066 旅芸人
場所は変わり、ロマリア中央広場近くの路地に転移門が開いた。
そこから出てきたのはセロとロッテ。
「兄ちゃん、いつのまにかいなくなってたから心配したんだぞ?」
伝言は残しておいた筈なのだがナナには通じなかったようだ。
「ごめんね、ナナ。もう用事は済んだから大丈夫だ。」
ナナとオルガンが留守番として広場に残り、他の皆はそれぞれ調査に向かったらしい。
「セロ達も戻ってきたし、俺も街をぶらついてくるぜ。」
入れ替わるようにオルガンは広場を後にする。
広場の中央付近、木製の長椅子が設置してあるスペースに陣取る。
「ロッテは地理枠で上空から探して。何か怪しいものを見つけたら報告を。」
「はい!」
「兄ちゃん、あたしは何をするんだ?」
「ナナもロッテに枠を分けて貰って、一緒に捜索を頼めるかい?」
「わかった!!」
ナナはロッテのところに行って、早速一緒に捜索を始めた。
セロはすでに調査に出ているメンバーに通信で連絡を取り、午前中の分も合わせて情報を集め、精査する。
まずは失踪事件の調査を頼んだアラン達からだ。
「アラン、なにかめぼしい情報はあるかな?」
「とりあえず失踪者の一覧は衛兵詰所にあったぜ。」
一覧には、名前、性別、出身地、くらいしか記載がなかったらしい。
「共通点としては、全員が若い女性だってことと、いなくなったのが夜だってことくらいだな。」
「失踪者の探知は?やってみた?」
「一応な。ジルに探知してもらったが、ロマリアの中にはいないそうだ。」
失踪事件が起こったのが夜。
セロは現在街で騒がれている黒衣の怪人が失踪事件に関わっている可能性を考えていた。
近くには、なにかめぼしいものはないかと俯瞰映像と睨めっこしているロッテと、その服をぐいぐいと引っ張るナナ。
「ロッテ、あたし飽きた。なんか面白い事やろうぜ!!」
「親分!?まだ捜索を始めて五分もたっていませんよ!?」
外出禁止の最中、街を出歩く者はほぼいない。
ナナは無人の街並みを眺めることに飽きたようだった。
「いいよ。ロッテ、しばらくナナと遊んであげて。」
「でもセロさん、いいんですか?」
「うん。俺も少し考えたいこともあるから。」
セロはナナをロッテに任せ、失踪事件と闇夜の怪人についての考えを纏めるべく、少し離れた位置にあるベンチへと移動していった。
一人になったセロはベンチに腰を下ろすと、通信具を用いて情報交換を再開する。
「夜の出没するとかって怪人について、何か情報あるかな?」
今度は五人の狩猟者に通信を送る。
一人は西門付近に潜伏中の聖壁騎士団の元へ出向いている為、街をぶらついているオルガンを除き、情報収集は五名で行っている。
「大した情報はありませんね。そもそも闇夜の怪人とかって噂が広まり始めたのも最近の話みたいなんで。」
「目撃報告なんかもさっぱりです。」
セロは通行人が言っていた、闇夜の怪人の情報源となったという酒場の話を思い出した。
「オルさん、そういえば酒場はどうだったの?」
「ん?店は閉まってたが店主は中にいたからな。とりあえず話は聞けたんだが…。」
実際に黒衣の人物を目撃したのは常連の一人なのだそうだ。
ロマリアのとある商店にて店員として働く男。名をオーレンというそうだが、最近は姿を見ないそうだ。
現在は外出禁止で、職場である店も閉まっている為、自宅に籠っているんだろうとのことだ。
「ジル、オーレンって男なんだけど、探知を頼める?」
「はい、やってみます。」
結果は、ロマリアには存在していない、ということだった。
(怖くなって街から逃亡した?いや、怪人の目撃後に酒場で飲んでるんだから逃亡じゃない。他所の人間ではないけど失踪かな…?)
