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フヨフヨ  作者: 猫田一誠
03 王都
19/236

017 友達

皆にとっては久方ぶりの虹の森。

そしてロッテにとっては初めて目にする廃棄場。



当然、浄化と解毒の魔道具は皆が装備し、ロッテもこの場所の説明を受けている。


「本当に日光が射さないんですね。昼なのに真っ暗です。」

「あぁ、ここはいつもこんなだよ。今回は照明も沢山ある。ナナも遠慮なく変身してもいい。無理はしないから気楽にね。」


そう言って皆が配置につき、狩場へと向かう。



セロが先頭で、戦闘組はナナとロッテを守るような布陣になっている。



「とりあえず、ロッテに慣れてもらう為に、始めは小さいのを狩るか。」


硬猪、一角狼、爪兎。そのあたりが次々と誘引されては戦闘組の手によって狩られていく。

小型種が相手なら皆も手慣れたものだ。


セロは安心して皆の連携を確認していた。




ナナの祝福による強化、そして爆裂を付与された防具や、各種罠、射撃武器は次々と小型種を屠る。


「親分、今、狩っている魔物はどれくらいの強さなのですか?」

「んとな、兎が17~18くらい。猪は23~26。犬は20~24くらいだけど雷する犬は30くらいのもいる。」


ナナは獲物の強さをレベルで評価してロッテに説明する。



「迷宮第2層の敵より強いんですね…、しかも小型種ってことは…。」

「あぁ、こいつらがここで一番弱い。狩りの主な獲物だね。」


今度はセロがロッテに応えていた。



(廃棄場から来たメンバーのレベルが高い理由は、この狩りにあるのでしょうか?すごくハイレベルな狩猟行為です…。)


ロッテはそんなことを考えていた。



「じゃあ、中型も狩るか。ナナ、爆裂障壁は味方を巻き込まないようにな。」


「お、使っていいのか?兄ちゃん。」

「あぁ、ナナも練習しとかないとな。俺も参加するし。ロッテは後ろね。」


「は、はい。」



中型種。その言葉に緊張を見せるロッテ。



「中型はな、レベル35~55くらいの範囲でな、45くらいが目安なんだぞ?どうだ?あたしの解説もすごいだろう?」


ナナの解説で分かるのはレベルだけだった。


「ありがとうございます。親分。」



「なんか緊張してるね?ロッテ。」

「レベル45なんて王国に出現したら都市が壊滅する程の被害があると言われていますし…。」


実現すれば軍団規模で騎士団が動員される事態になるだろう。

ロッテは小さく肩を震わせていた。



「大丈夫。中型なら複数きても平気だよ。」


そんなことを言っていると、誘引を担当する者から通信。


「毒蛇を視認。どうしますか?」

「よし、一度戻って俺と交代。俺が誘引しよう。」


チームでなら戦闘組でも誘引可能だが、個人であれば途中で殺される危険がある。セロはそう判断した。

安全を取って、セロが誘引、戦闘組は爆裂罠を設置して待機する。



帰還したセロが罠の上を通過。ナナは即座に付与術を行使。



ガサガサガサ!


セロの背後から地べたを這う音がする。


そして、セロを追ってきた巨大な蛇が狩場に顔を出す。


「ひぃっ!」


思わず悲鳴をあげるロッテ。



しかし、戦闘そのものは一瞬で終わった。


狩場の中央付近まで前進してきた毒蛇は地雷型トラップにかかり、頭より少し下の部分が吹き飛んだのだ。

人間で言えば、喉、もしくは首のあたりだろうか。


もちろん即死である。


そう思われていたが念の為、セロは蛇の頭部に白雷を突き刺し電流を流す。



「え?」


あっさりと死亡した毒蛇に、ロッテは驚きの声を抑えきれなかった。


「ロッテ、いまの蛇、レベル46だったぞ。な?大丈夫だった。あたしの爆裂すごいだろ!」

「え、ええ。すごいんですね。親分。」


(レベル46の魔物を一撃で倒す付与術!?親分はいろいろおかしいです!)



ナナが毒蛇を収納する。


「ナナ、変身して、凍結魔術やってみよう。いざって時のために、練習だ。」


「変身って、例の魔王の力ですか?」

「あぁ、何があるか分からないからね、一応、慣れておいた方がいいかなって。」


「わかったぞ!」


ナナは両手を交差させて上に伸ばすポーズを決めた。


「へんし~ん!!」


そして叫んでいた。



ナナの赤毛が白銀に変色する。

そして、ナナの周囲の空気が、なにかキラキラしている。ダイヤモンドダストだ。


「お、これが凍結結界か。ナナ、これ味方も凍っちゃうのか?」

「うむぅ、あたしが凍らせようと思ったやつだけみたいだ。」


ナナもいろいろと確認しているようだ。



「ナナ、ちょっと見せて。」


そう言ってセロは鑑定板をナナに渡し、確認する。

ロッテもそれを横から覗く。



ナナ(虹人)

