表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして俺は今日も戦場に立つ  作者: ののくん
死対クロス・N・グリッド
26/28

レオ・N・シャザク

 ダークイービルに入団して私達はダークイービルの本拠地『ダウンへヴン』に泊まることになった。実は地上に見える基地は7割がダミー。本物は地下3000メートルのところにあり、中にはダークイービル約7000人が入れる巨大な基地、食料も水も十分ありいつでも帝国に攻撃できるようになっていた。本気であの計画を潰そうとしているのがよく分かった。

「一応自己紹介しとく。俺はレオ・N・シャザク。グランドコントロールの所有者で転生者だ」

「私はクロス・・・クロス、エリカ。名前の通り罪人として扱われた」

 罪人には名前がつかない。Sも、Nも、そうすることでどんな人間でもその罪人に罰を与えられる。

「それは災難だったな」

 興味がない。彼の目はそう答えていた。そうこの人は転生者。私よりひどい地獄を見てきた。私の災難なんて興味がなくて当然。

 じゃあこの人は何を見たんだろう。

「あの!レオさん!」

「ん?なんだ」

「あの、話たくなければいいんですが、あなたは・・・その、何を経験したんですか。その・・・転生したとき」

「・・・・・・。」

 怒らせちゃうかしら。でも聞きたい、フリーが地獄をみたなら、この人も、そうかもしれないから。そういう人には助けがいる。そういう人に手を差し伸べたい。そう思った。

「やっぱりだめだよね」

「いや、話すよ。どうせ過去なんて変わらないんだし」

「それ、彼も同じことを言っていました。似たもの同士ですね」

「・・・似たもの同士?ふざけるな!そいつと俺とでは比べ物にならないくらい残酷な人生を送った!同じにするな!俺は転生する前!」

「その話、俺にも聞かせてくれないか?」

 声の方向を見るとフリーがいた。黒いゴーグル、黒いマスク、ゴーグルの中はただ前を見ている目、季節はずれのグレーのコート、黒い手袋に黒い靴、腰にリボルバー、背中に黒いスプリングフィールド。いつもの彼だった。

「同じ転生者、その痛みは俺が一番理解できると思う。だが俺はお前の仲間を殺した。いやなら別にいい」

「・・・分かった。話す座りなよ」

「ああ」

 そういってフリーはそばの椅子を引いて座った。

「なあ、お前ら人の話聞く気あるの?」

「「あるけど何で?」」

 同時だった。

 別に何もおかしくはない。これが普通。普通に私はフリーの膝の上に座っていた。

「まずエリカは男の膝に乗っている時点で聞く気ないよね!お前にいたっては『え?これが普通だが?』みたいな顔するな!何なんだよお前ら!」

 そうだ、ついいつも通り座ってしまった。

 私はこの空間が好きだった。フリーの膝の上。彼に守られているような感じで、孤独から抜け出した気もした。

「ごめんフリーちゃん、重かった?」

「いやまったく、というかお前はあだ名やめろ」

「うん。お前ら見てると話す気がうせる」

「「何で?」」

 またしても同時だった。

「こいつらうぜえ」

 しかしこれが日常だった。フリーの膝に私が乗り本を読む。フリーは私に読んでいる本を聞いたり話題を振る。まさに日常。

「第一、男の上に女の子が普通に考えておかしいだろ」

「「どこが?」」

(ウザイ、同時に言ってくるのがさらにウザイ)

「俺はあと数時間で死と体を入れ替わる、早くしてくれ」

「分かったよ!話すよ!ウザイけど!」


 1945年8月9日、長崎の原爆で俺は死んだ。家は壊滅。家族、友達、何もかもをあの爆弾で奪われた。

 俺は『心時 正義(しんとき まさよし)』としてあの日本に生まれた。俺は昔から元気な子だったから友達も多く、リーダーみたいな人間だった。僕には妹がいた。妹は僕より三歳年下だった。だがある日、妹は誘拐されてしまった。俺と家族は妹を必死になって探した。来る日も、来る日も、山から川、海、いろんなところを探した、でも見つからなかった。そしてあの日がやってきた。

 1945年8月9日11時02分。俺はいつもの通り妹を探していた。空に6機のB29が見えそこから何かが振ってくるのが見えた。そして・・・その何かが突然激しく光り俺は原爆の爆風に飲み込まれた。

 すぐに俺の体はドロドロになり、すぐに死ぬと思った。でも俺は生き延びたかった。まだ妹は探していなかったから。探す!ずっと妹のことを考えて、必死になって生きようとした。目が覚めたら俺はただの死体になっていた。誰も探しに来る様子もなく一人で死ぬことになった。ひどい吐き気痛みたくさんの症状が俺を襲った。でもそんな中でも俺は妹のことを考えていた。探すんだって。けど力尽きてしまった。結局俺は妹を探すことはできずに死んでしまった。


「お前、あの爆風を耐えたのか?すごいな」

「あの爆風ってお前知らないだろ」

「いや、俺は1945年8月6日の広島の原爆を体験した」

「え!?三日前!?当時の日本はどうなっているんだ!」

 そう、3日、たった3日の間でその国は2つの地獄を作り上げた。

 その後、その国がどうなったかは誰も知らない。けどそれだけの被害を受け戦争を続けられるはずがない。戦争は終わった、そう願いたい。

「俺にはわからない。そもそも当時の俺は考えることすらできなかった。だが俺らと同じ犠牲者を二度と出さないために、俺はここに立つことにした。君の仲間については本当にすまないと思っている」

「いや、お前その体勢で言われても何も思わないからな!ちゃんと謝れ!」

 二人は地獄を見てきた。そんな二人だからこそ共通する正義がある。同じ犠牲者は出さない。それが彼らの正義なんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