オルガンが言うには、酒場の店主はオーレンの語っていた不審人物についての話を教えてくれたそうだ。
「オーレンって奴なんですけどね、夜の裏通りに、女の大声と何かが割れるような音がしたってんで見に行ったんだそうです。」
そこで見たのは何か大きな荷物を抱えた黒衣の人物が、ありえない跳躍で路地から建物の上に飛び移る瞬間。
オーレンを一瞥し、そのまま建物の上を飛び移りながら去って行ったらしい。
「あれは人間の動きじゃない。きっと化け物か何かだって騒いでまして、それが噂になって外出禁止令が出たんです。」
「ってなことを言ってたな。どう思う?」
語り終えたオルガンは、セロの返答を待っているようだ。
「オーレンは本来対象外だったけど、怪人を目撃したことで失踪させられたんじゃないかな?」
「やっぱりそう思うか。」
オルガンも同様の見解に至ったようだった。
セロは通信を切り、失踪と怪人について思考を巡らせる。
その頃、広場に残っていたナナとロッテは、広場にやってきた見かけない二人組に注目している所だった。
一人はナナより少し大きいくらいの体躯に派手な色彩の服を着込んだ少女。
もう一人はオルガンよりもさらに大きい、髭もじゃの男。
男は大きな旅行鞄を持っており、見た感じ、少女の召使か何かに見える。
「おおっ!人がいるよ!!無人の街じゃないんだね!!よかった~。」
派手な少女はナナとロッテを見て、喜びの声をあげている。
「誰だ?この街の奴か?派手な服だな?」
「親分!初対面なのに失礼ですよ!?」
満面の笑みで二人に近づいて来る派手な少女。
髭の大男は一歩下がった所で待機している。
「私達は二人組の旅芸人だよっ!!街から街へ、芸を見せて旅をしているんだ!」
「芸って何だ?面白いのか?」
ナナは二人組の芸に興味を示したようだ。
ロッテは逆に、胡散臭そうに二人を観察している。
(こんな状況で旅芸人だなんて、何かおかしいです。違和感を感じます。セロさんに知らせるべきでしょうか?)
思い悩んでいる間にも、ナナは二人に芸を要求していた。
「あたし丁度退屈していたんだ。何か芸を見せてくれ。」
「仕方ないなぁ。本当はこんなお客さんが少ないところではやらないんだよ?君が可愛いから特別なんだからねっ!?」
そう言いながらも、派手な少女は嬉しそうだ。
「それでは!!さすらいの旅芸人、ワンダー・リンリンと!!」
少女に続いて、その背後で大人しくしていた髭の大男がぼそりと名乗りを上げる。
「ストロング・ウルヴズ。」
「びっくりイリュージョンの開幕で~すっ!!」
二人の芸人の背後にカラフルな光が射す。
同時に、破裂音と共に規模の小さい煙幕が上がり、光と合わさって美しい視覚効果を生み出している。
「おおっ!すごいぞ!!何だこれは!?」
「本当に綺麗です。一体どうやっているんでしょう…。」
まだ芸も始めていないはずが、これまで見たこともない演出に、ロッテもまた見入っていた。
ワンダー・リンリンはナナの目の前に空の箱を持ってくる。
「赤毛のお嬢ちゃん。お名前は?」
「あたしはナナだ!!」
ナナは元気よくお返事する。
「さぁ、ナナ。この箱は何の変哲もないただの箱。間違いないかな?」
蓋のない、上の口が開放されている箱だ。派手な色が塗られているだけで、おかしなところはない。
「うん。ただの箱だ。」
ナナもそれを確認した。
「触っちゃ駄目だよ?」
ワンダー・リンリンは箱の開口部を下にして、ナナの目の前に置く。
そのままくるくると踊り始めると、ナナの目の前に手のひらを広げて止まる。
「さぁて、取り出したるは魔法のコイン~!」
広げた手のひらをぐっと握り、その両手を伸ばしたまま、くるくると踊り始める。
そしてナナの目の前にその閉じた手を持って来てピタッと静止。
握った手を広げると、そこには大量のコイン。
「!?何も握ってなかったのにコイン持ってるぞ!?」
「本当です。いつの間に…。」
ナナと共にロッテも驚いているようだ。
「まだまだ続くよ~。」
ワンダー・リンリンはコインを載せた手のひらの上に、黒い布を被せる。
「ワン!ツー!スリー!!」
黒い布が取り払われ、ワンダー・リンリンの手のひらに載っていたのはコインではなく黄金のベルだった。
チリンチリン!
