呪い
すべてを知った。
「今、なんと言った...」
ヤツの計画。クロス・N・グリッドの本心を。
「だから言っただろ、完全なる世界平和実現のために我々は新魔術兵器『魔術強化型核爆弾』を使い人類の7割を消滅させる」
「お前はそれが許されると思っているのか!」
許されるはずがない。人類の7割。突然変異を起こした人類、つまり他の種族を含め7割。いったいどれだけの犠牲が出る。
「じゃあ逆に聞こう。だれが許さない。人類が7割が消え、誰が私を責める」
「決まっている!残った3割の人類が...」
「その3割が私の計画に賛同してくれている人間でもかい?」
「くっ...」
コイツの計画は完璧に等しい、どうやらすでに3割の人間にはこのことを話し、納得させたようだ。
魔術強化された核爆弾は、あのヒロシマの原爆と比べ物にならないならない。桁違い。人類の7割を消すために作られた最悪の兵器。
「もういい、貴様の計画には賛同できない!ここで貴様を殺す!」
俺は銃を構えすぐ引き金を引いた。だがそれは防がれた。
「君がそう言うのは想定内だ。防御魔法を張ってある」
「だが、これは防げない!」
そういってブラックスプリングフィールドを取り出し構えた。
(魔術強化されたこの武器なら、防御魔法を貫通できる!)
「武器を捨てて跪け!愚か者!」
「そんな命令聞くわけが...!?」
俺は何をしている。俺は銃を構えて引き金を引いたはず。なのにどうして俺は...。
「なんだと!?」
武器を捨てて跪いている!
「これは!」
「これは君にかかった呪いだ、自分より地位の高いと認識した人間の命令は絶対に逆らえない」
俺は呪われていた。いつからなのかまったく身に覚えがない。しかしこの呪いは俺にとって最悪な呪いだ。
「吸血鬼化人類は呪いを察知できる能力を持っていて。君が呪われていることを知ることができた。そしてラフレに監視させそれが本当なのか、調べた」
俺は、ヤツの言葉に耳を傾けることしかできなかった。呪いの影響か、顔を上げることもできなかった。
「君は私の命令に逆らえない、どうあがいても、だから裏切れない。実に有能な駒だと思わないかね」
「クソオオオオガアアアア!!!」
跪きながら、俺は怒りを見せた。それしかできないから。
「では私からも命令よ。地面をなめながら、『クロス・S・ラフレ様、私はノミ虫以下の底辺です。どうか踏みつけてください』と頼みなさい」
体は、彼女の今の命令に逆らえない。地をなめ、犬のようにお願いを無意識にしてしまう。
「クロス・S・ラフレ様...」
(だめだ、逆らえない!クソクソクソクソクソクソオオオオ!!)
「私は...ノミ虫以下の底辺です」
無様だ。こんな醜い姿、無様以外の言葉が出ない。
「どうか踏みつけてください」
会議室にいる人間全員が笑った。無様と、皆が笑った。まるで前世でいじめられたときのような感覚だ。
「あらあら、かわいい子犬ね。仕方ないから踏んであげる!」
「やめなさい、ラフレ。確かにコイツはかわいいおもちゃだが、一応私の駒だ。駒はどれも使い道がある。こんな扱いは、いけない」
「ふざけ...るな。俺は...貴様の...駒じゃない」
「じゃあ、命令だ。私の駒となれ」
体が壊れるような感覚が全身を襲った。電流が走り、頭が千切れそうな感覚。
体の中は言葉でいっぱいになった。
(従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ従わなきゃ)
「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!」
もう俺の体は壊れ、引き千切られ、ボロボロになっていた。
「どうしたのかね、彼は」
「おそらく、命令と彼の意思が矛盾して、パニックになっているのでしょう。これ以上やると本当に死ぬ、麻酔でも打って眠らせろ」
その後俺は、ヤツの奴隷となった。ヤツの計画には絶対賛同しなければならず。ヤツの命令はすべて聞いた。
そして今日も俺は、戦場に立っていた。