  (氷の魔王)


レベル 17


恩恵 氷の魔王 凍結魔法:無限+9

        氷雪創造+9

        凍結結界+9

   付与魔法:恩恵+6   

   召喚魔法:火:氷+5

   空間魔法:収納:転移+1

   魔力強化+5

   耐性:炎熱

   耐性:氷結

   耐性:電撃

   耐性:毒

   耐性:麻痺+1

   耐性:呪詛

   耐性:石化


技能 凍結魔術:永久氷壁

   凍結魔術:霧氷剣

   凍結魔術:冷凍光線

   魔眼:分析

   付与術:祝福

   付与術:幸運

   付与術:豊穣

   付与術:障壁

   付与術:隠形

   付与術:停滞

付与術:定着

   付与術:認証

   付与術:道標

付与術:通信

   付与術:発煙

   付与術:燃焼

   付与術:指向爆裂  

   召喚術:火焔蝶

   召喚術:氷騎兵

空間術:収納

   空間術:転移門


効果 浄化

   解毒

   祝福

   幸運

   障壁



「よし、ナナ。霧氷剣出してみて。」

「おうよ!」



ナナの手元に、巨大な氷剣が現れる。大きい。長さは4メートル近い。


「兄ちゃん、これ、自在障壁みたいに動かせそうだ。でも遠くには飛ばせない。」

「へぇ、近接戦闘向けの魔術か。ならもう少し小さい方がいいな。」


「わかった。このくらいか?」


ナナの身長と同程度の小さい氷剣だ。

とりあえずナナはそれを二十本程出してみた。



「兄ちゃん、凍結魔術、使っても魔力減らないな。」

「そうなの?無限って恩恵に追加されてるのはそういうことなのかねぇ。」



その辺の樹木を霧氷剣で切り付けてみる。

切り口から徐々に凍結していく。



「あたしには自在障壁があるからこの魔術は使わなくてもいいな。」


そんなことを言いつつも術の効果を確認していると、再度通信が入る。



「すみません、補足されました。影豚です!現在逃走中です!」


途端にセロは真剣な表情になる。影豚はかなり危険度が高いのだ。



「わかった。こちらは大丈夫だ。連れてきていい。」


そして皆に指示を飛ばす。


「戦闘組はロッテを守り、距離を置け。一応、即死ガスは風魔術で吹き飛ばすが、黒い煙には注意だ。」

「はい!!」



(は?即死ガスって何なんですか!?何が来るの!!?)