ベルを手に取り、その音色を聞かせるワンダー・リンリン。
「すげ~!!どうやったんだ!?すごいぞ、リンリン!!」
ナナはすっかり興奮してしまっていた。
「はいっ!お次はこのベルを~、食べちゃいます!!」
「駄目だぞ、リンリン。お腹痛くなっちゃうぞ!!食べるならお肉にするんだ!!」
思わずリンリンに向けて手を伸ばすナナ。
「大丈夫、大丈夫。ワンダー・リンリンのお腹は魔法のお腹!へっちゃらなんだよ~!」
そう言って摘まんだベルを、ワンダー・リンリンは一飲みにしてしまう。
「ぎゃあ!食べた!!」
「大丈夫なんでしょうか…?」
ワンダー・リンリンに変わった様子はない。
「さぁ、赤毛のナナちゃん!目の前の箱を開けてみて!!」
「むん?」
中に何も入っていないことは確認している。
ナナは疑問の表情で箱を開けてみた。
その中には先程ワンダー・リンリンが飲み込んだ筈の黄金のベル。
「!!!?」
「え!?何で…?」
驚愕する二人。
ナナはともかく、ロッテは芸人を見るのは初めてではない。
しかし、かつて迷宮都市を訪れた旅芸人一座の芸と比較しても、ワンダー・リンリンの芸はまったく異質のものだった。
「なんで食べたベルがここにあるんだ!?」
ナナは必死に手品のタネ、トリックを考えるがまったく分からない。
それはロッテも同様だ。
「どうかな~?楽しんでくれたかな~?」
笑顔で感想を求めるワンダー・リンリンに、ナナは盛大な拍手を返した。
「すごいぞ!!あたしには秘密を見破れなかった!すごい手品だ!!」
「喜んでくれて嬉しいな~。たった二人のお客さんだったけど、披露した甲斐があったよ。」
芸を終えたワンダー・リンリンは、ナナの元にやってくるとそのままお喋りを始めた。
「ここってなんか外出禁止令?みたいなのが出てるみたいで、商売にならないから、私達はすぐに次の街に移動しようかと思ってるんだけど…。」
「そうなのか?もう行っちゃうのか?」
外出禁止令について書かれている広場の掲示板を指すワンダー・リンリンに、ナナは残念そうな眼差しを向けている。
「うん、残念だけどね。まぁ、それはいいとして、外出禁止のこの街で二人は何をしているの?」
誰も外に出ていない状況で、広場にいたナナとロッテはすごく目立っていたんだそうだ。
「あたしはロマリアの秘密を調べて、兄ちゃんに褒められようと思っているんだ。」
ナナは素直に自身の欲望を暴露していた。
「ふ~ん。ロマリアの秘密か~。それならさ、ナナ、ちょっとこっち来てごらん?」
ワンダー・リンリンはナナを広場中央のオベリスクへ案内する。
ロッテもそれに続き、オベリスクを眺める。
「ん?リンリン、この柱に何かあるのか?」
「もちろん!このオベリスクはかつての都市国家ロマリアの象徴!ロマリアの秘密と言えばこれさ!!」
そう言って、ワンダー・リンリンはオベリスクに記された文字を指差す。
そこには、都市国家ロマリアの歴代の王の名が記されている。
「ナナが求める情報の鍵を握る人物はこの人!都市国家ロマリア最後の王!レオン・クリスト・フォン・ロマール!!」
歴代の王の中でも、最後の王レオンの名を指してワンダー・リンリンは断言する。
「この人の事を調べてお兄さんに報告すれば、ものすご~く褒めてもらえること間違いなしだよっ!!」
お兄さんはナナに頬ずりしたりちゅっちゅしたりと大喜びだよとナナを煽る。
「本当か!!?リンリン、ありがとうな!!!」
そしてナナは完全にその気になっている。
「親分…。とりあえず今調べている案件にその人は関係ないと思いますが…。」
普通に考えて、都市国家の王族はすでにこの世を去った過去の人物。
ロッテにはその人物が失踪事件や闇夜の怪人に関りがあるとは思えなかった。
しかし、もともとナナはロマリアの秘密としか口にしていない。
事情を知らないワンダー・リンリンとは、認識に齟齬があるのも致し方ないことだと、ロッテはあえてそれ以上何も言わなかった。
「それじゃあねっ!ナナ!またどこかの街で会えることを願っているよっ!!」
