バルギオン
目の前にいたのは明らかに人間ではない、魔獣だった。
「よう!我が主!我が名は烈火の魔獣『バルギオン』今日からよろしく!我が主!」
「・・・ええと、ヘル・メッセンジャーは失敗したはずじゃ」
「いや、成功した。だから我がここにいる」
確かにその生き物は魔獣だった。
明らかに魔獣、そして全裸で私の前にいる。
「・・・取り合えず。服、来てください」
「ああ、そうか!それが人間の常識だもんな!ふははははは!」
なんか、自分が呼び出した魔獣なのに、何でだろう、換えたい。
でももう一回撃ったら今度は命が危ないし、フリーに怒こられるし、フリーが悲しむ。
「とりあえず、これでいいか!」
半袖、半ズボン。まあ、いいか。
私の前に現れた魔獣は獅子であり、人であり、竜でもあった。竜の赤い翼、両手、両足。人の体、獅子の顔。バルギオン、この魔獣はそう名乗った。
「で、我が主よ、早速聞きたいことがある。君は我が主として相応しいのかどうかだ、それを我に示してほしい」
私がこの魔獣の主であるのは間違いない。でも魔獣にも意志がある。私が主として相応しくなかったら、私はどうなっちゃうんだろう。
「ええと、具体的に何をすればいい」
「ふん、敵と一戦交えてその敵を主の指揮のみで、倒せたら主は我が主として認めよう」
「エリカ、私の名前はクロス・エリカ、一応罪人」
「おう分かった。それで、敵は誰なんだね我が主、クロス・エリカ!」
よかった。一応話は聞いてくれる魔獣みたい。
とりあえず、今の状況と敵の存在、味方について説明しておこう。
「なるほど、つまり味方はダークイービル。そして敵はクロス・N・グリッドの計画の賛同者。そしてここはダークイービルの地下基地。合ってるか?」
「ええ、そう。だからあなたには私の力になってほしい」
「それが主の命令ならば、いいだろう。なかなか面白いことになってそうだしな!」
とりあえず説明は終わった。後はこのことをシーやフリー達に伝えるだけだけど。
「ついてきて、仲間を紹介する」
「おおお!すごいよエリカ!人間でありながらヘル・メッセンジャーに成功するなんて。しかもバルギオンを当てるとはまた運がいいよ!」
「バルギオンってそんなに強いの?」
「いや、でもバルギオンは男性の僕になることが多い、バルギオンの主が女性だなんて200年くらい聞いてないかも!」
「まあ確かに女性の主は我もほとんど見なかったなあ」
とりあえず珍しいちゃ珍しいらしい。
「早速!このバルギオン実戦に使おう!!今度、計画に賛同している炎化人類を殲滅することになってる!バルギオンの初陣はそこにしよう!」
「おお、確かに炎化人類と戦ったことはないな!」
父上の計画に賛同する人類は全部で8種。炎化人類、竜化人類、吸血鬼化人類、兵器化人類、岩石化人類、鬼化人類、森精化人類獣人化人類そして人類。これら全ての種族の頂点が計画の賛同者。つまり私達は8種族全てを滅ぼさなければいけない。
最初のターゲットは炎化人類だった。
「でも敵は炎を操る種族、烈火の魔獣バルギオンとは相性があまりよく無いんじゃないか?」
レオが言ったことは正しい。敵は2000年前炎になってしまった人類、炎を操る能力なら向こうの方が上かもしれない。
「大丈夫!!今回の作戦、グランドコントロールにウェポンコントロールも参戦!しかもそこにバルギオンも加わるなら敵なしさ!3人で敵を殲滅しよう!」
「あれ?今回は3人でいくの?あれ?3人だけ?」
「うん!僕とレオ、それからバルギオンだけで行くつもりだよ!」
たったの3人。3人で炎化人類を滅ぼす・・・。
「えええ!?むっ!無理だよ!たった三人でなんて、敵は何人いると思ってるの!?」
「心配ないさ!我が主!基本あの計画は少人数で動いているらしい。敵は炎化人類全体じゃない、これは予想だが20人程度だと思うぞ」
確かに、父上は計画がバレることを最も恐れている。だから最小限の人数で計画を進める。実際、父上の計画を進めていていた人類は私、フリー、お姉ちゃんそして父上だけだった。バレた瞬間全世界が父上に敵意を向けて計画が・・・あれ?
「ねえ、計画がバレたならあの核兵器で全てを消し去ればいいんじゃないの?それに何で父上はそれを今すぐにでもしないの?それにそんなことをしなくても休戦していれば世界に平和は訪れる。どうして彼はあんなことをしている?」
「あれ?君にはまだ計画の本当の狙いを教えていなかったっけ?分かった、まずそれから話そう!」
そして私はあの計画の本当の恐ろしさを知ることになった。




