か…。」


しかしティータは魔王の名を出されてもまったく動じることはなく、王国という言葉からとある赤毛の少女の事を思い出していた。



「ふむ。あの小娘、何だったか。ママ?いや違うな。ハナだったか?まぁいい。」


ティータが思い出していたのは自分達が愛用している鑑定と探知を阻害する魔道具と見た目を偽る為の変色の魔道具を提供した者達だ。



「借りを返す、というほどのことでもないが、これも縁か。」



ティータは軍勢の指揮官に向けて告げた。


「ならお前達は今すぐ魔都とやらに引き返せ。そして魔王にはこう伝えろ。つまらないことをするようなら殺しに行くぞ。とな。」




再度、盛大な笑い声が響き渡る。


(あぁ、面倒だな。吹っ飛ばすか。)


イラついたティータがそのように考え、実行しようかとしていた矢先に指揮官が話し出す。



「あ~。笑わせてもらったぜ。で、だ。魔王陛下にすらその尊大な物言いのお姉様は一体何者なんすかねぇ?」


指揮官は鑑定板をティータへと投げてよこした。

鑑定結果を確認させろということらしい。


(どうせこの後吹っ飛ばすんだ。別に構わんか。)


そう考えたティータは一時的に鑑定阻害効果を解除する。

そして戦士達はどう返答しようと吹っ飛ばされることが決定してしまっていた。



「私もまた魔王の一人だ。王国には知り合いがいるから攻め込むのはやめろ。まぁ言っても無駄か、どうせ吹っ飛ばすしな。」


そう言ってティータは鑑定板を指揮官に投げ返す。



にやついた表情のまま、指揮官は鑑定板を受け取り、その内容に目を通した。




「!!!!?」



何か恐ろしい物を見たような顔になった指揮官が腰を抜かして地面にへたり込む。



バサッ!