ワンダー・リンリンとストロング・ウルヴズは西門に向けて歩き去って行った。
言っていた通り、ロマリアを出るのだろう。
二人の姿が見えなくなると、ナナは興奮した様子でロッテに言った。
「すごかったな!ロッテ、あたしあんなの初めて見たぞ!!」
「そうですね、私も初めてです。」
そして忘れない内に自らの心中に灯ったやる気の炎を形にするナナ。
「という訳でロッテ、早速エロ枠使って最後の王様を調べるんだ。あたしは兄ちゃんに褒められたいんだ。」
「エロ枠じゃありません!それに私が調べて褒められるのは親分なのは納得が行きません!私だって褒められたいです!!」
ナナとロッテは二人だけになった広場でぎゃあぎゃあと騒いでいた。
しばらくして、中央広場に全員が集合する。
どうやら皆、大した情報は手に入れられなかったようだ。
「住民からの聞き取りではこのくらいが限界かもしれねえな。」
オルガンは不機嫌そうにぼやく。
その様子を見つめるセロもまた、調査の糸口を見つけられないでいた。
「なら…、少し思い切った手に出てみる?」
セロが皆に提案したのは、一言で言えば囮作戦だった。
「若い娘にロマリアの夜の街を実際に歩いてもらって、俺達は完全隠形でそれを追跡するんだ。」
「成程な。噂の怪人とやらが襲ってきたら返り討ちにして、情報を吐き出させるってことか。」
肝心の囮はどうするか。
皆の視線がロッテに集中する。
「え?」
「仕方ねえ。若い娘ってことなら一人しかいねぇしな。他の若すぎる娘だと駄目かもしれねえし。」
「ロッテ。皆が絶対に守るから。頼めるかな?」
「わ、わかりました…。」
囮作戦の決行が決定し、夜までの時間を潰す為、廃棄場での狩りに合流することにした。
夜、ロマリア市街区。
背の高い建物の屋根の上に黒い人影があった。
一人は長身に細身の人間、背の高さから言っておそらく男性。
そしてその両脇には同じく黒衣を着込んだ猫背の人物が二人。
セロ達は想定していなかったが、街で噂になっている闇夜の怪人は三人いた。
「最近は外出禁止令のおかげで、街を歩く人間がまったくいなくなってしまったな。」
長身の怪人が現状に愚痴をこぼす。
「コルルル…。」
それに応えるかのように、猫背の怪人が小さく奇妙な唸り声を出している。
「まったく、住民に目撃されるなど、とんだ下手を打ったものだ。」
長身の怪人はさらにぼやきながら、眼下の街並みに視線を這わせる。
「ん?あれは…。」
何かを発見したようだ。
その目線は大通りへ向いている。その先には、一人ビクビクと大通りを歩く若い娘。
きょろきょろと周囲を確認しながら、おっかなびっくりといった様子で中央広場へ向けて歩いている。
服装は王立学院の制服を着込んでいるその娘は、ロッテだった。
「コルッ!!」
ロッテの姿を視認した猫背の怪人が襲い掛かろうと身構える。
「待て。」
静かにそれを制止する長身の怪人。
「コルルルル…?」
何故、襲撃を止めるのか。
猫背の怪人二人は、長身の怪人を見つめ、その言葉を待った。
「現状では貴重な獲物。だが…。この現状だからこそ逆に何か匂うな。」
長身の怪人は慎重に見極めるべく、通りを歩くロッテを注視する。
「ん?あれは…。変装しているが、シャルではないか。」
長身の怪人は遠距離、しかも闇夜の中にあって、ロッテの正体を看破した。
「あれは駄目だ。彼女を襲ったりすれば、静寂殿と弟の怒りに触れる。我らの命はないだろう。それに彼女の周囲には間違いなく護衛が付いている。」
ロッテが囮であり、自分達を釣りだす為の撒き餌であることは疑いようがない。
長身の怪人はそのように判断した。
「引き上げるぞ。彼女は駄目だ。」
二人の猫背の怪人に、撤退を指示する。
三人の怪人はひっそりと闇夜の中に消えて行った。
「…。」
それなりの時間、ビクビクしながら街をうろついたロッテは結局、誰の襲撃も受けなかった。
「う~ん。そううまくはいかないか。」
囮作戦を断念し、一度帰還することにした。
