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そして俺は今日も戦場に立つ  作者: ののくん
死対クロス・N・グリッド
24/28

リスタート

 朝、起きると彼はいなかった。

 隣にいるのは誰かも分からない子供。

「誰だろう。それよりフリーはどこに?」

 彼は消えていた。彼は確かにここで寝ていた。なのにどこにもいない。足跡もなく、離れた形跡もない。

「というか、この子は誰?」

 身長は私よりも低い、150センチくらいだろうか。金髪、楽しい夢でも見ているのか、笑顔で眠っている。

 ここは砂浜、父上の庭でもなく、基地の近くでもなかった。近くにP38があるということは、彼がここに運んでくれたのだろう。

「・・・いったい何が?」

 自分の記憶をたどってみる。


 そういえば私は父上に呼び出された。彼がダークイービルの基地に向かった後のことである。

 私の鎖ははずされ、監視官にこういわれた。

「クロス・N・グリッド様がお呼びです」

 なぜと質問しても監視官は答えず、私はおそるおそる、父上の部屋へ向かった。

 父上から告げられたのは、私が要らなくなったこと、そしてお姉ちゃんが戦死したこと、そして私はお姉ちゃんを殺した大罪人として裁かれ、処刑されることだった。

 もちろん、父上に反論した。でも父上は、私を切り捨てた。すぐに地下牢に入れられ、監禁された。

 そこは元の研究室よりもひどく、変なにおいに、死体。まさに牢屋だった。

 そして昨日、処刑台に運ばれ、刑を受けることになった。気絶していたのかそのときの記憶はあいまい。

 けど彼の姿ははっきり覚えていた。血だらけになりながら私を救おうと、呪いを振り払い、前に進んでいた。


「そしたら、何だっけ?」

 そこから覚えていない。なんか誰か違う人間に助けられた気がする。もしかしてこの子が・・・。

 考えていると彼が起きた。金髪に白いシャツ、黒いズボン。いったいこの子は。

「ああ!おはよう!クロス・S・エリカちゃん!」

「あの、君は誰?」

「ん?僕は『死』だよ!ドット・N・フリーズのもう一つの人格みたいなものかな?」

 『死』、そうだ私は『死』に救われた。父を殺して、P38に私を乗せ、この島まで、運んだのは彼だった。

「あなた、ドット・N・フリーズのもう一つの人格って言っているけど、彼はどこ?」

「彼は夜に現れる。昼間は僕がこの肉体を支配し、夜は彼が、彼の肉体として出てくる。多重人格なんだよ僕たち!」

 多重人格?けどどうして彼が。そもそも多重人格って、何だろう。

「彼は僕に祈った。君を救う力がほしいって。だから僕が彼の体に入り込んだ。死とクロス・N・グリッド、地位は僕のほうが上、だから呪いに邪魔されずアイツを殺せた。そして君を救った」

 そうか、彼は一応まだ生きているんだ。安心した。

 もし彼がいなくなったら、私、どうなっていただろう。多分、ショックで立ち直れなくなったと思う。

 あれ?なんか、涙が出てきた。何でだろう。でも多分安心しているんだ私は。

「ああ、大丈夫?なんか、泣いちゃってるけど」

 何でだろう涙が止まらない。助けてもらった。彼が生きていた。いろんなものが混ざってわけの分からない涙が出てる。

「ああああ、泣いちゃってる!そうだ!とりあえず今後について話そう、ね?あああ、泣き止まないどうしよう!」


 数時間後・・・。

「ごめん、もう泣き止んだから」

「ほんと、何時間僕を困らせるつもりだよ。まあいい、今後について話そう」

 彼は子供に見えなくなった。突然目が大人に変わった。

 どうやらそれほど深刻な状況になっているのだろう。

「いま、君は賞金首になっている。そして彼も。だけど我々はこの島から出なきゃいけない。それが彼とした約束だから」

「約束?」

「うん、ヤツの計画を完全に終わらせる。その代わり僕自身をあげる、それが彼とした約束。ヤツが消えてもまだ賛同している人間がいる。そいつらを全員殺す」

 目の前にいるのは『死』だった。自分の支配している世界で勝手に暴れだした人間を、殺す。『死』の目は、仕事をする軍人の目。彼の目そっくりだった。

「そして我々はそのために仲間を増やさなきゃいけない」

「『死』に賞金首、仲間になってくれる人間っているの?」

「正確には、仲間にしてもらうだけどね」

 私には彼が何を考えているのかまったく分からなかった。

 いったい誰が、私たちと仲間になるのか検討もつかなかった。

「これから仲間を増やしに行く。さあ、P38に乗ってこう!」

「ああ、待って」

 彼はまた、子供になった。彼といるとなぜか安心した。彼はフリーと同じだからかだろうか。

「よろしくねシーちゃん」

「何その名前」

「死だとなんか怖いから。君の名前はドット・N・シー。これでいい?」

「うーん。まあいいや。じゃあ出発しよう!」

 なぜかシーの背中はフリーズと同じに見えた。

 この日から私はシーと冒険をすることになった。

 鎖はなくなり、孤独でもなくなった。私は自由になった。自由な人生をスタートさせた。

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