ロッテはこっそりとパニックになっていた。



「影豚はレベル55くらい。中型の中でもかなり強い奴だ。」

「55って…、逃げなくてもいいんですか?かなり危険なんじゃ?」


ナナはロッテに解説してやる。


「ロッテ、兄ちゃんなら一人でも倒せる相手だぞ。それに今は皆もいる。大丈夫だ。」


「ナナ、冷凍光線で攻撃してみて。それでまだ生きてるようなら俺が始末するから。」

「わかった!!」


緊張する後方の面々に対し、セロとナナには余裕があるようだ。

凍結魔術の実験まで行おうとしている。



バキッ!バキバキ…。


樹木をへし折りながら、巨大な影が接近してくるのが分かる。

かなり大きい。体長は10メートル近くありそうだ。



バキバキ…。ボキッ。


さらに樹木をへし折り、巨大な影が接近する。


影が狩場に侵入し、巨大な豚の姿が照明に照らされ、皆がそれを視認する。



「フゴッ、フゴッ。」


体表から黒いもやのようなものが漏れ出している。

セロはすぐさま風壁を発動。ガスを豚の後方へと流し続ける。



「ナナ、いいぞ。」


「氷~~…。ビーーーーム!!」


ナナは両手を豚に向けて突き出すと、そこから青白い光線が走る。



それは一瞬のことだった。


豚とそしてその背後の森が氷漬けになっていた。

かなり前方まで凍結しているようだ。


「一撃か。さすが魔王の力。うん、豚は死んでるな。」


「でも兄ちゃん、これ範囲が広すぎる。こっちも使いにくいな。」

「使用場所はかなり限定されそうだな。凍結魔術は広範囲殲滅の必要がある時の選択肢のひとつ。てことにしとくか。」



ここでまた通信が入る。


「おうセロ、ナナ。俺も参加するから迎えの転移門開けてくれ。」


通信はオルガンからだった。


「なら一度拠点に戻って休憩しよう。そんでオルさんと合流して狩りの後半戦といこう。」



オルガンも参加し、さらに戦力が上昇した一行は、小型種、中型種を大量に乱獲して帰途についた。



ナナの付与帳に、恩恵が追加された。


水魔法:毒水

風魔法:噴射

闇魔法

身体強化×2

耐性:斬撃×3

耐性:打撃×4

耐性:刺突×2

耐性:炎熱

耐性:電撃

耐性:毒

耐性:麻痺

耐性:呪詛


以上である。


風魔法と呪詛耐性をセロに、物理系の耐性をセロとナナにそれぞれ付与して、残りはストックする。


「次はジルも連れてきたい。ジル、索敵できるから役に立つんじゃね!?」


「そういえばそうだな。ナナ、頑張って友達になるんだぞ。」

「ムフフ、明日からは一緒に学校だからな。ジルももうあたしから逃げられないんだぞ。」





ナナ達が廃棄場から王都に移動した頃、偶然にも同様に廃棄場から王国へ侵入した者達がいた。



「お~。懐かしいな。この大草原も久々だ。」

「そうですね、復讐も果たし、実に晴れやかな気分です。」


王国南東、廃棄場への連絡通路がある地下道入口。


王国民が刑洞と呼ぶ場所。



そこに二人の鬼がいた。




しばらく前にヴォロスに依頼された双鬼党の復活。


これはまったく問題ない。


「ヴォロス殿、せっかくだ。名を改めたい。双鬼党改め、両面宿儺。そう名乗ることにする。」

「もちろん、騒ぎを大きくする為、王家には赤鬼、青鬼の連名での布告状を送ろうと思います。」


このように、団体名を変えたことくらいだ。



あとの依頼は王都を襲撃する際にネメシス宰相、アロウズ大臣とベルシ大臣。この3人を確実に殺害すること。


これもまったく問題ない。

戦力を考えれば、簡単に達成できる。



そして、王国の東西南北、それぞれを統括する大貴族4名。


彼らには手出し無用とのことだ。



それと、王国北東、公爵領北部衛星都市ロマリア。

この都市と、都市伯であるアルベルト・スピリタス伯爵。ここも手出し厳禁。



これも問題なし。



最後に、最優先注意事項としてヴォロスが伝えたこと。


