クロス・S・ラフレ
俺は彼女について、何も知らなかった。
「聞きたいこと。いいわ何でも答えてあげる」
「一つ、なぜ俺の部隊に入った」
「やつらから炎化薬を取り返すため、それとあなたの監視よ」
俺の監視?
「なぜ俺を監視する必要がある」
「父上の命令よ、何でかは知らない」
クロス・N・グリッドの?ばかな。そんなわけあるはずが無い。そんな必要が無い。
「二つ、お前は本当にクロス・S・ラフレなのか」
「ええそうよ、証拠はこれ」
そういって彼女が取り出したのは、コンパスだった。
「『生者の羅針盤』対象の人間が生きていればその居場所を指し示す、死んでいれば常に回っている確かそうだったよな」
「そうよ、さあクロス・S・ラフレを探してみなさい」
正直、自分でもハッタリだと思ってた。でなきゃ、あんな軍人の目はできない。
「我が手にするのは、真理の究明。我が欲するのはクロス・S・ラフレの生死。この願い天に捧ぐ。『生者の羅針盤』よ、俺にクロス・S・ラフレの居場所を指し示せ」
羅針盤はまっすぐ彼女の方をさした。場所を移動しても同じだった。
「これで分かった、私はクロス・S・ラフレよさあ、いつまで私の前で隊長ぶってやがる。さっさと頭下げろ、N風情が!」
(そうか、彼女はS。皇帝と同格の権利を持っている)
俺は頭を下げ跪いた。
「大変申し訳ございません。クロス・S・ラフレ様」
そうだ、いくら軍人であろうと、何であろうと、皇帝の前では頭を下げる。それが、この世界、いや、どんな世界でも、共通のルールだ。
「お言葉ですが、三つ目の質問に入らせていただけないでしょうか」
「お好きにどうぞ」
そうだ、もう一つ聞きたいことがある。
「なぜ、仲間を殺した」
「ああ」
そうだ、こいつは確かに仲間を殺した。重傷だった仲間がいつの間にか死んでいたのもこいつのせいだ。だがなぜ。
「彼らがいると不都合だったのよ、いろいろと、邪魔だった。さて、いい加減あなたと会話するのも飽きたしそろそろ行くわよ」
「ラーズのほうでしょうか」
「いえ、ラーズ軍はすでに滅んだ。新型魔術兵器であっという間にね。父上があなたを呼んでいるわついてきなさい」
ついていくべきだ、と思った俺は彼女に着いていった。
帰還すると俺はすぐ軍の司令室に連れて行かれた。
クロス・N・グリッドはあの「終焉の100年」以来、世界の英雄として帝国軍の元帥として活動していた。
司令室は広く、塔の一番上にあったため、窓からは広い範囲を見渡すことができた。
そして、部屋の中央にある席に彼は座っていた。
「クロス・N・グリッド様、クロス・S・ラフレ、ただいま帰還しました」
「ああ、ということは彼が、ドット・N・フリーズかね」
彼は親の仇でもある、あの日「終焉の再開」を宣言したのは間違いなくこいつだ。彼から真実が知りたかった。
「クロス・N・グリッド様質問をいいでしょうか」
彼は黙ってうなずいた。
「一つ、なぜ俺を呼んだ」
「君が必要だからだ、その理由は後で説明する」
俺が必要?何なんだこいつは、いったい何が目的なんだ。
「二つ、「終焉の再開」あれをなぜ宣言した、あれのせいで、いったいどれだけの人間が命を落としたのか、分かっているのか。あの日、俺の家族が死んだ、別に仇を討ちたいわけではない。ただ真実が知りたい」
「うーん。それも後で話す私の計画について知らないと理解できないと私は思う」
計画?
「三つ目、その計画と俺に何の関係がある」
「今のところは関係ないが、これから君は私の計画において重要な役割を担うことになる。さて、そろそろ時間だな。フリーズ君、ついてきたまえ」
彼は会議室に入った、俺もそれについていき、会議室に入った。
そしてそこには知性のある9種族の人間がそろっていた。
「さて、待たせたね諸君、ではこれより会議を始める」