戦争はゲームだ
1948年6月23日、俺は623AR作戦のため、アリーア前線に向かっていた。
グラスター移動のために支給された兵器。魔術で動くためほとんど音がしない。スピードも速いためすぐに前線に着く。
「見えました。アリーナ前線です」
前を見るとそこはいつもどうりの戦場の風景だった。灰色の空、火薬と血のにおい、銃声と助けを呼ぶ蛆虫の声、敵に向かい突撃する勇敢な兵士たちの咆哮、いつもどうりだ。
「各部隊に告げる!これより623AR作戦を開始する!」
グラスターから降り銃を構え顔を上げた。彼らは皆、恐れてはいない。国のため、帰りを待つ家族のため、生きて帰るため、彼らは恐れない。勇敢な兵士たちはいつも軍人の目をしている。その目は生きるための希望を見る目だ。
「総員!攻撃を開始せよ!」
そして今日も俺は、戦場に立っていた。
作戦開始から一ヶ月がたった。敵は、まだ攻撃をやめない、これ以上戦闘が続くのは少しまずい。死者はすでに1000人を超えてラーズとの戦闘で動ける部隊も少なくなってきた。
「大佐、このままでは、我々の部隊が、やられますよ、ここで手を打っておかないと」
フローズ少尉の言うとおりだった、戦いが長く続くのは別に珍しいことではない。むしろ長いものが多いい。だが、長い戦いはそれだけ大きな損害を両国にもたらす。その上、ラーズではどうなっているのか、まだ分からない。このままでは本拠地にラーズ軍が攻めてくる可能性だって出てくる。それだけは、避けたい。どうする、兵の数はまだ3000人ほどいるが、このペースで犠牲者が出ると作戦に影響を及ぼす。何か手は...。
「いや、これなら」
「はい?」
だが、この手を使うにはリスクがある。下手したら命が無いかもしれない、だがこれしか方法がない。
「分かった。この戦いを終わらそう、今出てる兵士は、この基地に帰還するように命令しろ」
「まっ!まさかそんなことをすれば帰還している間に敵が攻めてきますよ」
「いや、今じゃない。だがいずれ帰還命令は出す」
分かる、俺は今笑ってる。思いついた作戦の楽しさに、戦争の面白さに。
「グライダーと銃そしてありったけの弾を持って俺のところに来るよう、第23分隊に伝えろ」
「はっ!」
第23分隊は軍の中でも有能な兵士を集めた精鋭部隊だ、彼ら70名ほどなら可能性はあるだろう。
「今日は、楽しい一日になるな」
殺戮兵器は笑った。彼は今ギャンブルをしている。賭けるのは命、手にするのはこの戦闘の終結。戦争はゲームだ。笑って遊ぶのがゲームの基本だ。
ローズ少尉のおかげで20分で全員がそろった。犠牲者はいない、優秀な部下たちだ。
「単刀直入に言う、これから先の戦闘は我々第23部隊のみで終わらせる」
まあ、普通の人間はこれを聞いて疑問の顔を出すだろう。なぜ我々だけと。だが俺の部隊は違うこういう命令も慣れているのだろう。軍人の顔は変わらなかった。
「そして俺はこの作戦で最前戦に出る、だからこの作戦の指揮はフローズ少尉に任せる」
「はっ!」
「では、作戦の内容を手短に伝える...」
「うーん、敵の兵が見当たりませんね~。逃げたんじゃないですか」
アーリア軍の本部は我々の動きに疑問を抱くだろう。当然だ、敵兵が皆撤退したのだから。
「逃げたわけがあるか。敵はおそらく俺たちをおびき寄せているのだろう」
「でもさ~、なんかおかしくね。ここを放棄したら、敵お本拠地まですぐだぞ、負けたも同然じゃん」
実際そうだった。アリーナ前戦は、我が軍の本拠地に近いここを放棄することは、敗北を意味する、だからこそ623AR作戦は重要で絶対に失敗は許されない。明らかな罠だ、だが。
「おい!お前ら!突撃命令が出たぞ!指揮官が突撃命令を出したぞ!」
そう、一部の兵士が気づいても、攻撃するかどうかは指揮官が決める。ここで攻撃してこればこの作戦は、成功したも同然、つまり敵は、負けたのである。罠にかかった。
「え?でもあれは明らかな罠じゃ...。」
「仕方ないだろ、指揮官の命令だから!ほら!行くぞ!」
「大佐の読みどうり、突撃してきました」
「フッ!これでチェックメイトだ。行くぞ!作戦開始だ!」
「「は!」」
70名で十分だった。敵は獅子が本気で狩らなくても簡単に狩れるウサギだ。やはり敵は愚かだ。
「この戦いを3日で終わらせる!総員突撃!!!!」
戦争はゲームだ、生きるか死ぬか。何人殺すか、いつ殺されるか競ういあうゲームだ。優れた軍人は皆笑う、戦争に、争いに、殺し合いに。それはただのゲームだから。