万が一、簒奪者と接触することがあれば、戦闘は行わず逃走、そして情報を持ち帰ることを最優先とする。

これは、仮に簒奪者のレベルが思ったよりも低く、簡単に捕縛できる。そんな時でも適用される。


要は、簒奪者、もしくはその一味と敵対を禁ずる。ということだった。



これには多少問題がある。

対象は正体が不明であることだ。



それに対して、ヴォロスは対処法を二人に伝えた。


「簒奪者は確かに謎の人物ですが、見分ける為のヒントはあります。」



複数の恩恵を宿す者。


これは王国においてさほど多くはない。

その中に必ず簒奪者がいる。



それともう一つ。


簒奪者はかなり高い確率で、自身への鑑定効果を阻害していると思われる。



「これでかなり絞り込めるはずです。」


最後に、ヴォロスは二人に緊急時の逃走ルート、潜伏可能な隠れ家をいくつか伝える。

そして、王国内における協力者となる組織の人間の詳細も。


「自由に暴れて下さい。以上の決まりだけを厳守して頂ければ、何をしても構いません。国が滅亡しない程度には。」


そう言って、浄化されていない濃虹水の瓶を渡す。



「戦力の補充用です。」


「ありがとう、ヴォロス殿。」

「我らが派手に暴れることで、ヴォロス殿が利する。そういうことですね?」


「えぇ、その通りです。それとこれも。一本だけですが。」


追加でもう一つ、黒い包みをアレクシオンに渡すヴォロス。



二人の鬼は互いに頷き合う。



「「必ずや目的を果たしましょう。」」


そしてヴォロスにそう言って地下道を後にした。



そして現在は久方ぶりの日光浴を楽しみ、公爵領南部開拓地へと向かう。


その目的は、開拓地の人間を害人と化して戦力を増強する為だ。



歩き出す二人の後を、アレクシオンに隷属している害人となった者達が追従する。




そしてその日のうちに開拓地にいた全ての人間が姿を消していた。





王都に戻ったナナ達は、狩りで得た獲物を浄化された倉庫内にて収納から取り出す。


これから商会の者達で解体作業が始まるのだ。



ナナとセロとロッテはここで集団から離脱して、商会敷地内にて休息をとっていた。


「ナナ、ちょっといいか。」

「どうしたんだ?兄ちゃん。」



ナナが試験的に使用していた足の裏に不動障壁を展開して一時的な足場とする付与術。

セロはこれに有効性を見出し、自身の靴にそれを付与できないか尋ねていた。



「やってみるな。」



ナナの靴とセロの靴が、障壁を付与された魔道靴へ変化した。

セロとナナは問題なく空中を歩く。


「おぉ、成功だな。これでまた新しい戦闘機動をとれる。」


「よかったな!兄ちゃん!」

「ありがとう。ナナのおかげだ。」



セロは早速、不動足場と噴射の魔術を使用した戦闘機動の練習を始めた。


「おおっ!兄ちゃんすごい動きだぞ!!」


「本当ですね。セロさん、また強くなっちゃった。」


ロッテがやってきた。


そしてしばらく、ナナを見つめて考えている様子だった。



「どうしたんだ?ロッテ。悩み事か?親分の助言が欲しいのか?」


「いえ、明日から学院に通うんだって考えたらいろいろと心配事が浮上しちゃって。」


「心配事って?」


地上に降りたセロもロッテの様子が気になったようだった。


「主にセロさんとナナさんが心配なんです。」


「え?心配?他に誰か強いのがいるの?」

「ロッテ。親分は強いんだぞ!悪者はやっつけてやる!」



ロッテの表情からは不安の色が消えていない。



「ロッテ、話して。不安に思ってること。」


ロッテはセロを真っ直ぐ見つめると、語り始めた。



二人の強さは学院においても並ぶものはない。

これは間違いない。しかし、だからこそ心配になるのだと言う。


そんな二人は平民だ。


例えば、貴族の生徒は二人の能力を認めないかも知れない。

いろいろな難癖をつけてくるやも。


当然、セロとナナは一蹴するだろう。


そうなった時。対立した貴族達から二人を守れるのか?