「まぁ、失踪事件の件数から言っても、毎日襲撃が起こっている訳じゃないだろうしね。」
ビフレスト商会の中庭では、皆が残念な顔をしている。
「無事だったのに残念そうにされると…。」
ロッテが襲われなかったことを残念がる周囲の反応に、ロッテは頬を膨らませている。
「兄ちゃん、きっとロッテはセクシー不足だったんだ。だから怪人も襲ってこなかったに違いない。」
ナナの指摘に、当然ロッテは反論する。
「セクシー不足!?親分は私に魅力がないと仰りたいんですか!?」
「魅力じゃなくてセクシーだぞ?」
女としての色気が足りないとナナは指摘しているようだ。
ロッテの容姿は確かに整ってはいるが、色気と言われるとそれは微妙なところだった。
16歳のロッテは大人の女性と言うには少々幼い。
自分でもそれは自覚しているが、8歳のお子様からそれを言われることに対しては少々思う所があるようだ。
ロッテは無言でナナを捕獲してその頬を引っ張っている。
「今度はエロい恰好でうろうろしてみるのはどうだ?」
「絶対イヤです!!」
ナナは捕獲されたまま提案してみるも即座に却下された。
「まぁ、元々、怪人が出てくればラッキーくらいの作戦だったんだ。今度は他の方法を考えるよ。」
セロはナナとロッテを宥めつつ、今日の所は解散とした。
部屋に戻り、セロはロッテに声をかけられていた。
「セロさん、すみません、伝え忘れていたことがあります。」
ロッテは中央広場で出会った二人の旅芸人についての一部始終を余すことなくセロに伝えた。
「そんなことがあったんだ。その二人の鑑定結果は?」
「親分はワンダー・リンリンさんの手品芸に夢中で、鑑定していないそうです。」
「そうか…。」
セロは真剣な表情で考え込んでいる。
「セロさん、やはり、偶然遭遇した一般人というのは考えにくいですか?」
「そうだね。俺はアルカンシエルの関係者である可能性が高いと見るよ。敵か味方かは分からないけど。」
「一応、お二人共、初めて見る顔でした。」
ロッテは情報を補足し、セロは自分の知らないアルカンシエルのメンバーであると仮定した。
そうなれば、ロマリア王の調査は敵側からのヒントということになる。
(なんにせよ、闇雲に聞き込みを続けるよりはいいだろう。)
セロはその提案を受け入れることにした。
「ロッテ、そのリンリンって人が言った、都市国家ロマリアの最後の王って奴なんだけど。」
「はい。レオン・クリスト・フォン・ロマールですね?」
現在では、王国の歴史を学ぶ際に建国以前の乱世の時代に登場する悲劇の王として有名な人物だ。
ロマール七世と言われればこの人物を指す。
「念の為、調べよう。そこに何かのヒントがあるのかも知れない。」
「わかりました。」
部屋に戻ったロッテは、ロマール七世の調査について考える。
ロッテの検索枠で名前を検索すれば、情報は出てくるだろう。
それに、歴史上、有名な人物でもある。
学院や、王城の書庫にも情報があるかも知れない。
通信具を使って、必要な人物に必要な依頼を伝える。
「すみません、エトワール。一つお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「あら?どうしましたのシャル?もちろん、私にできることでしたら構いませんわよ?」
エトワールに連絡し、王城の書庫にロマール七世についての文献があれば明日、学院に持参して欲しいと伝える。
「わかりました。用意しておくように城の者に伝えておきますわ。」
「目的や理由などは明日、皆が揃っている時にお話し致します。」
エトワールの了解は得られた。
あとは明日、学院の書庫で関連書物を探し、検索枠での調査も行う。
学院の授業が終了した後、セロに結果を報告することにしよう。
(ああ、そうです。この調べものに関しては、親分を仲間外れにしては可哀そうです。明日の朝、お誘いすることにしましょう。)
ロッテは明日の行動方針を定めると、そのまま眠りにつくのだった。




