レオの踊り場
『しかし、驚いたね~、これも計算外。グランドコントロール相手にここまでやるとは驚きだよ、ドット・N・フリーズ』
「ああ、だが今は黙ってろ、こっちも避けるのに相当体力を使うんだ」
グランドコントロールとの戦闘は敵の圧倒的有利なものになると誰もが思った。だが以外にもグランドコントロールは簡単にかわせたのである。
「クソ!!」
引き金を何回も引く。だが敵の防御は固すぎる。
P38もB29に追われ動けない。完全に1対1のはずなのに、グランドコントロールは致命傷一つ俺に与えていない。
(どういうことだ。大地を操るヤツのほうが有利になるはず。おかしい)
「お前、この程度か。さっきから防御だけだぞ、レオ」
「そう?じゃあ、もっとすごいヤツ来るけど準備はいい?」
「ヘッ!ここに立ったときから覚悟はできている。いつでも来い!」
「じゃあ、遠慮なくやらせてもらうよ!」
グサッ!グサッグサッ!
右腕、右足、左手をやられたか!
「へへへ、そうこなきゃ面白くない!!」
それに答えようと、引き金を引いた。まるで音楽にでも乗っているようにレオはステップを踏み地面で壁を作り、すべて防いだ。
(弾切れ...)
「ほら、今度はお前が踊る番だ。必死に避けろよ」
岩で作られた、針はリズミカルに俺の脚を狙い突き刺そうとした。
なめられている。踊らされている。これじゃあレオの思う壺だ。
「リロードも終わった。俺の踊りはちょっと激しいぞ!!」
「ああ、来いよ」
流星はことごとくつぶされる。銃声はまるで音楽のようで、流れる銃弾もレオに向けられたスポットライトになっていた。
ここは本当に戦場なのか。いつの間にか、ここはレオの踊り場になっているのではないか。
「ダンスは苦手なんで、もういい加減戦場に戻させてもらうぜ。第10位魔法!!サンダーロアー!!」
決まる...はずだった。
レオは踊っている。なんだ、なんの踊りだ。足を華麗に動かし、魔法を避け、戦場すら踊り場に変えてしまう。
コイツの戦闘は、いったいなんだ。
「見たか。これが俺の戦い方。戦争の音は、すべて俺の前では音楽になる。俺の回避術はすべて音楽になる。どんな兵器も俺の前では観客みたいなものさ」
「お前、少しウザクなった」
しかし、なぜかわす。なぜ攻撃しない。さっきから回避しかしていない。
何かある...!?
「時間稼ぎか!?」
「ばれた。でももう遅い、すでにフィナーレだ」
周りを見る。なんの変哲もない岩の針山。なんの仕掛けもない。
が、レオの後ろを見る。彼の後ろの針と針の間に何かある。
「まさかお前!?基地ごと移動させたのか!?」
上を見ると、それは基地だった。地面をどう動かしたのか、さっきまで遠くにあった基地そのものがレオの後ろにあった。
(これが、ダークイービル、『闇の悪人』か!)
闇に潜んで、チャンスを待ち、それが来たら全力で敵を潰す。
戦場を踊り場にしていたのは、チャンスを作るため。俺の注意を引くため!
基地の大砲はすべてこちらを向いていた。基地にあるありとあらゆる兵器がこちらを向いている。
ダンサーは笑った。すべてを奪われたあの目で。そしてこう言った。
「チェックメイトだ」
「......」
やられた、完全に。敵の罠にかかったのは俺.......だと思っているだろう。
「ふ...フハハハハハハハハハハハ!」
「!?」
「それはどうかな?罠にかかったのは、お前だ、レオ。さあ、まだフィナーレではないぞ、アンコールがまだだ」
上から音が聞こえる。エンジン音が。アンコールは、B29のエンジン音と機関砲の銃声だ。
「なっ!?B29!?」
「レオ!!逃げろオオ!!」
気づいたのだろうか。機知の人間がいっせいに叫んだ。
(さあ、踊ってみな、ダンサー。死ぬまで!!)
俺は、リボルバーが故障している...振りをしていた。
敵はおそらく、数分間射撃が停止するとリボルバーの故障もしくはあきらめたことを疑う。だが、俺は逃げようとしない。逃げようとする兵士は弾が当たりやすいのである。だが、奴らのB29は一発も当てられなかった。つまり逃げていない、あきらめていないことを彼らが信じる。敵は俺のリボルバーが故障したと思う。だから、油断する。だから俺は当てられた。
一筋の小さな彗星。いくらグランドコントロールでも気づかないほど小さい彗星。その彗星がB29を一機奪ったのであった。
「クッ!グランドコントロール!!」
B29が直接突撃するんだ。当然そこに意識が行ってしまう。
「しま!ウェンコントロールが!!」
その隙に俺はP38に乗り込み。基地に爆弾を投下する。
「みんなあああああああ!!!」
基地は木っ端微塵だ。ジェノサイドが壊滅した。
「任務完了、帰還する」
また会おう、レオ・N・シャザク。いい腕だった。いい踊りだった。
「...みんな。俺は復讐するよ。帝国に、世界に、ヤツに!」
レオ・N・シャザクとの初戦は勝利に終わった。