二人は王国の法律にも詳しくない。

あの貴族たちは口八丁と他者を蹴落とす手練手管でもって、二人を貶めるかも知れない。

犯罪者にされる可能性だって。


そうなったら自分の力ではどうしようもないのではないか。



セロは黙ってロッテの話を聞いていた。そしてこう返す。


「ロッテ、もし俺やナナが犯罪者として王国を追われるようになったら、俺はこの国を出ると思う。」


ロッテは悲しそうに俯いている。


「その時は、ロッテにも一緒に来て欲しい、ってのはダメかな?」


「え?」


「ロッテ、親分を一人にするのか?」



ロッテは顔を上げて二人を見る。


「ロッテ、あたしはこの国を追い出されるのなら、ジルも連れていきたい。ダメか?」


兄妹共に似たようなことを言って、ロッテの返答を待つ。



「お二人が私を必要として下さるのなら、ロッテはどこまでもご一緒いたします。」


そう言って微笑むロッテ。



「親分、ジルを連れていきたいのなら、まずは友達にならないと。明日は学院で会えるでしょうから。」


「そうだった!今朝も逃げられたしな。明日は捕まえて友達になれって脅しまくる!」

「脅しちゃダメです、親分。」





そして翌朝。大橋を渡り、ナナはジルの家へ向かう。


「ジル~~~~~~~!!!ジル~~~~~~~~~~!!!!」


いつかと同じく、門の前で叫ぶ。



セロとロッテはこっそりと見守っている。


しばらくすると扉が開き、制服姿のジルが顔を覗かせた。



「ジル~!あたしと一緒に学校に行こう!」


発言と同時に、ジルに突進して抱き着くナナ。



「ナナちゃん、私と一緒にいると、とても悲しいことになるかもしれないの。だから私とは距離を置かないと駄目だよ。」


ナナはジルに抱き着いたまま、顔を上げるとはっきりと言った。


「あたしはジルと一緒にいたいんだ。一緒にいられない方が悲しい。」



ジルは言葉に詰まる。


セロとロッテは隠れていたのだが、ジルの言葉が気になって姿を見せていた。



「悲しいことって?ジル、何か困っていることがあるなら、力になる。ばあさんの孫なんだ。俺らだって家族みたいなもんだろ?」

「ジル、私もあなたの味方です。私にもお手伝いさせて下さい。」



ジルは涙目になりながらも、なんとか言葉を返す。


「学院に行けば、いやでもそれを目にすると思います。どうか、何があっても見ないふりをしてください。」



そう言って、ジルは学院へ歩き始めた。




目の前に学院の門が見える。


そして、門の脇には制服を着たエトワールが立っている。

その傍らには近衛騎士団長、ルーシアの姿も。



「ん?なんだ?くるくるの待ち伏せか?ジルのことはあたしが守るからな!」

「ナナちゃん、王女殿下をそんな風に言うのは駄目だよ。」


やがてエトワールはこちらに気付くと、足早に向かってくる。


「むっ、くるくる。やる気だな!?」



ナナは殺傷せずにエトワールを迎撃する為、発煙の付与術を選択した。

色は無色、睡眠効果が追加付与されたガスを飛ばす。



「いえ、親分。あれはたぶん何かお話があるんじゃないかと…。」


ロッテの言葉は遅かった。


歩いてきていたエトワールはそのまま前のめりに顔面から地面に着地する。


「zzz…。」


そしてそのまま寝ている。



「姫様!?」


ルーシアが駆け寄り、エトワールを抱き起す。

眼を開けて鼻血を出しながら眠るエトワール。



「ん?なんだ?ナナ、何かした?」

「怪我させないように倒すのが大事だから、眠りガスを食らわせた。」



それはルーシアにも聞こえていたようだ。


「何てことをなさいますか!」


当然、怒っている。


「すみません、すみません、すみません、すみません。」


ロッテとジルがひたすら謝罪している。


「?」


ナナは頭に疑問符を浮かべ、きょとんとしていた。




学院敷地内、中庭。


ベンチには眠りこけるエトワール。


そしてルーシアはナナ達の前で仁王立ちしている。



「さぁ。どうしてあんなことをしたのか話していただけますか?」


ナナに質問するルーシア。


「あたしわかったんだ。犯人はくるくるだ!」


「「「はぁ?」」」


皆の返答が被る。



ナナは得意そうに皆の顔に視線を送ると、自身の推理を披露する。


「ジルは言った。学院に行けば悲しいことが起こる、だから自分から距離を置け、と。」


ナナはジルを見ながらさらに続ける。


「あたしはジルを守るつもりだったからな。距離を置いたら駄目なんだ。だからいつも一緒だ。」



そう言って今度はエトワールに視線をやる。


「昨日のことだ、くるくるは言った。ジルに話がある、だからジルを紹介しろ、と。」


そして今度はルーシアに視線。


「あたしはジルの友達だから、ジルを売ることはできない。友情の絆だ。あたしはふわわしいんだ。」



ナナはてくてくとエトワールの前を行ったり来たりと歩きながら推理を続ける。


「つまりジルが学院に行って、悲しくさせるのは学院で待ち伏せしていたくるくる、おまえだ!」


ビシィ!とエトワールを指さすナナ。

指された本人は変な顔で寝こけていたが。



「フ…、決まったな。」


ナナは得意顔でそんなことを口に出していた。



「そんなくるくるがジルに向かってきた。あたしはジルを守る!くるくるをやっつける!でも怪我させたら駄目だから眠らせた。」


鼻血はノーカウントにしてくれ。

そんなこともしれっと言っているようだ。



「あの…、とりあえず…、ごめんなさい。」


ロッテは謝った。


「すみません、ナナちゃんはまだこっちの暮らしに慣れていないんです。悪気はないんです。」


ジルも続いた。



いかしセロは逆に絡んだ。


「まぁ、怪我人もでてないし、いいんじゃないの?もしかして騎士さん、咎人は極刑だ~って、これでナナを廃棄場送りにするの?」


ルーシアは反射的に大声を出してしまう。


「そんなことはしません!罪もない者を極刑に処すなど許されないことです!」

「え?それが許されるのがこの王国ってところだろ?何言ってんだ?騎士さん。」


この少年はあきらかに別の人物のことを言っている。



「メリルさんのことですか?あなたが言ってるのは。」


「そうだよ?そこで王女が寝てるのだって、原因は結局それだろう?あんたたちの自業自得だ。」

