レオ・N・シャザク
ダークイービルに入団して私達はダークイービルの本拠地『ダウンへヴン』に泊まることになった。実は地上に見える基地は7割がダミー。本物は地下3000メートルのところにあり、中にはダークイービル約7000人が入れる巨大な基地、食料も水も十分ありいつでも帝国に攻撃できるようになっていた。本気であの計画を潰そうとしているのがよく分かった。
「一応自己紹介しとく。俺はレオ・N・シャザク。グランドコントロールの所有者で転生者だ」
「私はクロス・・・クロス、エリカ。名前の通り罪人として扱われた」
罪人には名前がつかない。Sも、Nも、そうすることでどんな人間でもその罪人に罰を与えられる。
「それは災難だったな」
興味がない。彼の目はそう答えていた。そうこの人は転生者。私よりひどい地獄を見てきた。私の災難なんて興味がなくて当然。
じゃあこの人は何を見たんだろう。
「あの!レオさん!」
「ん?なんだ」
「あの、話たくなければいいんですが、あなたは・・・その、何を経験したんですか。その・・・転生したとき」
「・・・・・・。」
怒らせちゃうかしら。でも聞きたい、フリーが地獄をみたなら、この人も、そうかもしれないから。そういう人には助けがいる。そういう人に手を差し伸べたい。そう思った。
「やっぱりだめだよね」
「いや、話すよ。どうせ過去なんて変わらないんだし」
「それ、彼も同じことを言っていました。似たもの同士ですね」
「・・・似たもの同士?ふざけるな!そいつと俺とでは比べ物にならないくらい残酷な人生を送った!同じにするな!俺は転生する前!」
「その話、俺にも聞かせてくれないか?」
声の方向を見るとフリーがいた。黒いゴーグル、黒いマスク、ゴーグルの中はただ前を見ている目、季節はずれのグレーのコート、黒い手袋に黒い靴、腰にリボルバー、背中に黒いスプリングフィールド。いつもの彼だった。
「同じ転生者、その痛みは俺が一番理解できると思う。だが俺はお前の仲間を殺した。いやなら別にいい」
「・・・分かった。話す座りなよ」
「ああ」
そういってフリーはそばの椅子を引いて座った。
「なあ、お前ら人の話聞く気あるの?」
「「あるけど何で?」」
同時だった。
別に何もおかしくはない。これが普通。普通に私はフリーの膝の上に座っていた。
「まずエリカは男の膝に乗っている時点で聞く気ないよね!お前にいたっては『え?これが普通だが?』みたいな顔するな!何なんだよお前ら!」
そうだ、ついいつも通り座ってしまった。
私はこの空間が好きだった。フリーの膝の上。彼に守られているような感じで、孤独から抜け出した気もした。
「ごめんフリーちゃん、重かった?」
「いやまったく、というかお前はあだ名やめろ」
「うん。お前ら見てると話す気がうせる」
「「何で?」」
またしても同時だった。
「こいつらうぜえ」
しかしこれが日常だった。フリーの膝に私が乗り本を読む。フリーは私に読んでいる本を聞いたり話題を振る。まさに日常。
「第一、男の上に女の子が普通に考えておかしいだろ」
「「どこが?」」
(ウザイ、同時に言ってくるのがさらにウザイ)
「俺はあと数時間で死と体を入れ替わる、早くしてくれ」
「分かったよ!話すよ!ウザイけど!」
1945年8月9日、長崎の原爆で俺は死んだ。家は壊滅。家族、友達、何もかもをあの爆弾で奪われた。
俺は『心時 正義』としてあの日本に生まれた。俺は昔から元気な子だったから友達も多く、リーダーみたいな人間だった。僕には妹がいた。妹は僕より三歳年下だった。だがある日、妹は誘拐されてしまった。俺と家族は妹を必死になって探した。来る日も、来る日も、山から川、海、いろんなところを探した、でも見つからなかった。そしてあの日がやってきた。
1945年8月9日11時02分。俺はいつもの通り妹を探していた。空に6機のB29が見えそこから何かが振ってくるのが見えた。そして・・・その何かが突然激しく光り俺は原爆の爆風に飲み込まれた。
すぐに俺の体はドロドロになり、すぐに死ぬと思った。でも俺は生き延びたかった。まだ妹は探していなかったから。探す!ずっと妹のことを考えて、必死になって生きようとした。目が覚めたら俺はただの死体になっていた。誰も探しに来る様子もなく一人で死ぬことになった。ひどい吐き気痛みたくさんの症状が俺を襲った。でもそんな中でも俺は妹のことを考えていた。探すんだって。けど力尽きてしまった。結局俺は妹を探すことはできずに死んでしまった。
「お前、あの爆風を耐えたのか?すごいな」
「あの爆風ってお前知らないだろ」
「いや、俺は1945年8月6日の広島の原爆を体験した」
「え!?三日前!?当時の日本はどうなっているんだ!」
そう、3日、たった3日の間でその国は2つの地獄を作り上げた。
その後、その国がどうなったかは誰も知らない。けどそれだけの被害を受け戦争を続けられるはずがない。戦争は終わった、そう願いたい。
「俺にはわからない。そもそも当時の俺は考えることすらできなかった。だが俺らと同じ犠牲者を二度と出さないために、俺はここに立つことにした。君の仲間については本当にすまないと思っている」
「いや、お前その体勢で言われても何も思わないからな!ちゃんと謝れ!」
二人は地獄を見てきた。そんな二人だからこそ共通する正義がある。同じ犠牲者は出さない。それが彼らの正義なんだ。