それと同時に、ティータの背中には美しく巨大な一対の虹色の翼が出現していた。





同時刻、シャハールを出て少し西に進んだ辺りで二人組の男がヨハンにボコられた状態で砂の上に転がされていた。



「恨まれても面倒だ。殺しておくか。」


ヨハンのそんな呟きにボコられた二人は震えあがる。



そして東の方角から轟音。

シャハールの東側に巨大な竜巻が見えた。



「ひっ、ひゃあぁあ!」


ボコられた二人は這うようにしてシャハールの逆側、西へ向けて逃走する。


どうでもよくなっていたヨハンはそれを見送ると振り返り、巨大な竜巻を眺める。



「さて、どうするか…。」


竜巻は間違いなくティータの仕業。ヨハンにもそれは分かっている。


「ヨハン、ティータが帰ってきたみたいだよ?」


ノルンもそう言うが、ティータとの取り決めで彼女の戦闘中はむしろノルンを連れて離れることになっていた。



「近くの岩場に隠れて様子を見ましょうか。」


それは戦闘の余波による砂塵を警戒しての発言だったのだが、言い終わる前にあっさりと竜巻は消失していた。



「ティータの竜巻、消えちゃった。」

「あれ?本当ですね。」


そして次の瞬間には、飛翔してきたティータが翼を大きく羽ばたかせて二人の傍に降り立つところだった。



「ティータ!!」


ノルンはティータに飛びつき、ティータはそのままノルンの頭を撫でる。



「ティータ様、調査の方はよろしいのですか?」

「ん?何も見つかってないんだが、面倒になってな。一杯やろうと思って戻ってきた。」


一見、ダメダメな調査結果とダメダメな調査員の言葉に思えるが、ヨハンにはそうでないことは分かっていた。



ティータが上空を飛び回り、高精度の魔眼をもってして見つからないのなら、地下都市の入り口は上空から視認できる状態にないということだ。



「で、お前たちはこんなところで何をやっているんだ?」



三人はお互いの現状について情報交換を行う。

まずはティータが吹っ飛ばした戦士達から入手した情報を提供する。


「王国に向けて魔人族が軍勢を?おかしな話ですね。普通に考えて魔人族が王国とやり合えるとは思えません。国力が違いすぎる。」

「私にはそのあたりのことはよくわからんが、王国にはあの変な小娘がいるだろう?だから一応吹っ飛ばしといた。」


「そういうことですか。」


ヨハンは竜巻の理由を理解した。


そしてヨハンはセロやナナ達のことを味方だと思っていた。

ティータがその彼らの為に行動してくれたことは嬉しかった。



「次はお前達だ。なんでまた都市の外に出てる?」

「ティータ様、俺達は一文無しなんですよ?宿代や食事代を稼ごうと依頼を受けて来たんですよ。」


「何!?私達が文無しだと!?私が昨日飲んだ酒は何だったんだ!?」


「ティータ様は飲み逃げ、私とノルン様は食い逃げということになります。追手は私の幻覚魔術でまきました。」


ティータは衝撃を受けているようだ。

開口したままわなわなと震えている。



「飲食代としては完全に不足しておりましたが、ティータ様が釣りはいらんと言って店主に渡したお金が最後でした。」


これはブリーズランドに移動する途中で立ち寄った王国内のとある宿場町の飲食店での出来事だった。



「どちらにしろここでは王国のグラン硬貨は使えませんから同じことです。こちらで流通しているアルタヤ硬貨を手に入れねばなりませんから…。」


「それで依頼を受けた訳だな?依頼内容は?」


ヨハンは砂蜘蛛と砂狼の討伐であることと、それぞれの依頼の討伐証明の受け渡し場所を説明する。



「ヨハン!お前は蜘蛛の討伐をやっておけ!討伐数に上限のない狼は私がやる!」



このままでは今日の一杯すら覚束ない。

そんな現状を理解したティータは猛烈な勢いで飛び去って行った。





しばらくして、砂蜘蛛の討伐依頼を完了させたヨハンとノルンがシャハールに戻ってきた。

出来るだけ急いで依頼を済ませて戻ったのだが、依頼を受けた商店の前の広場にはすでに感電死した砂狼の死骸が山となっていた。



完全に目立っている。


その事実にヨハンはがっくりと膝をついた。



「おお、ヨハン。戻ったか。換金は任せたぞ。私達は目立たないように宿で一杯やってるからな。」


二人の帰還を待っていたティータは機嫌よくヨハンに声をかける。



ティータと死骸の山はすでに都市に暮らす大勢の注目の的だ。


これは後で知ったことなのだが通常の間引き依頼だと、精々三匹程度の死骸が持ち帰られるくらいなのだそうだ。

目の前の死骸の山は、少なく見積もっても数百は下らないだろう。


ヨハンは砂蜘蛛の依頼料をティータに渡し、ティータとノルンが宿へと去っていく姿を茫然として見送った。



「いいや、手のかかる主への奉仕もまた僕としての喜びだ。」


気持ちを切り替えたヨハンは業務斡旋所の店主を呼びつけ、換金作業を開始した。




宿の一階の酒場ではティータは酒を、ノルンは食事を楽しんでいた。


「これでしばらくはお金に困ることもないわね。」


ノルンと二人なので、女性らしい話し方になったティータは美味しそうに酒をあおる。

実にいい仕事をした。そんな満足感が態度に表れていた。



もむもむもむもむ…。


ノルンの方は食事に一生懸命になっている。



「そういえば、さっきのヨハン、なんかアホ面晒してたけどあれは何だったのかしらね。」




ん…?



アホ面…?



そういえば…?



似たようなアホ面を何処かで…?




「あ!ああ!思い出した!」



自分を抱いて空を飛んでくれ。そんな頼み事をしてきた赤毛の小娘がいたことをティータは思い出す。



確かに首根っこを引っ掴んで飛び回ってやった時の小娘もそんなアホ面を晒していた。


同時にその時の赤毛の小娘とのやり取りも思い出す。



そして笑いながら呟いていた。


「思い出したわ。あの小娘、ナマって名前だったわね。」


ティータが思い出した記憶は、少しだけ間違っていた。



「ナマ?誰それ?」


「王国に暮らしている変な小娘ね。私やノルンと友達になりたいって言っていたわよ?」

「私と友達に?会ってみたいかも。そのナマちゃんが面白い子だったら私も友達になりたいな。」


ノルンが食欲以外の望みを口にするのは珍しいことだった。



「そうね。近いうちに一度会いに行ってみるのもいいかもね。」

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