「メリルさんのことは確かに悲しい出来事でした。だからこそ、王国は冤罪というものに対し真剣に向き合っているのです!」



セロの雰囲気が怒気を孕んだものに変化する。


「何終わったことみたいに言ってんだ?話を聞いてなかったのか?」


「何ですって!?」

「学院に来れば、ジルに悲しいことが起こる。原因はどう考えても毒殺未遂事件での冤罪処刑だろうが。」


ルーシアは言葉に詰まり息を飲む。



「悲しい出来事でした。か。済んだことだとでも言いたいのか?メリルさんを見殺しにした側の人間が被害者の孫にそう言うのか?」


ルーシアの視界にはジルの姿。

思わず反射的にルーシアはジルから目線をそらしてしまう。


「しかも冤罪に向き合ってる?笑わせるな。お前たちは不当に処刑されるメリルさんを前に何もしないことを選んだ。十分同罪だ。」


「…。」


「冤罪に真剣になるのならまず、メリルさんの冤罪を認めろよ。でもそれはしない。咎人の家族としてジルは学院で犯罪者扱い。」


セロは黙りこくるルーシアを一瞥してさらに続ける。


「ジルには護衛が必要だ。友達という特別な護衛がな。お前たちに捏造されたありもしない罪に今も苦しむジルに寄り添う者が。」


ルーシアはまったく言い返せないでいる。


「そんなジルに話があるとか言って王族が接触する?当然警戒するだろ。ジルからすれば家族をハメて極刑にした側の人間だぞ。」


「それは…!」


「ナナはジルを守ろうとしただけだ。むしろ眠らせるだけで済ませてやったんだ。感謝しろ。」



セロはナナ達に移動を促す。


「さっさと教室に移動しよう。」


ロッテとジルは、立ち去ろうとするセロに問いかけた。


「セロさん、学院も調査されてたんですか?」

「あぁ、ジルがナナと友達になれない。そう言ったって聞いてね、理由があるんだろうなって。」


「このことはナナちゃんには…?」

「何も伝えていないよ。どうせ言っても言わなくても、ナナが言うことはひとつだけだよ。ジルと友達になるんだってな。」




セロとロッテは若年部の校舎へ足を向ける。


「ジル、ナナのこと、お願い。いろいろ教えてやってくれ。んで、ナナ。そっちにもジルをいじめる奴がいるからな。頑張れ。」

「ジルをいじめる奴らなんて、みんなまとめてやっつけてやるぜ!!」


「セロさん、ナナさんは平民です。私に関わると目をつけられてしまいます!私と関わらないように言って下さい!」


「ジル、俺はナナのことを、友達の為に頑張れる奴だと信じている。」


セロはジルを見て笑みを作り、続けて言った。



「友達を守って、その結果に何らかの障害が発生するってんなら全て受けて立つ。それが王様でもな。」


「あたしが王様も倒す!!」

「ナナちゃん、倒しちゃ駄目!」


ジルはそれ以上何も言えなかった。



セロはロッテと共に去っていく。

二人の後ろ姿を見送り、ジルは決めた。



「私がナナちゃんを守る。」


それを口に出して、決意を固める。


「ジル!それはあたしのセリフだ!ジルは弱っちぃんだから、あたしが守るんだ!」

「弱くても守るの!!」


ナナとジルも、幼年部の校舎へ向かう。


ナナは場所がわからないので、ジルの案内についていく。


校舎内を少し歩くと、大きく【幼年】と記された扉。

ここが幼年部の教室のようだ。



「ここが私達の教室だよ。ナナちゃん。」


「うぅ、ジル。どうしよう?なんか緊張してきたんだ。屁をこいたらどうしよう?あたしいじめられるかもしれない。」


ナナは教室の前についた途端に弱気になっていた。

柄にもなく緊張しているのだ。



「いじめられても私がナナちゃんを守ります!!」

「ちがう!あたしが守るんだ!!」


扉が開き、ジルとナナは教室に足を踏み入れる。





中庭に残った二人。


エトワールとルーシア。



「むにゃむにゃ…、ナナさん、あなたを私のライバルと認めて差し上げますわ…。むにゅ。」


エトワールはいまだ夢の中。

ルーシアは、セロの暴言に言い返すことが出来なかったことに、憤りを感じていた。



「私にどうしろって言うの?騎士団長とはいえ、司法に関しての発言権などまったくない私が何ができると…。」


そんな愚痴をこぼしていると、エトワールの両目が突如ぱっちりと開かれる。



「はっ!!!」


反射的にがばっと上体を起こすエトワール。


「え?あれ?ここは…?」

「お目覚めですか、姫様。」


声をかけたルーシアが消沈しているように見える。



「どうしましたの?」


ルーシアは中庭で起きた一部始終を、正確に、ありのままエトワールに伝える。



「ごめんなさいルーシア。私が考えもなくとった行動のせいでつらい思いをさせました。」

「いえ!姫様。決してそのようなことは…。」


「確かにセロさんのおっしゃる通り。私がジルさんに接触することはもっと慎重に行うべきでした。」

「姫様…。」



そこでエトワールはくわっと両目を見開く。


「だがしかし!それはそれ!これはこれ!!ですわ!!」


「ひ、姫様?」

「私がジルさんに謝罪すること。そしてナナさんと友人関係を築くこと。これらはすでに決定しているのですわ!」



立ち上がったエトワールは、幼年部の教室に向けて、猛烈な勢いで走り出していった。





教室に入ったジル。後をついていくナナ。



「犯罪者が教室の入り口から入るのはどういう訳だ!!貴様は勝手口を使えと言っていただろう!!!」


そんな怒鳴り声が響いた。


「うぐっ!」


ジルのうめき声とともに突然、ジルの体が横に飛んだ。



カシャン!


音を立ててジルの眼鏡が床に落ちる。



目の前には三人の男子生徒。



ジルはこいつらにいきなり殴られた。

殴ったのは真ん中のこいつだ。


ナナの瞳が真っ赤に染まる。



「う…。」

「どれほどの痛みを味わおうとも、貴様の罪は償うことはできん!貴様の一族は王家に弓を引いた大罪人!」



ジルは顔を押さえてうずくまっている。


「ジル!大丈夫か!?」


ナナはすぐにでもこいつを爆破してやりたい。

そんな衝動に駆られる。


それでもなんとかこらえて三人を見る。



ジードル・ネメシス(人間)


レベル 14


恩恵 槍術


技能 槍技:突撃


効果 



ネイク・ゴルドル(人間)


レベル 9


恩恵 商売


技能


効果



ベリス・ローランド(人間)


レベル 15


恩恵 召喚魔法:木


技能 召喚術:樹精

   召喚術:木霊


効果



ナナはジルを抱き起こした。


「ジル。痛くないか?平気か?」


声をかけ、安否を確認しつつ三人の能力を吟味する。


まったく問題にならない相手だ。



「おまえら!ジルに何するんだ!!」


ナナに三人の目線が集中する。



「おやおや、幼年部主席のボマー殿ではありませんか。いけませんね、犯罪者を庇うなど。」

「君のような高い素養を持った強者であればこそ、正しい選択が求められます。」

「えぇ、まさに。そこの娘の祖母は国王暗殺未遂。国家反逆罪です。大罪ですよ?」



どうやら、ジルを殴ったのはジードルとかいうやつ。

さっきからジルに怒鳴り散らしているのもこいつだ。


一番偉そうでもある。こいつがリーダーだな。



「君さえよければ、私が父上に口を聞いてやってもいい。あなたにはそれほどの才覚がある。そこの犯罪娘と違ってね。」

「まさしくその通り。8歳という年齢で学院長をも上回る術士であるナナ殿であれば、ネメシス公爵家のよき家臣となるでしょう。」



ネイクとか言う奴。


こいつ、ジードルの子分的存在?こうゆうの腰巾着って言うんだっけ?


一生懸命ジードルのご機嫌をとってる感じだな。



「それにしてもラスターニ。私は貴様に非常に腹を立てている。何故だかわかるか?」


「何の話でしょうか?」


「主席たるナナ殿に取り入り、その力でもって我らを排除しようと考える、その卑しい犯罪者根性にだ!!」


「そんなことは考えておりません。」


「ふん!貴様も祖母と同じよ!自分はやってない。そう最後まで言い続けたそうではないか。大罪人が見苦しいわ!!!」



ベリスって奴。こいつなんだ?さっきから一言もしゃべってねぇ。

それに、ジードルが怒鳴る度に、なんか嫌そうにしてるな。


こいつってジードルとあんまり仲良くないのか?

よくわからんけど、何もしないのなら見逃してやる。


かもしれない。


あたしの機嫌次第だ。


こいつらさっきからジルにひどいこと言いやがって。あたしむかつくんだ。



ナナは三人が口上を述べている間に、自己強化を済ませた。

そしてジルを守るように、その前に立つ。



「おまえら何言ってるかわかんね。ちゃんと喋れ。バカ。」


「何…?平民ごときが、今何と言った?」


「弱いくせに偉そうな奴だ。さっさとジルに謝れ。でないとぶっ飛ばすぞ?」



三人のリーダー格と思われるジードルはみるみるうちに顔が紅潮していく。


「貴様ぁ!俺に逆らって王都で生きていけると思ってるのか!!」


「あ~、うっせ~。貴族ってのは雑魚いくせに声だけでけえ。おまえうるさいから黙ってろ。」


「きききいっさまあああぁぁぁ!!」



さらにヒートアップするジードル。


当然ナナに殴りかかるが、障壁に阻まれる。



ナナは完全に無視してジルを抱き起す。

するとジルが一歩前に出て、ジードルの顔を真っ直ぐに見る。


「ジードルさん、もうやめて下さい。貴方が気に入らないのは私。彼女は無関係です。」


「何だと?貴様ラスターニ!!犯罪者の分際で俺に意見するか!!」


「ジル、こいつ駄目だって。会話ができねぇ。きっとバカなんだ。もう黙ってぶっ飛ばそう。」



ジードルはもはや、怒りの余り冷静さを失っていた。



「ネイク!!我が槍を持て!」

「あぁ!わかった!」



走り出すネイク。



「平民、高貴なる俺に対する貴様の言動、万死に値する!」


ジードルはナナを指差し、そう言った。



「犯罪者、貴様も同罪だ。同じく万死に値する!」


ジルに対しても同様だ。



そしてジードルはベリスを見る。


「ベリス!!おまえはラスターニをやれ!俺がこいつを…。」


言い終わる前に、ナナは手のひらでジードルの腹部に打撃、いわゆる掌打である。


ただし、ナナの手はジードルに直接触れていない。

接触しているのはナナの手のひらに展開した小さな爆裂障壁だ。



「ほわちゃあ!!」


そして妙な掛け声とともに、爆音が響く。



ナナはジードルを爆破していた。


威力は調整済だ。死亡したりはしないはずだ。たぶん。



「セリフが長くて面倒くさい。どうせぶっ飛ばすんだ。さっさとやろうぜ。ジル。」

「もうやった後だよ、ナナちゃん…。」


(あ~、宰相様の息子さんをあっさり…。やっぱりこうなるんだね…。)


ジルの胸中は複雑だった。



ジードルは教室の後ろの壁に珍妙なポーズでめり込んで失神している。


ネイクは槍を取りに行ってるのでここにはいない。

残されたベリスは両手を上げる。



「降参だ。さすがにボマー殿とやり合うつもりはない。」


「ん?仲間じゃないのか?」

「仲間なのかな、従わないと大騒ぎするから従ってたんだけど、勝てない相手に喧嘩を売る趣味もない。」



ジルがナナの元に歩み出る。


「ナナちゃん、この人は何故かは分からないけど、私をいじめなかった人なんです。見逃してあげて下さい。」

「そうなのか。じゃああと一人、いなくなった奴だな。帰ってきたらぶっ飛ばそう。」



ベリスは教室を出ていく。そして、ジルに声をかける。


「ラスターニさん、長いこと辛い目に遭わせて済まなかった。」



ベリスはジルに頭を下げる。


「俺は君に害をなさなかったかもしれないが、救うこともまた、なかった。本当にごめん。」


そう言って教室を後にした。



ナナは自分の祝福の出力を最大にする。


「最初のやつはあっさり爆破しちゃったから、もう一人は飛び蹴りで倒そうと思う!どうだ?ジル。」


「え?どうだ?って言われても…。」


「そうしないとあたしの怒りが治まらないんだ!ジルを殴ったやつは壁に埋まってるし、もうこいつにかますしかねぇ!」


ナナは完全に怒りでヒートアップしてしまっている。

そして廊下を全力で駆けているであろう足音が響いてきた。



「フフフ…、来たな。あたしの怒りを思い知れ!」



扉が開くと同時に、ナナの飛び蹴りが炸裂する。


ナナは身体強化の恩恵を持たず、レベルも低い。


しかし、祝福による強化は有効だ。

おそらく、それなりに強力な飛び蹴りだったはずだ。



その飛び蹴りは、教室に入ってきたエトワールの顔面にめり込んでいた。


そしてそのまま廊下を吹っ飛んでいくエトワール。



「ん?」


なんかこいつ違う。


ナナはそんなことを考えて首を傾げていた。



「殿下!?」


そう言ってびっくりしているジルが気絶している王女様を教室に運んでくる。


ナナは気絶しているエトワールを見て、さらに首を傾げる。



「なんでくるくるがここにいる?こいつもジルをいじめる仲間か!?」


「ナナちゃん、違うよ?王女様は無関係だからね?」


「てことは?ジル、こいつどうしよう?外に捨てといた方がいい?」

「捨てちゃ駄目だよ!?駄目だからね!?」



ジルは治療技能を持った生徒に頼み、エトワールを治療してもらう。



「ううっ、何だか顔がヒリヒリズキズキするような感じがしますわ…。」



そこに槍を持ったネイクが戻ってくる。


「ジードルさん!待たせたな!」


しかし、ネイクの目の前にいるのはナナだった。



カラァァン…。



ネイクは音を立てて槍を落とし、壁に埋まったジードルを見て、ガタガタと震え始める。



「殴られたジルの痛み、友達を助けられなかったあたしの怒り。両方お前にぶつけるはずだったんだけどな?」



ネイクはぎょっとした顔で目を見張る。



(壁に埋まってる馬鹿野郎にぶつけたんじゃねぇのかよ!しかもあっちが主犯なのに何で俺なんだ!?)



ナナは語りながら、ネイクの周囲をうろうろしている。


「もう一つ怒りを追加しなければならなくなった。」



(何で増えるんだ!!しかも全部俺っていろいろおかしいだろ!?主犯にぶつけろよ!主犯に!!)



「それはな…。」


タメをつくるナナ。



「お前のせいで顔面を強打して気絶していたくるくるの痛みだ!!」



激高するナナ。



「「「はぁ?」」」



ネイクだけでなく教室内の皆があっけにとられている。



「この痛みの元凶はあいつですの!?」


しかしこの言葉に反応したエトワールは怒りの表情で立ち上がる。



(なんで俺が王女殿下の顔面を強打したことになってんだ!?いや、まってくれ!弁解させてくれ!!!)



ネイクは弁解の為に口を開く。



「それは俺じゃな…。」


その弁解は途中で爆音にかき消される。


ネイクは直上に吹き飛び、天井に突き刺さっていた。



教室で一部始終を見ていた者達は、さすがにネイクには同情していたが、目の前で暴れる怒りの爆弾魔を前にコメントする勇気を持てなかった。



「悪は滅びた。もう安心だぞ、ジル。もう悲しくないぞ。悪者は倒した!」


「あ…、ありがとう、ナナちゃん。」

「これであたしがふわわしいって分かっただろ?ジル。だからあたしの友達になれ。今ならあたしのパンツ見せてやってもいいぞ。」



ジルはゆっくりとナナに近寄ると、そのまま抱きしめる。

そして首を横に振る。



(これでこの子は窮地に立たされるかもしれない。でも私が絶対に守る!)



「む。ダメなのか?」


さらに首を横に振る。


「?」


駄目だけど駄目じゃない?よくわからん。

ナナがそんなことを考えていると、ジルがナナにそっと囁く。




「ナナちゃん。どうか、私の友達になって下さい。」

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